婚約破棄された公爵令嬢は、禁断の魔導書で華麗に復讐する ~王太子の後悔と新たな恋の始まり~

ふわふわ

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第11話 大会前夜、燃える決意と特別レッスン

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第11話 大会前夜、燃える決意と特別レッスン

王立魔導アカデミーの新入生模擬戦大会まで、残り二日。

キャンパス全体が異様な熱気に包まれていた。  
掲示板には出場者リストが貼られ、中央に大きく書かれた二つの名前が注目を集めている。

アリーナ・フォン・エルドリア VS ミラン

「首席対王太子婚約者」  
「婚約破棄の因縁対決」  
そんな見出しが、学内の噂として飛び交っていた。

アリーナは寮の部屋で、リアと大会のルールを再確認していた。

「一対一の模擬戦。結界内で魔法のみ使用可。  
相手を結界外へ出す、または降参させるか、試験官の判定で勝敗が決まるんだよね」

リアが興奮気味に説明する。

「しかも、今回は上級生も観戦OKだって!  
ルクシオ教授も審査員の一人らしいよ」

アリーナは頷きながら、窓の外を見た。

夕陽が訓練場を赤く染めている。

「……ミランさん、相当本気みたい」

ミランの挑戦状は、単なる牽制ではない。  
学内でアリーナの評価を落とすための、計算された一手だ。

負けたら「首席はまぐれだった」と噂が確定する。  
勝てば、ミランの立場が揺らぐ。

どちらにせよ、注目度は最高潮。

リアが心配そうに言った。

「アリーナ、大丈夫?  
ミラン、炎魔法が得意だって聞いたよ。  
しかも、取り巻きに上級生もいるから、何か細工があるかも……」

アリーナは微笑んだ。

「ありがとう、リア。  
でも、私は負けない」

その自信は、どこから来るのか。

――魔導書の力。  
そして、ルクシオの特別指導。

午後の授業が終わり、アリーナはいつものように研究室へ向かった。

扉を開けると、ルクシオはすでに待っていた。

今日は机の上に、大型の魔法陣が描かれた大きな羊皮紙が広げられている。

「遅い」

「すみません……」

アリーナが頭を下げると、ルクシオは無表情で言った。

「大会の件、聞いた。  
ミランとの対決だな」

アリーナが驚いて顔を上げる。

「教授も、ご存知で……」

「学内で、君たちの話題で持ちきりだ」

ルクシオは羊皮紙を指差した。

「今日は、実戦形式の指導だ。  
相手を想定して、魔法を組み立てろ」

アリーナは頷き、中央に立った。

ルクシオが、試験官のように離れた位置に立つ。

「攻撃してこい。  
大会と同じ条件で」

アリーナは深呼吸し、魔力を集中した。

ミランの魔法は炎系。  
熱と爆発力に優れる。

対抗するには、水と風の複合が有効。

「アクア・ヴェール!」

まず、水の膜で防御結界を張る。

ルクシオが、指を軽く振る。

「フレイム・バースト」

炎の爆発が、アリーナを襲う。

まるでミランの魔法を再現したような、鋭い攻撃。

アリーナは咄嗟に。

「ウィンド・シフト!」

風で炎の軌道を逸らし、同時に反撃。

「アクア・ランス!」

水の槍が、ルクシオに向かって飛ぶ。

ルクシオは動かず、炎の壁で防ぐ。

「いい判断だ。  
だが、遅い」

次の瞬間、ルクシオの周囲に雷が走る。

「ライトニング・フィールド」

地面から雷が立ち上り、アリーナの足元を狙う。

速い!

アリーナは跳躍し、水の盾を二重に張る。

「アクア・ミラー!」

水の鏡で雷を反射。

雷がルクシオに向かって跳ね返る。

ルクシオは、初めて本気で動いた。

指先で魔法陣を描き、雷を吸収。

「上出来だ」

息を切らしながら、アリーナは笑った。

「……ありがとうございます」

ルクシオが近づいてきた。

距離が、近い。

「ミランは、炎の連鎖を得意とする。  
一撃で終わらせようとするな。  
持久戦に持ち込め」

アリーナは頷いた。

「はい。  
水で熱を奪い、風で酸素を薄くする作戦です」

ルクシオの金色の瞳が、少し柔らかくなった。

「君なら、勝てる」

その一言に、アリーナの胸が熱くなった。

教授が、信じてくれている。

「でも、油断するな。  
相手は、王宮の力を背景に、何かを仕掛けてくるかもしれない」

アリーナは、ぎくりとした。

「……細工、ですか?」

「大会の結界は、私が管理する。  
明らかな不正は防ぐ。  
だが、魔法薬や隠しアーティファクトは、検知しにくい」

アリーナは唇を噛んだ。

ミランなら、やりかねない。

ルクシオは、静かに続けた。

「だから、君は圧倒しろ。  
相手に、細工する隙を与えるな」

アリーナの瞳に、強い光が戻った。

「……わかりました。  
一撃で、決着をつけます」

ルクシオは、珍しく小さく笑った。

それは、確かな笑みだった。

「楽しみだ、アリーナ」

指導が終わり、部屋を出ようとしたとき――。

ルクシオが、アリーナの手首を掴んだ。

「待て」

振り返ると、ルクシオが少し視線を逸らしている。

「大会の後、勝ったら……」

言葉を切り、ルクシオは小さな水晶のペンダントを差し出した。

「これを、持っていろ。  
私の魔力が込めてある。  
ピンチのときに、守ってくれる」

アリーナの目が、潤んだ。

「……教授、これは……」

「指導の一環だ」

ルクシオは、照れ隠しにそっぽを向いた。

アリーナは、そっと受け取った。

温かい。

「ありがとうございます。  
大切にします」

研究室を出たアリーナは、廊下でペンダントを握りしめた。

胸が、どきどきする。

これは、ただの指導……?

いや、違うかもしれない。

ルクシオ教授の、心が、少し見えた気がした。

寮に戻り、リアにペンダントを見せると、大騒ぎになった。

「きゃー! 教授からのプレゼント!?  
もう、絶対両想いじゃん!」

「ち、違うよ! 守護のアーティファクトだって……」

アリーナは真っ赤になりながら否定した。

夜、大会前夜。

アリーナは一人、訓練場へ出た。

月明かりの下、魔導書の知識を最終確認。

炎に対する複合魔法。  
風と水の融合。

「ハイドロ・サイクロン」

水と風が渦を巻き、巨大な水竜巻が生まれる。

訓練場の的が、一瞬で粉砕。

「……これなら、勝てる」

ペンダントを握る。

ルクシオの魔力が、優しく応える。

明日、ミランを圧倒する。

学内の噂を、すべて吹き飛ばす。

そして――レコルトに、届くくらいの勝利を。

王宮では、きっとニュースが届く。

「婚約破棄した令嬢が、圧勝した」と。

そのとき、レコルトは何を思うか。

後悔……するよね。

アリーナは、月に向かって微笑んだ。

「見てて。  
私、もう弱くない」

大会当日が、すぐそこに迫っていた。

観客席は満席。  
上級生、教授陣、そして――遠くから王宮の使者も見に来ているという噂。

ミランは、すでに準備を終えている。

取り巻きに囲まれ、自信たっぷりの笑み。

アリーナは、控え室で静かに目を閉じていた。

ルクシオの言葉を思い出す。

『君なら、勝てる』

ペンダントが、胸元で温かい。

扉が開き、試験官の声。

「アリーナ・フォン・エルドリア、準備せよ」

アリーナは立ち上がり、ローブを翻した。

銀色の髪が、月明かりのように輝く。

行こう。

私の、反撃の舞台へ。

(第11話 終わり)

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