婚約破棄?ええ、結構ですわ。――私が手を引いた瞬間、国が傾くとも知らずに』

ふわふわ

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第三十二話 支えなければ倒れますわよ

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第三十二話 支えなければ倒れますわよ

 帝国の揺さぶりは、静かに効いていた。

 港の荷は減り。  市場は慎重になり。  商人は様子を見る。

 不安は声にならず、空気になる。

 王城。

「税収減が続けば、来季予算に穴が開きます」

 財務官の報告。

「軍備の一部延期か、公共事業の縮小を」

 重臣たちがざわめく。

 カイゼルは立ち上がる。

「削らぬ」

 短い言葉。

「守ると宣言した」

 視線が集まる。

「守るなら、支える策を出せ」

 命令ではない。

 求める声。

 以前のように怒鳴らない。

 逃げない。

 ただ、正面から向き合う。

 ユリウスが言う。

「商人連合との連携を強化すべきだ」

「帝国依存を減らす策を」

 意見が出始める。

 会議室の空気が変わる。

 命令に従う場ではない。

 共に考える場。

 一方、公爵邸。

「王城、動きが変わりました」

「ええ」

 私は小さく頷く。

「怒りではなく、策」

「支えますか?」

「もちろん」

 守ると宣言した者を、放置はしない。

 南区の商人会。

「王太子が商人連合と正式に会談する」

 ざわめき。

「本気か」

「本気です」

 私は静かに告げる。

「ですが」

 視線が集まる。

「支えなければ倒れます」

 王は一人では立てない。

 商人も、民も、貴族も。

「俺たちが?」

「ええ」

 守ると言った者を、見捨てれば国が倒れる。

 やがて一人がうなずく。

「分かった」

 そのうなずきが、広がる。

 王城。

 商人連合との会談。

 カイゼルは深く頭を下げた。

 ざわり、と空気が揺れる。

「共に守りたい」

 短い。

 だが真剣。

「帝国に頼らずとも、立てる国に」

 沈黙。

 そして。

「条件は?」

 商人代表が問う。

「流通規制の緩和と、内陸港の整備」

 具体的な策。

 夢ではない。

 構造。

 会談は長引いた。

 だが合意は生まれる。

 小さな一歩。

 公爵邸のバルコニー。

 夜風がやわらぐ。

「お嬢様、王太子殿下は変わりました」

「変わろうとしております」

 私は静かに微笑む。

「本物かどうかは、これから」

 帝国はまだ笑っている。

 揺さぶりも続くだろう。

 だが。

 初めて、王家は支えを求めた。

 支えられる覚悟を持った。

 守るという言葉に、重みが生まれた。

 王座はまだ動かない。

 けれど。

 倒れるか、踏みとどまるか。

 その分岐は、支えの数で決まる。

 支えなければ倒れますわよ。

 けれど。

 支えれば、立て直せます。

 国も。

 王も。

 そして――未来も。
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