婚約破棄された公爵令嬢は、禁断の魔導書で華麗に復讐する ~王太子の後悔と新たな恋の始まり~

ふわふわ

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第10話 広がる噂と、ミランの策略

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第10話 広がる噂と、ミランの策略

王立魔導アカデミーの一週間が過ぎ、新入生たちも少しずつキャンパス生活に慣れ始めていた。

朝の食堂はいつものように賑やかだ。  
アリーナはリアと一緒にトレイを持って席に着き、軽い朝食を取っていた。

「ねえ、アリーナ。最近、なんか噂になってるよ」

リアが声を潜めて言った。

「ルクシオ教授の特別指導、毎日受けてるんでしょ?  
もう、学内で『教授のお気に入り』って言われてる」

アリーナのスプーンが、一瞬止まった。

「……お気に入り?」

「うん! だって、入学してすぐ特別指導なんて、前代未聞だって。  
しかも、教授がアリーナのことだけ名前で呼ぶんだって聞いたよ」

アリーナの頰が、少し熱くなった。

確かに、ルクシオは研究室では「アリーナ」と呼ぶ。  
授業中は苗字だが、二人きりのときは自然に名前が出る。

でも、それはただの指導のはず……。

「そんな、大げさよ」

アリーナは照れ隠しにパンにかじりついた。

リアが目を輝かせた。

「でも、羨ましい~。  
ルクシオ教授、超かっこいいもん。  
黒髪に金色の目、クールでミステリアスで……もう理想のタイプ!」

アリーナは、思わず吹き出しそうになった。

「……リア、教授に聞かれたらどうするの」

そのとき、食堂の入り口がざわついた。

ミランが入ってきた。

今日は特に華やかなドレス風のローブを着て、取り巻きを数人連れている。  
王太子の婚約者として、すでに学内でも特別扱いされているらしい。

ミランはアリーナのテーブルをちらりと見て、にこやかに近づいてきた。

「おはよう、アリーナさん。リアさんも」

「お、おはよう……」

リアが少し緊張した声で返す。

ミランはアリーナの隣に腰を下ろした。

「最近、調子はどう?  
特別指導、毎日大変でしょ?」

声は優しいが、目が笑っていない。

アリーナは静かに答えた。

「勉強になってます」

ミランが、くすりと笑った。

「ふふ、そう。  
でも、教授に気に入られるって、危ないわよ?  
ルクシオ教授、昔、王宮で問題起こした人だって聞いたわ。  
近づきすぎると、巻き添えになるかも」

周囲の生徒たちが、こちらをチラチラ見ている。

アリーナの胸が、少しざわついた。

ルクシオの過去――自分だけが知っていると思っていたのに。

ミランは、どうやって……。

「ありがとう、心配してくれて」

アリーナは穏やかに返した。

ミランは、少し苛立ったように立ち上がった。

「忠告よ。  
それじゃ、またね」

ミランが去ると、リアが小声で言った。

「なんか、嫌味っぽかったね……」

アリーナは頷いた。

ミランは、明らかに自分を牽制している。

特別指導が、ミランの神経を逆なでしているらしい。

午前の授業が終わり、昼休み。

アリーナは図書館で本を探していた。

魔法理論の参考書を手に取ろうとすると、隣の棚から声がした。

「アリーナさん」

振り返ると、上級生の男子生徒。

金髪で爽やかな笑顔。  
二年次の人気者、ライル・フォン・グラントだ。

「こんにちは、ライル先輩」

アリーナが会釈すると、ライルは本を返却しながら言った。

「首席の活躍、みんな話してるよ。  
ルクシオ教授の授業で、教授と互角だったって」

アリーナは少し照れた。

「そんな、大げさです」

ライルが、にこやかに続けた。

「いや、本当すごいよ。  
それに、特別指導も受けてるんだって?  
教授、厳しいけど天才だから、いい機会だね」

アリーナは頷いた。

「はい、とても勉強になります」

ライルは、少し真剣な顔になった。

「でも、気をつけて。  
ミランたちが、なんか噂流してるみたい」

「……噂?」

「うん。『アリーナは教授に媚びて特別扱いされてる』とか。  
あと、『婚約破棄されたから、教授にすがってる』とか……ひどいよね」

アリーナの胸が、ずきんと痛んだ。

ミランの策略だ。

学内での自分の立場を、下げようとしている。

ライルが、優しく言った。

「気にしないで。  
本当のことは、みんなわかってるよ。  
僕も、アリーナのこと応援してる」

「……ありがとう、先輩」

ライルは笑顔で去っていった。

図書館を出たアリーナは、廊下で立ち止まった。

噂が、広がっている。

ミランの取り巻きが、意図的に流しているのだろう。

でも、今は耐える。

実力で、黙らせてみせる。

放課後、いつもの研究室。

ルクシオは、今日も机で実験器具を調整していた。

アリーナが入ると、軽く顔を上げた。

「今日の課題は、魔力の共鳴だ。  
二人で、同じ魔法陣を同時に発動させる」

アリーナが椅子に座ると、ルクシオが隣に座った。

近い。

いつもより、距離が近い。

「手を重ねろ」

ルクシオが、自分の手を差し出す。

アリーナは、どきりとして手を重ねた。

温かい。

魔力が、ゆっくりと混ざり合う。

「集中しろ。  
私の魔力に、合わせて」

二人の魔力が、魔法陣に流れ込む。

光が、部屋を照らす。

美しい、青と金の混ざった光。

「……できた」

アリーナが呟くと、ルクシオが小さく頷いた。

「いい。  
君の魔力、だんだん馴染んできた」

指導が終わり、アリーナが立ち上がろうとすると、ルクシオが言った。

「学内で、噂が立っているな」

アリーナが、ぎくりとした。

ルクシオは、窓の外を見ながら続けた。

「君が、私に媚びていると」

「……すみません。教授に、ご迷惑を」

ルクシオは、アリーナを振り返った。

金色の瞳が、まっすぐ。

「気にしない。  
噂など、どうでもいい」

アリーナの胸が、熱くなった。

ルクシオは、静かに言った。

「だが、君が傷つくなら、別だ」

「……え?」

「私は、君の才能を認めてる。  
それだけだ。  
媚びなど、必要ない」

アリーナの目が、少し潤んだ。

「……ありがとうございます」

ルクシオは、少し視線を逸らした。

「明日も来い。  
もっと、深い指導をする」

研究室を出たアリーナは、廊下で深呼吸した。

噂があっても、いい。

ルクシオ教授が、認めてくれている。

それだけで、十分。

寮に戻ると、リアが興奮して待っていた。

「アリーナ! 大変!  
ミランが、明日の学内魔法大会で、アリーナに挑戦状出してるって!」

「……挑戦状?」

「うん! 新入生同士の模擬戦大会があるんだけど、ミランが『首席のアリーナさんと、ぜひ手合わせしたい』って申し込んだんだって。  
みんな、超注目してるよ!」

アリーナは、静かに微笑んだ。

来たか。

ミランの、本格的な策略。

でも、もう怖くない。

「わかった。  
受けて立つわ」

リアが目を丸くした。

「え、本当に!?」

「うん。  
いい機会よ。  
私の実力、みんなに見せてあげる」

夜、アリーナはベッドで魔導書の知識を復習した。

明日の大会。

ミランを、圧倒する。

噂を、黙らせる。

そして、レコルトに届くくらいの活躍を。

窓の外、月が美しく輝いていた。

アリーナの瞳に、強い炎が灯る。

学内大会――そこで、小さなザマアが始まる。

ミラン、あなたの負けよ。

(第10話 終わり)

(文字数:約3400文字)

第10話では、学内での噂とミランの嫉妬を深掘りし、ルクシオとの甘い指導シーンで胸キュンを入れました。  
最後に学内魔法大会への挑戦状で、大きなクリフハンガーに!  
読者が「次は対決だ! アリーナがんばれ!」とワクワクする終わり方です。

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