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第31話 揺らぐ玉座
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第31話 揺らぐ玉座
王城の玉座の間は、いつもより広く感じられた。
人はいる。
重臣も、騎士も、聖女も。
だが空気が軽い。
王都は崩れていない。
税収も急落してはいない。
戦火も迫っていない。
それでも、何かが薄い。
「王都での大型契約、北経由へ変更」
財務官の報告が続く。
「王都を通さぬ流れが増加しております」
王太子アシュレイは静かに聞いている。
怒鳴らない。
机も叩かない。
ただ、理解している。
“戻らない”と。
「……均衡は、戻らぬのか」
誰に向けた問いでもない。
宰相が答える。
「縁を戻さぬ限り」
「戻せぬ」
即答。
アシュレイの声は硬い。
選択は誤りではなかった。
そう信じたい。
だが国は、確実に揺らいでいる。
同じ頃、辺境伯領。
城下では豊穣祭の準備が最終段階に入る。
穂は重く、事故はなく、商館は満ちている。
「今年は例年以上だ!」
農夫たちの笑い声。
家令が報告する。
「王都の先物契約、三割がこちらへ移行」
ディルクは低く言う。
「主軸は完全に北だ」
私は塔の上に立つ。
風は一定。
雲は乱れない。
胸の灯は今日も揺れない。
私は理解している。
これは勝利ではない。
奪ったのでもない。
“重ならない”だけだ。
王都では重なる。
こちらでは重ならない。
それだけの差。
夜。
王妃が玉座の前に立つ。
「殿下。玉座は石でできております」
アシュレイは顔を上げる。
「ですが、支えているのは流れです」
沈黙。
玉座は揺れていない。
だが支点は移った。
辺境の塔。
私は遠く王都を見る。
まだ立っている。
だが、揺らぎは止まらない。
三十一日目。
玉座は崩れていない。
だが、その下の“流れ”が揺れていた。
王城の玉座の間は、いつもより広く感じられた。
人はいる。
重臣も、騎士も、聖女も。
だが空気が軽い。
王都は崩れていない。
税収も急落してはいない。
戦火も迫っていない。
それでも、何かが薄い。
「王都での大型契約、北経由へ変更」
財務官の報告が続く。
「王都を通さぬ流れが増加しております」
王太子アシュレイは静かに聞いている。
怒鳴らない。
机も叩かない。
ただ、理解している。
“戻らない”と。
「……均衡は、戻らぬのか」
誰に向けた問いでもない。
宰相が答える。
「縁を戻さぬ限り」
「戻せぬ」
即答。
アシュレイの声は硬い。
選択は誤りではなかった。
そう信じたい。
だが国は、確実に揺らいでいる。
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城下では豊穣祭の準備が最終段階に入る。
穂は重く、事故はなく、商館は満ちている。
「今年は例年以上だ!」
農夫たちの笑い声。
家令が報告する。
「王都の先物契約、三割がこちらへ移行」
ディルクは低く言う。
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私は塔の上に立つ。
風は一定。
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胸の灯は今日も揺れない。
私は理解している。
これは勝利ではない。
奪ったのでもない。
“重ならない”だけだ。
王都では重なる。
こちらでは重ならない。
それだけの差。
夜。
王妃が玉座の前に立つ。
「殿下。玉座は石でできております」
アシュレイは顔を上げる。
「ですが、支えているのは流れです」
沈黙。
玉座は揺れていない。
だが支点は移った。
辺境の塔。
私は遠く王都を見る。
まだ立っている。
だが、揺らぎは止まらない。
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玉座は崩れていない。
だが、その下の“流れ”が揺れていた。
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