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第20話 揺れる王冠
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第20話 揺れる王冠
王城の謁見の間に、重苦しい空気が満ちていた。
玉座の前に並ぶ重臣たちの視線は、王太子アシュレイへ向けられている。
「……辺境は安定しているのだな」
彼の声は平静を装っていた。
「はい」
王妃の使者が頭を垂れる。
「事故、病、交易のいずれも、目立った問題は確認されませんでした」
「王都との差は」
「明確でございます」
沈黙が落ちる。
宰相が静かに口を開く。
「殿下。商人の流出が止まりません。北路を主軸にする動きが加速しております」
「数は」
「今月だけで六商会」
「六……」
アシュレイの眉がわずかに動く。
大きな数ではない。
だが、止まらない。
「偶然が続いているだけだ」
彼は言い聞かせるように言う。
「国は崩れていない」
「ええ。まだ、崩れてはおりません」
宰相の声は淡々としている。
まだ。
その言葉が、重く響く。
同じ頃、辺境伯領。
私は城下の広場で、商人たちの契約締結を見守っていた。
「ここを拠点にする」
「王都は、どうも落ち着かなくてな」
「北は安定している」
安定。
その言葉が、自然に出てくる。
私はただ微笑む。
何も促していない。
何も誘っていない。
ただ、ここにいるだけ。
ディルクが横に立つ。
「王都の商人がさらに三商会、移転を打診している」
「受け入れは可能ですか」
「余裕はある。だが……」
彼は視線を遠くへ向ける。
「この流れが続けば、王都との力関係が変わる」
私は空を見上げる。
澄んだ青。
胸の奥の灯は、今日も揺らがない。
夕刻、王城。
王妃が静かに言う。
「殿下。あの令嬢との縁を断ったこと、後悔はありませんか」
アシュレイは顔を上げる。
「真実の愛を選んだ。後悔などない」
だが、その声はわずかに硬い。
「国よりも、ですか」
「違う。両立できるはずだった」
その言葉に、王妃は目を細める。
両立。
理想。
だが、現実は揺れている。
「……幸いの血を信じますか」
王妃の問い。
「迷信だ」
即答。
だが、即答が早すぎる。
夜。
王都の空は、低い雲に覆われる。
小規模な地震。
被害はほぼなし。
だが、また一つ。
小さな揺れ。
辺境では、星がくっきりと瞬く。
私は塔の上で風を受ける。
遠く王都の方角に、薄い揺らぎ。
こちらは静かだ。
揺れる王冠。
まだ落ちはしない。
だが、支える土台が少しずつ削られている。
そして私は。
その削れた流れを、知らぬ間に受け取っているのかもしれない。
第20日目。
流れの差は、もはや隠せないほどになっていた。
王城の謁見の間に、重苦しい空気が満ちていた。
玉座の前に並ぶ重臣たちの視線は、王太子アシュレイへ向けられている。
「……辺境は安定しているのだな」
彼の声は平静を装っていた。
「はい」
王妃の使者が頭を垂れる。
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「王都との差は」
「明確でございます」
沈黙が落ちる。
宰相が静かに口を開く。
「殿下。商人の流出が止まりません。北路を主軸にする動きが加速しております」
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「今月だけで六商会」
「六……」
アシュレイの眉がわずかに動く。
大きな数ではない。
だが、止まらない。
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彼は言い聞かせるように言う。
「国は崩れていない」
「ええ。まだ、崩れてはおりません」
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まだ。
その言葉が、重く響く。
同じ頃、辺境伯領。
私は城下の広場で、商人たちの契約締結を見守っていた。
「ここを拠点にする」
「王都は、どうも落ち着かなくてな」
「北は安定している」
安定。
その言葉が、自然に出てくる。
私はただ微笑む。
何も促していない。
何も誘っていない。
ただ、ここにいるだけ。
ディルクが横に立つ。
「王都の商人がさらに三商会、移転を打診している」
「受け入れは可能ですか」
「余裕はある。だが……」
彼は視線を遠くへ向ける。
「この流れが続けば、王都との力関係が変わる」
私は空を見上げる。
澄んだ青。
胸の奥の灯は、今日も揺らがない。
夕刻、王城。
王妃が静かに言う。
「殿下。あの令嬢との縁を断ったこと、後悔はありませんか」
アシュレイは顔を上げる。
「真実の愛を選んだ。後悔などない」
だが、その声はわずかに硬い。
「国よりも、ですか」
「違う。両立できるはずだった」
その言葉に、王妃は目を細める。
両立。
理想。
だが、現実は揺れている。
「……幸いの血を信じますか」
王妃の問い。
「迷信だ」
即答。
だが、即答が早すぎる。
夜。
王都の空は、低い雲に覆われる。
小規模な地震。
被害はほぼなし。
だが、また一つ。
小さな揺れ。
辺境では、星がくっきりと瞬く。
私は塔の上で風を受ける。
遠く王都の方角に、薄い揺らぎ。
こちらは静かだ。
揺れる王冠。
まだ落ちはしない。
だが、支える土台が少しずつ削られている。
そして私は。
その削れた流れを、知らぬ間に受け取っているのかもしれない。
第20日目。
流れの差は、もはや隠せないほどになっていた。
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