『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第二十一話 消えた招待状

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第二十一話 消えた招待状

朝の光が差し込むカーディス公爵邸。

応接間の机の上には、整然と封筒が並んでいた。

だがそれは以前とは逆だ。

届くのは招待状ではない。

問い合わせだ。

「公爵令嬢様、次回の茶会にぜひ」 「改革設計についてご意見を」

執事が一通ずつ読み上げる。

アデルフィーナは淡く微笑む。

「日程は分散を」

「かしこまりました」

焦る様子はない。

選ぶ立場。

その空気が自然に漂う。

一方、王宮。

ミレイアは自室で招待状の束を確認していた。

数が少ない。

明らかに少ない。

「どういうことなの」

侍女は視線を下げる。

「最近は、皆様ご多忙で……」

「昨日も聞いたわ、その言葉」

封筒を机に投げる。

「私は王太子妃候補よ」

そのはずだった。

夜会の中心に立つはずだった。

だが最近は違う。

会話は表面だけ。 笑顔は薄い。

そして今日、侯爵家の大規模夜会の招待状が届かなかった。

それは明確な線引き。

「殿下に相談を」

侍女が恐る恐る言う。

ミレイアは唇を噛む。

殿下は最近、余裕がない。

軍備遅延。 保証問題。 財務部の慎重姿勢。

自分の立場の話をする余裕などない。

王宮執務室。

アルヴィオンは重臣から報告を受けていた。

「侯爵家夜会、殿下は招待対象でございます」

「当然だ」

「……同伴者指定がございません」

一瞬、言葉の意味が理解できない。

「何だと」

「例年は王太子妃候補として正式に名が」

沈黙。

形式上の削除。

公にはしない。 だが明確な意思表示。

アルヴィオンは拳を握る。

「些細なことだ」

だが側近の目は語る。

些細ではない。

社交界は、王宮より早く空気を読む。

夜。

侯爵家の大広間。

アルヴィオンは一人で入室する。

ざわめきが走る。

視線が集まり、そして逸れる。

「殿下、お一人で?」

誰かが尋ねる。

「予定が合わなかった」

短く答える。

だがその空白は大きい。

会話は続く。

だが中心ではない。

輪の外。

そして別の会場。

カーディス邸の小規模茶会。

人数は多くない。

だが質は重い。

「令嬢の設計思想を伺いたい」 「保証なしで回る仕組みとは」

アデルフィーナは穏やかに答える。

「保証は信用の一形態でございます」

静かな声。

「ですが最も重要なのは、履行の積み重ねです」

紅茶の香りが広がる。

誰も声を荒げない。

だが空気は安定している。

夜会から戻ったアルヴィオンは、疲労を隠せなかった。

「殿下」

ミレイアが近づく。

「なぜ、私を伴わなかったの」

責めるような声。

「指定がなかった」

「それでも!」

声が高くなる。

「私はあなたの婚約者よ!」

沈黙。

アルヴィオンは目を閉じる。

「今はその話ではない」

「では何なの?」

その問いに答えられない。

今は保証。 改革。 国王の視線。

自分の足場。

彼女の立場まで、抱える余裕はない。

その夜、王都では噂が広がる。

「王太子妃候補の名が消えた」 「公爵令嬢は安定している」

線は、はっきりと引かれ始めていた。

カーディス邸。

アデルフィーナは夜風に当たる。

「お嬢様、侯爵家夜会で同伴者指定がなかったと」

「そう」

表情は変わらない。

「社交界は、選択を明確にするものです」

風が薔薇を揺らす。

棘は変わらない。

「私は招待状の数では測りません」

静かな声。

「必要な場所に、必要な形で在るだけです」

そして王太子は、初めて感じていた。

称号はある。 だが中心ではない。

歯車だけでなく、招待状までも。

静かに止まり始めていた。
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