婚約破棄された公爵令嬢は、禁断の魔導書で華麗に復讐する ~王太子の後悔と新たな恋の始まり~

ふわふわ

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第14話 王宮からの視察と、揺らぐ心

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第14話 王宮からの視察と、揺らぐ心

王立魔導アカデミーのキャンパスに、秋の風が少し冷たさを帯び始めた頃。

大会から二週間が過ぎ、アリーナの日常は穏やかで充実したものになっていた。

朝の授業、リアたちとの昼食、放課後のルクシオ教授との特別指導。  
学内での視線は、尊敬と憧れに変わり、孤立していた頃が嘘のように感じられる。

その日も、午後の授業が終わると、アリーナは研究室へ向かった。

新しい髪飾りを挿し、胸元のペンダントが優しく揺れる。

扉をノックし、入室。

ルクシオはいつものように机に向かっていたが、今日は少し表情が硬い。

「教授、おはようございます……じゃなくて、こんにちは」

アリーナが軽く挨拶すると、ルクシオは顔を上げた。

「アリーナ、座れ。  
今日は指導を少し遅らせる」

「……何か、ありましたか?」

ルクシオは、机の上の公式文書を指差した。

王宮の紋章が押された、豪華な封筒。

「王太子レコルト・クラウン殿下の視察が、明日に決まった」

アリーナの息が、一瞬止まった。

「……レコルト殿下が?」

「表向きは『アカデミーの新入生大会優勝者を激励するため』だ。  
実質は、ミランの処分を軽減するための圧力だろう」

ルクシオの声は冷たく、金色の瞳に嫌悪が浮かぶ。

アリーナは、ゆっくりと息を吐いた。

来るのか。

あの破棄の夜以来、初めての再会。

胸の奥に、鈍い痛みが走る。

でも、もう昔ほどじゃない。

「わかりました。  
私、動じません」

ルクシオが、アリーナをまっすぐ見た。

「君は強い。  
だが、無理はするな」

その言葉に、アリーナの心が温かくなった。

教授が、心配してくれている。

「……ありがとうございます」

ルクシオは、少し視線を逸らした。

「視察の際、私は審査員として同席する。  
何かあったら、すぐ止める」

アリーナは微笑んだ。

「教授がいてくれるなら、心強いです」

二人は、短い沈黙の後、今日の指導に移った。

今日は魔力の共鳴をさらに深めるもの。

ルクシオが手を差し出し、アリーナが重ねる。

魔力が混ざり合い、部屋に青と金の光が広がる。

「もっと、深く……私の魔力に、溶け込むように」

ルクシオの声が、耳元で聞こえるほど近い。

アリーナの頰が、熱くなった。

集中、集中……。

でも、ルクシオの温かさと、微かな香りが気になって、魔力が少し揺らぐ。

ルクシオが、小さく笑った。

「動揺しているな」

「……すみません」

アリーナが赤面すると、ルクシオは手を離した。

「今日はここまで。  
明日のために、休め」

研究室を出たアリーナは、庭園のベンチに座った。

レコルトが来る。

あの金髪と緑の瞳。

「退屈な人形」と呼んだ人。

今、私を見て、何と思うか。

後悔? それとも、まだ嘲笑?

アリーナはペンダントを握った。

もう、泣かない。

見返してあげる。

夜、寮の部屋。

リアが心配そうに聞いてきた。

「明日、王太子殿下来るんだって?  
アリーナ、大丈夫?」

アリーナは笑顔で頷いた。

「うん。  
むしろ、いい機会かも」

リアが、両手を握った。

「私たちも、応援してるよ!  
学内のみんな、アリーナの味方だから」

その言葉に、アリーナの目が少し潤んだ。

「……ありがとう、リア」

翌日、王立魔導アカデミーの正門。

豪華な馬車が到着し、金髪の青年が降り立つ。

レコルト・クラウン王太子。

周囲を護衛が固め、ミランは同行せず。

学長と教授陣が出迎え、ルクシオもその中にいる。

レコルトの視線が、すぐにアリーナを探す。

大講堂での激励式。

新入生が整列し、アリーナは優勝者として前列に立つ。

レコルトが壇上に上がり、スピーチを始める。

「皆さんの活躍、特に大会優勝者のアリーナ・フォン・エルドリア嬢の功績を、王宮としても高く評価している」

声は穏やかだが、視線がアリーナに注がれる。

アリーナは、静かに頭を下げた。

スピーチの後、個別激励。

レコルトが、アリーナの前に立つ。

周囲は少し離れ、二人きりに近い状態。

ルクシオは近くで監視している。

「……久しぶりだ、アリーナ」

レコルトの声は、少し震えていた。

アリーナは、はっきりと答えた。

「ご無沙汰しております、レコルト殿下」

レコルトが、苦しげに微笑んだ。

「元気そうで、何よりだ。  
大会の話、聞いたよ。  
本当に……すごいな」

アリーナは、無表情を保った。

「ありがとうございます。  
殿下のおかげで、力を隠す必要がなくなりました」

その言葉に、レコルトの顔が曇った。

「……あのときは、すまなかった」

突然の謝罪。

周囲の教授陣が、驚いた顔をする。

アリーナの胸が、ざわついた。

今さら、何。

「もう、済んだことです」

冷たく答える。

レコルトが、一歩近づいた。

「アリーナ、俺は……後悔している。  
ミランは、不正まで使って……俺は、騙されていたのかもしれない」

アリーナの瞳が、冷たく細められた。

「殿下、今さらおっしゃっても。  
私は、もう前を向いています」

レコルトが、言葉を詰まらせた。

「なら、せめて……友達として、やり直せないか?」

アリーナは、静かに首を振った。

「結構です。  
私は、アカデミーで新しい道を歩んでいます」

そのとき、ルクシオが近づいてきた。

「殿下、時間です。  
次の予定が」

レコルトが、ルクシオを睨んだが、渋々引き下がった。

馬車が去った後、アリーナは講堂の外で深呼吸した。

ルクシオが、そっと近づく。

「……大丈夫か?」

アリーナは、微笑んだ。

「はい。  
少し、胸が痛かったけど……もう、平気です」

ルクシオが、静かに言った。

「君は、強くなった。  
あんな男に、振り回される必要はない」

アリーナの心が、温かくなった。

「教授が、いてくれたから」

ルクシオは、少し照れくさそうに視線を逸らした。

「夕方、研究室に来い。  
今日は、特別な指導だ」

アリーナの目が、輝いた。

「はい!」

視察は終わり、学内は再び日常に戻った。

レコルトの謝罪は、王都で少し噂になったが、アリーナの拒絶も同時に伝わった。

貴族社会の風向きは、ますますアリーナ寄りに。

ミランは、停学中で王宮に戻っているらしい。

レコルトとの関係も、冷え切っているという。

アリーナは、夕方の研究室でルクシオと向き合った。

今日は、魔力の完全融合。

二人の手が重なり、魔力が深く混ざる。

「もっと……私を感じろ」

ルクシオの声が、低く響く。

アリーナの心臓が、高鳴る。

これは、指導?

それとも――。

光が部屋を満たし、二人のシルエットが重なる。

アリーナは、そっと目を閉じた。

レコルトの影は、もう薄れた。

今、心にあるのは、ルクシオだけ。

新しい恋が、静かに芽生えていた。

王国に迫る危機の噂も、少しずつ現実味を帯びてくる。

でも、今は。

この時間を、大切に。

アリーナの物語は、甘く、力強く進んでいく。

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