『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第二十三話 再交渉の気配

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第二十三話 再交渉の気配

王宮の回廊は、いつもと同じように静かだった。

だがその静けさの中に、はっきりとした意図が混ざっている。

重臣の一人が、側近に低く告げる。

「公爵家へ打診を」

その言葉は、極めて事務的だった。

感情はない。

だが意味は重い。

再交渉。

それは王太子の単独保証が限界に達したという、事実上の認定。

王太子執務室。

アルヴィオンは報告を受ける。

「重臣の一部が、非公式に接触を」

「誰の許可で」

声は冷たい。

「国の安定を理由に」

またその言葉だ。

国の安定。

自分の判断よりも、優先され始めている。

「私は反対していない」

低く言う。

「だが私を通さず動くな」

側近はわずかに目を伏せる。

既に動いている。

止められない。

同じ頃、カーディス公爵邸。

執事が静かに報告する。

「王宮重臣より、非公式の面談要請が」

アデルフィーナは書類から顔を上げる。

「目的は」

「保証再設定に関する意見交換」

彼女は一瞬だけ考える。

「日時は」

「先方の提示待ちでございます」

「よろしい」

淡々と頷く。

「記録は残します」

私情は挟まない。

契約と履行。

それだけ。

侍女が小さく問う。

「お嬢様は、殿下をお助けになるのですか」

アデルフィーナは静かに首を振る。

「助けるという概念はございません」

穏やかな声。

「条件が整えば、国の事業は動きます」

それは救済ではない。

業務だ。

王宮。

ミレイアは焦燥を隠せずにいた。

「重臣が勝手に動いている?」

「はい」

侍女が答える。

「公爵家との接触が」

胸の奥がざわつく。

「どうして殿下は止めないの」

止められない。

それが現実。

「お姉さまが戻ればいいのに」

思わず口にする。

だがその言葉の意味に、自分で気づく。

戻れば。

つまり今は、いない。

王太子の支えが。

夜。

王宮の執務室。

アルヴィオンは書簡を前にしていた。

差出人――重臣連名。

内容は簡潔だ。

“公爵家との協議を進める必要あり”

必要。

その二文字が重い。

拒否すれば、孤立が深まる。 許せば、自身の単独宣言は揺らぐ。

どちらも痛い。

一方、カーディス邸。

アデルフィーナは窓辺に立ち、夜風を受けていた。

「お嬢様、重臣の方々が近く来訪されるようです」

「承知いたしました」

薔薇が風に揺れる。

「再交渉は敗北ではございません」

彼女は静かに言う。

「条件の整理です」

それだけ。

だが王宮では、その整理が重い意味を持つ。

再交渉の気配は、もう隠せない。

歯車は止まらない。

だが、回す力は。

確実に別の場所へ移りつつあった。
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