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第十八話 選ばれない者たち
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第十八話 選ばれない者たち
選ばれなかったことに、
明確な通知が届くわけではない。
それはいつも、
気づいたときには、もう戻れない位置にいるという形で訪れる。
王都で進められていた新たな事業計画――
表向きは「物流制度の再編」。
だが実態は、複数の貴族家が長年握ってきた利権構造を、根本から作り替えるものだった。
参加できるのは、ごく一部。
王家が「信頼できる」と判断した家だけだ。
その名簿が、水面下で回り始めた。
そして――
グレイソン伯爵家の名は、そこになかった。
「……なぜだ」
アーヴィン・グレイソンは、
何度も名簿を読み返した。
見落としではない。
誤記でもない。
確実に、外されている。
「我が家は、これまで一度も王命に背いておりません」
そう訴える彼に、
王城務官は、淡々と答えた。
「存じております。ただ――」
「ただ?」
「判断を任せられる実績が、確認できませんでした」
その一言で、すべてが終わった。
背いていない。
失敗もしていない。
だが、
引き受けたことも、背負ったことも、ない。
安全で、無難で、
だからこそ、評価されない。
それが、今の王都の基準だった。
一方、同じ名簿の中には、
はっきりとした名前があった。
クラリス・フォン・エルヴェイン。
しかも、
「中核参加者」として。
それを知ったとき、
アーヴィンは、何も言えなかった。
怒りすら、湧かなかった。
理由が、分かってしまったからだ。
クラリスは、判断した。
結果を引き受けた。
失敗も、成功も、すべて自分の名で背負った。
だから――
次の判断も、任される。
それだけの話だった。
数日後、王城での非公式会合。
参加者は少数。
だが、空気は重かった。
「今回の制度は、途中で必ず反発が出ます」
クラリスは、率直に言った。
「だからこそ、途中で逃げない体制が必要です。途中離脱は認めない。責任は、共同で負う」
その言葉に、誰も反論しなかった。
彼女が言う「負う」が、
形式ではないことを、全員が知っている。
「では、当家はここを引き受けます」
「こちらは、初動の調整を」
自然と、役割が決まっていく。
そこに、
グレイソン伯爵家の席はない。
意図的に排除されたわけではない。
ただ、必要とされなかっただけだ。
それが、
もっとも残酷な事実だった。
屋敷に戻ったアーヴィンは、
長い時間、何もせずに座っていた。
怒ればいい。
不満をぶつければいい。
だが、
どこに向ければいいのかが、分からない。
誰も、不正をしたわけではない。
誰も、彼を陥れたわけではない。
ただ、
選ばれる側の条件を、満たしていなかった。
その現実だけが、残った。
一方、クラリスは、
新たな計画書に目を通しながら、静かに息を整えていた。
重い。
だが、進まなければならない。
選ばれるということは、
楽になることではない。
むしろ、
逃げ道が消えていくということだ。
それでも――
彼女は、立ち止まらなかった。
なぜなら、
立ち止まらない者だけが、次に進める世界だと、
もう、知っているから。
ざまあは、
怒号でも、断罪でもない。
ただ静かに、
選ばれない者を、置き去りにしていく。
そしてその差は、
もう二度と、埋まらない。
選ばれなかったことに、
明確な通知が届くわけではない。
それはいつも、
気づいたときには、もう戻れない位置にいるという形で訪れる。
王都で進められていた新たな事業計画――
表向きは「物流制度の再編」。
だが実態は、複数の貴族家が長年握ってきた利権構造を、根本から作り替えるものだった。
参加できるのは、ごく一部。
王家が「信頼できる」と判断した家だけだ。
その名簿が、水面下で回り始めた。
そして――
グレイソン伯爵家の名は、そこになかった。
「……なぜだ」
アーヴィン・グレイソンは、
何度も名簿を読み返した。
見落としではない。
誤記でもない。
確実に、外されている。
「我が家は、これまで一度も王命に背いておりません」
そう訴える彼に、
王城務官は、淡々と答えた。
「存じております。ただ――」
「ただ?」
「判断を任せられる実績が、確認できませんでした」
その一言で、すべてが終わった。
背いていない。
失敗もしていない。
だが、
引き受けたことも、背負ったことも、ない。
安全で、無難で、
だからこそ、評価されない。
それが、今の王都の基準だった。
一方、同じ名簿の中には、
はっきりとした名前があった。
クラリス・フォン・エルヴェイン。
しかも、
「中核参加者」として。
それを知ったとき、
アーヴィンは、何も言えなかった。
怒りすら、湧かなかった。
理由が、分かってしまったからだ。
クラリスは、判断した。
結果を引き受けた。
失敗も、成功も、すべて自分の名で背負った。
だから――
次の判断も、任される。
それだけの話だった。
数日後、王城での非公式会合。
参加者は少数。
だが、空気は重かった。
「今回の制度は、途中で必ず反発が出ます」
クラリスは、率直に言った。
「だからこそ、途中で逃げない体制が必要です。途中離脱は認めない。責任は、共同で負う」
その言葉に、誰も反論しなかった。
彼女が言う「負う」が、
形式ではないことを、全員が知っている。
「では、当家はここを引き受けます」
「こちらは、初動の調整を」
自然と、役割が決まっていく。
そこに、
グレイソン伯爵家の席はない。
意図的に排除されたわけではない。
ただ、必要とされなかっただけだ。
それが、
もっとも残酷な事実だった。
屋敷に戻ったアーヴィンは、
長い時間、何もせずに座っていた。
怒ればいい。
不満をぶつければいい。
だが、
どこに向ければいいのかが、分からない。
誰も、不正をしたわけではない。
誰も、彼を陥れたわけではない。
ただ、
選ばれる側の条件を、満たしていなかった。
その現実だけが、残った。
一方、クラリスは、
新たな計画書に目を通しながら、静かに息を整えていた。
重い。
だが、進まなければならない。
選ばれるということは、
楽になることではない。
むしろ、
逃げ道が消えていくということだ。
それでも――
彼女は、立ち止まらなかった。
なぜなら、
立ち止まらない者だけが、次に進める世界だと、
もう、知っているから。
ざまあは、
怒号でも、断罪でもない。
ただ静かに、
選ばれない者を、置き去りにしていく。
そしてその差は、
もう二度と、埋まらない。
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