婚約破棄された公爵令嬢は、禁断の魔導書で華麗に復讐する ~王太子の後悔と新たな恋の始まり~

ふわふわ

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第7話 王立魔導アカデミー、入学の朝

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第7話 王立魔導アカデミー、入学の朝

王立魔導アカデミーの正門は、朝陽を浴びて荘厳に輝いていた。

高い石造りの門柱に刻まれた魔法陣が淡く光り、門をくぐる新入生たちを祝福するようにきらめく。  
門の両側には、古い樫の木が並び、新緑の葉が春風に揺れていた。

アリーナは馬車を降り、初めての学舎を見上げた。

「……ここが、私の新しい舞台」

銀色の髪をポニーテールにまとめ、制服の黒ローブを羽織る。  
胸元のエルドリア家紋章は控えめだが、首席合格者のバッジが輝いている。

入学式は午後からだが、新入生は午前中に寮へ荷物を運び、クラス分けの説明を受けることになっていた。

エマと護衛の騎士が荷物を運んでくれるが、アリーナは自分で小さな鞄だけを持った。

中には、筆記用具と――魔導書ではない。  
魔導書の知識はすでに頭の中に刻み込まれている。  
本自体は、屋敷の隠し金庫に厳重に保管してある。

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

エマが涙ぐみながら見送る。

「エマ、ありがとう。  
時々、屋敷に帰るからね」

アリーナは笑顔で手を振り、門をくぐった。

門を過ぎると、広大なキャンパスが広がる。

中央にそびえる大時計塔。  
左右に広がる講義棟、実験棟、図書館。  
奥には寮舎と訓練場が見える。

新入生たちが、興奮した様子で歩いている。

「あれが首席のエルドリアさん?」  
「婚約破棄されたって聞いたけど……めっちゃ綺麗」  
「実技試験、すごかったらしいよ」

噂はすでに広がっている。  
好奇の視線が集まるが、以前のような嘲笑はない。

むしろ、尊敬と興味。

アリーナは少し照れながら、案内板に従って女子寮へ向かった。

寮は三階建ての優雅な建物。  
部屋は二人部屋で、すでにルームメイトが決まっているらしい。

受付で鍵を受け取り、三階の308号室へ。

扉を開けると、すでに一人の少女が荷物を整理していた。

茶色のショートヘアに、明るい笑顔。

「こんにちは! あなたがアリーナ・フォン・エルドリアさん?  
私はリア・フォン・セレス。よろしくね!」

リアは貴族の令嬢らしく、礼儀正しく手を差し出した。

アリーナは微笑んで握手した。

「よろしく、リアさん」

リアは目を輝かせた。

「首席合格、おめでとう! 試験の話、みんなしてるよ。  
水と炎の同時制御、見たかったなあ」

「ありがとう。  
リアさんは、何の魔法が得意?」

「私は風よ! まあ、まだ初級だけど」

二人はすぐに打ち解けた。

リアは噂好きらしく、キャンパスの情報を次々と教えてくれた。

「教授陣の中で、一番怖いのはルクシオ・ヴァン・クロイツ教授だって聞いたわ。  
若くて天才だけど、超厳しいんだって」  
「授業は実践重視で、怪我人も出るらしいよ」  
「それと、ミランって子も入学したんだって。  
王太子殿下の婚約者でしょ? なんか威張ってるらしい」

アリーナはミランの名を聞いて、少し表情を曇らせたが、すぐに笑顔に戻した。

「……そう」

荷物を整理し終え、二人で食堂へ向かう。

新入生歓迎の軽食が用意されている。

食堂は大広間で、数百人の生徒がすでに集まっていた。

アリーナが入ると、ざわめきが広がった。

「あれが……」  
「首席だよ」

視線を感じながら、リアと席に着く。

すると、向かいのテーブルに、赤髪の少女。

ミランだった。

ミランは数人の取り巻き(貴族令嬢たち)と一緒にいて、アリーナを見てにこやかに手を振った。

「あら、アリーナさん。  
おめでとう、合格して」

声は甘いが、目は冷たい。

周囲の生徒たちが、興味深そうにこちらを見る。

アリーナは静かに頭を下げた。

「ありがとう、ミランさん」

ミランは続けた。

「でも、首席はまぐれよね?  
本当の授業が始まったら、すぐバレちゃうわ」

取り巻きたちが、くすくす笑う。

リアが小声で囁いた。

「ひどい……」

アリーナは微笑みを崩さなかった。

「……頑張るわ」

ミランが、少し苛立ったように目を逸らした。

そのとき、食堂の扉が開き、一人の男性が入ってきた。

黒髪に金色の瞳。  
長身で、黒の教授用ローブを優雅に着こなしている。

二十歳とは思えない落ち着きと、圧倒的な存在感。

生徒たちが一斉に静まり返った。

「……あれが、ルクシオ教授!」

リアが興奮した声で囁く。

ルクシオは食堂を一瞥し、新入生たちに向かって短く告げた。

「新入生諸君。  
私はルクシオ・ヴァン・クロイツ。  
一年生の基礎魔法実践を担当する」

声は低く、冷徹。

「甘い考えは捨てろ。  
ここは遊び場ではない。  
才能のない者は、すぐに去るだろう」

視線が、ゆっくりと食堂を巡る。

そして――アリーナのところで、止まった。

金色の瞳が、アリーナをまっすぐに見つめる。

一瞬、時間が止まったような気がした。

ルクシオは無表情のまま、続けた。

「特に、首席合格者。  
期待している」

その言葉に、周囲がどよめいた。

ミランが、明らかに不機嫌な顔をした。

ルクシオはそれ以上何も言わず、食堂を出て行った。

リアが興奮して言った。

「アリーナ! 教授に目をつけられたよ!」

アリーナは、少し頰を赤らめた。

あの瞳、鋭かったけど……何か、感じるものがあった。

午後、入学式。

大講堂に全生徒が集まる。

学長の長い挨拶の後、新入生代表の挨拶。

首席のアリーナが、壇上に立つ。

数百人の視線を浴びながら、アリーナは静かに口を開いた。

「本日より、王立魔導アカデミーの一員となることを、心より光栄に存じます。  
私たちは、ここで魔法の極意を学び、王国を守る力を身につけます。  
どんな過去があっても、未来は自分で切り開けます。  
共に、精進いたしましょう」

短い挨拶だったが、会場から大きな拍手が沸き起こった。

ミランは、拍手しながら唇を噛んでいた。

式が終わり、寮に戻る頃には夕暮れ。

リアと部屋でくつろいでいると、ノックがあった。

開けると、上級生の女子生徒。

「アリーナさん、教授から呼び出しです。  
ルクシオ教授が、研究室に来てほしいって」

リアが目を丸くした。

「ええ! 入学初日に!?」

アリーナも驚いたが、頷いた。

「……わかった。すぐに行く」

研究棟の最上階、ルクシオの研究室。

扉をノックすると、中から低い声。

「入れ」

部屋は広大で、無数の魔導書と実験器具が並ぶ。

中央の机で、ルクシオが書類をめくっていた。

アリーナが入ると、ルクシオは顔を上げた。

「座れ」

指定された椅子に座る。

ルクシオは無表情で言った。

「試験の実技、見た。  
魔力の量は異常だ。  
制御も完璧」

アリーナの心臓が、どきりと鳴る。

来たか、追求。

「どうやって、あれだけの力を手に入れた?」

アリーナは、準備していた答えを口にした。

「これまで、抑えていたからです。  
理由は……面接でお話しした通り」

ルクシオは、金色の瞳でアリーナを射抜いた。

「嘘は嫌いだ」

一瞬、息が詰まった。

「……嘘では、ありません」

ルクシオは、少し目を細めた。

「なら、証明しろ。  
明日から、私の特別指導を受ける」

アリーナが驚いて顔を上げる。

「特別……指導?」

「君の魔力は、普通ではない。  
放っておけば、暴走するかもしれない。  
私が、直接見る」

ルクシオの声は冷たかったが、どこか興味が混じっている。

アリーナは、ゆっくりと頷いた。

「……わかりました。  
よろしくお願いします」

ルクシオは、初めて小さく口角を上げた。

それは、笑みなのかもしれない。

「楽しみだ、アリーナ・フォン・エルドリア」

研究室を出たアリーナは、廊下で深呼吸した。

胸が高鳴る。

怖い人だけど……なぜか、嫌じゃない。

これから、どんな指導が待っているのか。

アカデミー生活、本格的に始まる。

ミランとの対立。

新しい友人たち。

そして、ルクシオ教授との時間。

夜、寮の窓から星空を見上げながら、アリーナは呟いた。

「レコルト……見てて。  
私は、もう昔の私じゃない」

新しい恋の予感と、成長の物語が、今、幕を開けた。

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