サブスク聖女と偽装婚約、始めました 〜婚約は、サブスクできないのでお断りです〜

ふわふわ

文字の大きさ
41 / 41

40話(エピローグ) 婚約者もサブスクでやる? 「で、できるかー!」

しおりを挟む
40話(エピローグ)

婚約者もサブスクでやる?
「で、できるかー!」

 ルヴァンディア王国からの打診は、
 ――却下された。

 理由は簡潔。
 曖昧さゼロ。
 逃げ道なし。

「本人が拒否している以上、交渉の余地はありません」

 ステルヴィオの返答は、それだけだった。

 国王側は一応、
「前向きに再検討を――」
などと食い下がったらしいが、

「前向きに拒否します」

 という二度目の返答で、話は終わった。

 実に平和な決着だった。


---

 数日後。

 シャマルは、いつものように中庭で紅茶を飲んでいた。
 今度こそ、邪魔は入らない――はずだった。

「……本当に断ったんだな」

 向かいの席で、ウィットンがしみじみ言う。

「ええ。
 きっぱり、はっきり、完全に」

「命拾いした」

「大げさですわね」

「いや、冗談じゃない」

 ウィットンは真顔だった。

「次は“再々婚約”とか言い出しかねなかった」

「失礼ですわ」

 シャマルはカップを置き、微笑む。

「そこまで無計画ではありません」

「どこまでが計画だったのか分からないんだが」


---

 しばし、沈黙。

 風が葉を揺らし、
 鳥の声が遠くで響く。

「……なあ」

 ウィットンが、ふと思いついたように言う。

「いっそさ」

「何ですの?」

「婚約者制度を、
 サブスクにすればいいんじゃないか?」

「…………」

 シャマルは、一瞬、言葉を失った。

「月額制」

「必要な期間だけ」

「役目が終わったら解約」

「更新は、双方合意制」

 真顔で言うな。


---

「で、できるかー!」

 シャマルの即ツッコミが、中庭に響いた。

「婚約を何だと思ってますの!」

「合理的だろ?」

「合理性の前に倫理が死んでます!」

「いや、今回みたいなのを見ると――」

「見ないでください!」

 シャマルは、思わず立ち上がった。

「私はもう、
 婚約という制度そのものから距離を置きたいのです!」

「分かってる、分かってる」

 ウィットンは両手を上げて降参のポーズ。

「冗談だ」

「……本当に?」

「半分」

「半分も冗談じゃありません」


---

 だが、二人は笑った。

 緊張はない。
 計算もない。
 役割もない。

 ただの、軽口。

「……まあ」

 シャマルは、少しだけ肩の力を抜いた。

「次に誰かが
 “婚約を”
 “提案してきたら”」

「来る前提かよ」

「来るでしょう?」

「否定できないな」


---

「そのときは」

 シャマルは、きっぱり言った。

「即、断ります」

「即?」

「即です」

「相談もなし?」

「なしです」

「潔すぎる」


---

 シャマルは、紅茶を飲み干す。

 婚約者という立場も、
 聖女という役割も、
 誰かの期待も。

 今の彼女には、必要ない。

(……平和って、いいものですわ)

 面倒は起きる。
 誘いも来る。
 誤解も生まれる。

 それでも――

 選ばない自由は、
 確かに、ここにあった。


---

 中庭に、穏やかな風が吹く。

「じゃあ、これからはどうする?」

 ウィットンが尋ねる。

「そうですわね」

 シャマルは、少し考えてから答えた。

「何もしません」

「最高だな」

「ええ、最高です」

 婚約破棄から始まった物語は、
 何事もなかったかのように終わる。

 派手な愛も、劇的な断罪もない。
 あるのは、静かな自由だけ。

 ――それが、
 シャマル・マセラティの選んだ結末だった。

(完)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました

Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。 「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」 元婚約者である王子はそう言い放った。 十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。 その沈黙には、理由があった。 その夜、王都を照らす奇跡の光。 枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。 「真の聖女が目覚めた」と——

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられた私は遠くで幸せになります

高坂ナツキ
恋愛
ペルヴィス子爵家の娘であるマリー・ド・ペルヴィスは来る日も来る日もポーションづくりに明け暮れている。 父親であるペルヴィス子爵はマリーの作ったポーションや美容品を王都の貴族に売りつけて大金を稼いでいるからだ。 そんな苦しい生活をしていたマリーは、義家族の企みによって家から追い出されることに。 本当に家から出られるの? だったら、この機会を逃すわけにはいかない! これは強制的にポーションを作らせられていた少女が、家族から逃げて幸せを探す物語。 8/9~11は7:00と17:00の2回投稿。8/12~26は毎日7:00に投稿。全21話予約投稿済みです。

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

【完結】婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

処理中です...