サブスク聖女と偽装婚約、始めました 〜婚約は、サブスクできないのでお断りです〜

ふわふわ

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40話(エピローグ) 婚約者もサブスクでやる? 「で、できるかー!」

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40話(エピローグ)

婚約者もサブスクでやる?
「で、できるかー!」

 ルヴァンディア王国からの打診は、
 ――却下された。

 理由は簡潔。
 曖昧さゼロ。
 逃げ道なし。

「本人が拒否している以上、交渉の余地はありません」

 ステルヴィオの返答は、それだけだった。

 国王側は一応、
「前向きに再検討を――」
などと食い下がったらしいが、

「前向きに拒否します」

 という二度目の返答で、話は終わった。

 実に平和な決着だった。


---

 数日後。

 シャマルは、いつものように中庭で紅茶を飲んでいた。
 今度こそ、邪魔は入らない――はずだった。

「……本当に断ったんだな」

 向かいの席で、ウィットンがしみじみ言う。

「ええ。
 きっぱり、はっきり、完全に」

「命拾いした」

「大げさですわね」

「いや、冗談じゃない」

 ウィットンは真顔だった。

「次は“再々婚約”とか言い出しかねなかった」

「失礼ですわ」

 シャマルはカップを置き、微笑む。

「そこまで無計画ではありません」

「どこまでが計画だったのか分からないんだが」


---

 しばし、沈黙。

 風が葉を揺らし、
 鳥の声が遠くで響く。

「……なあ」

 ウィットンが、ふと思いついたように言う。

「いっそさ」

「何ですの?」

「婚約者制度を、
 サブスクにすればいいんじゃないか?」

「…………」

 シャマルは、一瞬、言葉を失った。

「月額制」

「必要な期間だけ」

「役目が終わったら解約」

「更新は、双方合意制」

 真顔で言うな。


---

「で、できるかー!」

 シャマルの即ツッコミが、中庭に響いた。

「婚約を何だと思ってますの!」

「合理的だろ?」

「合理性の前に倫理が死んでます!」

「いや、今回みたいなのを見ると――」

「見ないでください!」

 シャマルは、思わず立ち上がった。

「私はもう、
 婚約という制度そのものから距離を置きたいのです!」

「分かってる、分かってる」

 ウィットンは両手を上げて降参のポーズ。

「冗談だ」

「……本当に?」

「半分」

「半分も冗談じゃありません」


---

 だが、二人は笑った。

 緊張はない。
 計算もない。
 役割もない。

 ただの、軽口。

「……まあ」

 シャマルは、少しだけ肩の力を抜いた。

「次に誰かが
 “婚約を”
 “提案してきたら”」

「来る前提かよ」

「来るでしょう?」

「否定できないな」


---

「そのときは」

 シャマルは、きっぱり言った。

「即、断ります」

「即?」

「即です」

「相談もなし?」

「なしです」

「潔すぎる」


---

 シャマルは、紅茶を飲み干す。

 婚約者という立場も、
 聖女という役割も、
 誰かの期待も。

 今の彼女には、必要ない。

(……平和って、いいものですわ)

 面倒は起きる。
 誘いも来る。
 誤解も生まれる。

 それでも――

 選ばない自由は、
 確かに、ここにあった。


---

 中庭に、穏やかな風が吹く。

「じゃあ、これからはどうする?」

 ウィットンが尋ねる。

「そうですわね」

 シャマルは、少し考えてから答えた。

「何もしません」

「最高だな」

「ええ、最高です」

 婚約破棄から始まった物語は、
 何事もなかったかのように終わる。

 派手な愛も、劇的な断罪もない。
 あるのは、静かな自由だけ。

 ――それが、
 シャマル・マセラティの選んだ結末だった。

(完)
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