婚約破棄?ええ、結構ですわ。――私が手を引いた瞬間、国が傾くとも知らずに』

ふわふわ

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第三十三話 信頼は静かに積み上がりますの

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第三十三話 信頼は静かに積み上がりますの

 商人連合との会談から数日。

 王都の空気は、わずかに変わっていた。

「王太子が頭を下げたらしい」 「本気かもしれない」

 疑いは消えていない。

 だが、冷笑も薄れている。

 王城。

「内陸港整備、着手いたしました」

 報告が入る。

「流通規制の緩和も進行中です」

 カイゼルは深く息を吐く。

「時間はかかる」

「ええ」

 ユリウスが頷く。

「だが確実だ」

 帝国は速い。  こちらは遅い。

 だが。

 速さだけが強さではない。

 一方、公爵邸。

「商人連合、動きが活発です」

「良い傾向ですわ」

 私は書類を閉じる。

「帝国商会は?」

「地方契約を増やしております」

「予想通り」

 揺さぶりは続く。

 だが、王家の姿勢が変わったことで、市場心理も変わり始めている。

 南区。

「王家が動いている」 「内陸港が整えば、帝国に頼らずに済む」

 希望は小さい。

 だが確実。

 夜。

 王城に帝国使節が訪れる。

「内陸港整備は我が国への不信の表れか」

 穏やかな声。

 だが鋭い。

「自立のためだ」

 カイゼルは真っ直ぐ答える。

「協力は続ける。だが依存はしない」

 沈黙。

 使節は微笑む。

「王らしい選択だ」

 皮肉か、賞賛か。

 分からない。

 だが。

 以前のような押しはない。

 公爵邸のバルコニー。

「帝国、様子見に入りました」

「ええ」

 私は夜空を見上げる。

「強く出れば反発を生むと理解したのでしょう」

 貸しはある。  だが強制はできない。

 王家が立ち上がれば、話は別。

「お嬢様、これで安泰でしょうか」

「いいえ」

 私は静かに首を振る。

「まだ信頼は積み上がったばかり」

 壊すのは一瞬。

 築くのは時間。

 王城。

 セリーナが言う。

「殿下、民の反応が変わっております」

「どう変わった」

「……期待、です」

 その言葉に、カイゼルは目を閉じる。

 期待は重い。

 だが逃げない。

「応える」

 短い。

 だが以前とは違う。

 公爵邸。

「信頼は静かに積み上がります」

 私は小さく呟く。

「帝国の速さではなく、王家の覚悟で」

 器はまだ試される。

 揺さぶりも終わらない。

 だが。

 守ると宣言した日から、王は歩き始めた。

 支えも増え始めた。

 王座はまだ動かない。

 けれど。

 信頼という土台が、少しずつ。

 静かに。

 積み上がっていくのですわ。
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