婚約破棄された公爵令嬢は、禁断の魔導書で華麗に復讐する ~王太子の後悔と新たな恋の始まり~

ふわふわ

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第15話 遠征実習の始まりと、王国危機の兆し

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第15話 遠征実習の始まりと、王国危機の兆し

王立魔導アカデミーの秋も深まり、キャンパスの木々が赤と金に染まる季節になった。

新入生にとって最大のイベントの一つ――遠征実習が、ついに始まろうとしていた。

これは、王国北部の森「エルドリアの古森」での五日間の実習。  
目的は、実際の魔物討伐と薬草採取、遺跡調査。  
授業で学んだ魔法を、実戦で試す機会だ。

アリーナは寮の部屋で、荷物を最終確認していた。

ローブの下に軽い防具、魔力回復のポーション、魔導書の知識をメモした小さなノート。  
胸元のペンダントと髪飾りが、今日も優しく光る。

リアが興奮して荷物を詰めている。

「やっと遠征だよ! 森で魔物と戦うなんて、ドキドキする~」  
「それに、ルクシオ教授が引率の一人だって聞いたよ!」

アリーナの頰が、少し赤くなった。

「……そうね」

最近の特別指導は、ますます深みを増している。  
魔力の融合だけでなく、ルクシオの過去や考えを、少しずつ聞けるようになった。  
二人の距離は、確実に近づいている。

でも、まだ言葉にはしていない。

ただの師弟以上の、何か。

出発の日。

アカデミーの正門前に、馬車と生徒たちが集まる。

新入生五十人と、上級生の補助、教授陣数名。

ルクシオは黒ローブを羽織り、無表情で生徒たちを点検している。

アリーナが近づくと、ルクシオの視線が一瞬柔らかくなった。

「準備はいいか」

「はい、教授」

ルクシオが、小声で続けた。

「森は危険だ。  
私の近くにいろ」

アリーナの心が、温かくなった。

「……わかりました」

馬車で数時間、王国北部の森に到着。

古森は、深い緑に包まれた広大なエリア。  
古い遺跡が点在し、低級の魔物が生息している。

実習のベースキャンプが設けられ、生徒たちはテントを張る。

初日の課題は、薬草採取と低級魔物の観察。

アリーナはリアと、同じ班の男子生徒ライル(大会で声をかけてくれた上級生)とペアになった。

森に入り、薬草を探しながら進む。

「アリーナさん、大会以来ですね。  
ますます強くなったって聞きました」

ライルが爽やかに笑う。

アリーナは微笑んで返す。

「ありがとう、ライル先輩。  
今日はよろしくお願いします」

リアが小声で囁く。

「ライル先輩、アリーナのこと狙ってるかもよ~」

「もう、リアったら」

三人で笑いながら進む。

やがて、小型の魔物――ゴブリン数匹を発見。

「来ました! 実戦!」

リアが風魔法を構える。

アリーナは冷静に。

「アクア・ランス」

水の槍が、ゴブリンを一撃で倒す。

ライルが土の壁で援護。

三人で簡単に討伐完了。

「さすが首席!」

ライルが感心する。

だが、そのとき――森の奥から、不穏な気配。

地面がわずかに震え、低い唸り声。

ルクシオが、キャンプから駆けつけた。

「全員、キャンプに戻れ!  
中級魔物の反応だ」

生徒たちが慌てて引き返す。

キャンプに戻ると、教授陣が結界を強化している。

ルクシオが、アリーナに近づく。

「森の奥で、異常な魔力反応。  
通常の魔物じゃない」

アリーナの表情が、引き締まる。

「王国危機の、兆しですか?」

最近、王国北部で魔物の活動が活発化しているという噂があった。  
古い封印が弱まっている、とか。

ルクシオが頷く。

「可能性はある。  
明日から、偵察班を組む。  
君も、来い」

アリーナは、はっきりと答えた。

「はい」

夜、キャンプの焚き火を囲んで、生徒たちは不安げに話す。

「中級魔物って、オークとか?」  
「もし大群だったら、どうするの……」

アリーナは、テントの中で魔導書の知識を思い出す。

古森には、古代の魔物が封印されている伝説がある。

もしそれが解けたら――。

リアが震えながら言った。

「怖いね……  
でも、アリーナがいれば大丈夫だよね」

アリーナは、友人を抱きしめた。

「うん。  
みんなを守る」

その夜、ルクシオがアリーナのテントを訪れた。

「寝ていないか?」

アリーナがテントから顔を出す。

「教授……」

ルクシオは、周囲に誰もいないのを確認し、小声で言った。

「明日の偵察、危険だ。  
私の指示に従え」

アリーナが頷く。

「わかりました。  
でも、教授も無茶しないでください」

ルクシオの目が、少し驚いたように見開かれた。

「……心配か?」

アリーナの頰が、赤くなる。

「はい。  
教授がいなくなったら、私……」

言葉を切り、アリーナは俯いた。

ルクシオが、そっとアリーナの髪に触れた。

髪飾りが、月明かりに輝く。

「私も、だ」

短い言葉。

だが、重い。

アリーナの心臓が、高鳴る。

ルクシオが、手を離した。

「休め。  
明日、頼りにしている」

教授が去った後、アリーナはテントの中で胸を押さえた。

これは、もう恋。

間違いない。

翌日、偵察班が出発。

ルクシオ、アリーナ、ライル、そして数人の上級生。

森の奥深くへ。

やがて、異様な光景。

地面に、巨大な魔法陣の跡。

黒く焦げ、魔力が残滓として渦巻いている。

ルクシオが、厳しい顔で言った。

「古代の封印陣……破られた」

アリーナが、息を呑む。

「ということは……」

「中級以上の魔物が、解放された可能性が高い。  
王国に、危機が迫っている」

ライルが、青ざめる。

「すぐに、王宮に報告を……」

ルクシオが首を振る。

「まだ証拠が足りない。  
もう少し、奥へ」

さらに進むと、巨大な足跡。

オーガ級の魔物。

そして――遠くから、咆哮。

全員が、緊張する。

ルクシオが、アリーナを守るように前に立つ。

「戻る。  
これ以上は危険だ」

引き返す道中、アリーナが小声で聞いた。

「教授、これは……戦争になるかも?」

ルクシオの金色の瞳が、鋭く光る。

「可能性はある。  
だが、君がいる」

アリーナが、驚いて顔を上げる。

「私なら、対抗できる。  
古の魔法に近い力だ」

アリーナの胸に、責任と覚悟が芽生える。

キャンプに戻り、報告。

学長が、すぐに王宮へ緊急連絡。

実習は中断、明日全員アカデミーへ帰還。

夜、キャンプの最後の焚き火。

アリーナはルクシオと、二人で森の端に立っていた。

星空の下。

「教授……これから、どうなるんでしょう」

ルクシオが、静かに答えた。

「戦いになるかもしれない。  
だが、私は君を守る」

アリーナが、ルクシオの手をそっと握った。

「私も、教授を守ります。  
一緒に、戦いましょう」

ルクシオの手が、強く握り返す。

二人の魔力が、共鳴する。

ペンダントと髪飾りが、光った。

王国危機の兆し。

これが、本当の試練の始まり。

アリーナの力が必要になる時が、来た。

でも、怖くない。

ルクシオがいる。

新しい恋が、力をくれる。

遠征実習は、予想外の形で終わった。

だが、アリーナの物語は、ここから本番。

魔物の脅威に、華麗に立ち向かう。

そして、レコルトの後悔を、もっと深く刻む。

星空の下、二人は静かに誓った。

共に、未来を切り開く。

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