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第32話 王妃の決断
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第32話 王妃の決断
王城の奥、王妃の私室には重たい静寂があった。
机の上には二つの報告書。
一つは王都。
小規模事故の継続、交易量の緩やかな減少、商会の北上。
もう一つは辺境。
事故ゼロ、豊穣確定、交易増加。
どちらも誇張ではない。
数字は嘘をつかない。
王妃は静かに目を閉じる。
「均衡は、戻らない」
縁を戻す策は拒まれた。
形式的な再縁も叶わなかった。
ならば。
「支点を、認めるしかない」
彼女は低く呟く。
王都が中心であるという前提を捨てる。
それは屈辱ではない。
生存の選択だ。
同刻、王太子アシュレイは玉座の間で報告を受けていた。
「北路経由が正式に主軸となりました」
宰相の声は冷静だ。
「王都を経由しない流れが過半数」
沈黙。
怒りも、否定も出ない。
ただ、理解。
王都は崩れていない。
だが、中心ではなくなった。
「……母上は、何を考えている」
「調整です」
「調整?」
「北を排するのではなく、北を組み込む」
アシュレイは目を伏せる。
それは敗北ではない。
だが、勝利でもない。
一方、辺境伯領。
豊穣祭が始まる。
火は揺れず、風は穏やか。
子供たちが走り、怪我はない。
商人は笑い、兵は安定している。
私は塔の上に立つ。
胸の灯は変わらない。
強くも弱くもない。
ただ、整っている。
ディルクが言う。
「王妃が動く」
「どのように」
「敵ではなく、支点として扱うだろう」
私は静かに息を吸う。
敵でもなく、道具でもなく。
支点。
それは、初めての扱いだ。
夜。
王妃は書状を認める。
王太子の名ではない。
王家の名でもない。
“王妃”として。
――均衡を保つための協調を望む。
謝罪も強要もない。
ただ、認める。
北が支点であることを。
三十二日目。
王都は初めて、奪い返そうとするのをやめた。
そして、支点を受け入れる決断を下した。
王城の奥、王妃の私室には重たい静寂があった。
机の上には二つの報告書。
一つは王都。
小規模事故の継続、交易量の緩やかな減少、商会の北上。
もう一つは辺境。
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どちらも誇張ではない。
数字は嘘をつかない。
王妃は静かに目を閉じる。
「均衡は、戻らない」
縁を戻す策は拒まれた。
形式的な再縁も叶わなかった。
ならば。
「支点を、認めるしかない」
彼女は低く呟く。
王都が中心であるという前提を捨てる。
それは屈辱ではない。
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同刻、王太子アシュレイは玉座の間で報告を受けていた。
「北路経由が正式に主軸となりました」
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「王都を経由しない流れが過半数」
沈黙。
怒りも、否定も出ない。
ただ、理解。
王都は崩れていない。
だが、中心ではなくなった。
「……母上は、何を考えている」
「調整です」
「調整?」
「北を排するのではなく、北を組み込む」
アシュレイは目を伏せる。
それは敗北ではない。
だが、勝利でもない。
一方、辺境伯領。
豊穣祭が始まる。
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私は塔の上に立つ。
胸の灯は変わらない。
強くも弱くもない。
ただ、整っている。
ディルクが言う。
「王妃が動く」
「どのように」
「敵ではなく、支点として扱うだろう」
私は静かに息を吸う。
敵でもなく、道具でもなく。
支点。
それは、初めての扱いだ。
夜。
王妃は書状を認める。
王太子の名ではない。
王家の名でもない。
“王妃”として。
――均衡を保つための協調を望む。
謝罪も強要もない。
ただ、認める。
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そして、支点を受け入れる決断を下した。
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