托卵平民娘は悪事を企(托卵)んでる。婚約破棄?愚かすぎる王子は自滅しました。

ふわふわ

文字の大きさ
23 / 26
第6章 女帝の黎明

セクション2 「新しい秩序」

しおりを挟む


 ファミマリアが正式に皇后として即位してから数ヶ月。
 帝国は目に見えて変わり始めていた。

 彼女の提言によって、まず最初に手をつけられたのは税制だった。
 従来の帝国税は領ごとに差が大きく、貴族が勝手に取り立てる部分も多かった。
 そのため、農民は疲弊し、商人は不正に悩まされていた。

「領民が生き延びられなければ、税も国庫も枯れ果てますわ」
 ファミマリアは政務会議の場で静かに告げた。
「収入を増やしたければ、まず民に余裕を与えるべきです」

 そして彼女の改革により、帝国全土で統一税制が導入された。
 農民にとって過重な負担を減らし、商人には明瞭な関税を定め、不正を働く貴族には厳罰を科す――。

 この新制度は瞬く間に成果を挙げ、農村では生産が回復し、商人たちは積極的に帝国に投資を行うようになった。
 人々は口々に言った。
「皇后陛下の改革で暮らしが楽になった」
「これなら、帝国の未来は安泰だ」


 次に行われたのは軍制の改革だった。

 王国から流入する難民をただ養うだけでは負担が大きい。
 ファミマリアはそこで一つの提案をした。
「受け入れた者たちに土地を与え、労働力といたしましょう。ただし、一定の年齢に達した者は兵役を義務とします」

 この制度は「開拓兼兵役制」と呼ばれた。
 難民は新しい土地を耕しながら生活基盤を築き、その一方で軍事訓練を受ける。
 彼らはやがて帝国の兵士として加わり、国境の守備や新規開拓地の防衛に従事した。

「帝国に来て初めて、未来を感じられる……!」
「生きる意味を与えてくださったのは皇后陛下だ!」

 民の忠誠心は高まり、帝国軍は質も量も増していった。
 ジークフリードはその報告を聞きながら、思わず口元を緩めた。
「……恐ろしいな。民心を掌握するだけでなく、兵までも掌中に収めるとは」

 隣に座るファミマリアは微笑を浮かべる。
「当然ですわ。王国が愚かだったのは、民をただ搾取し、戦争の駒としてしか見なかったから。
 ですが私は違います。民は資源であり、力であり、未来そのものです」

 その瞳は揺るぎなく、誰も反論できなかった。



 さらに彼女は教育にも手を伸ばした。
 王国では平民が読み書きを学ぶことなどほとんど許されなかった。
 だがファミマリアは宣言する。

「民が無知であれば、国もまた愚かになるだけです。読み書きと計算を教えれば、農村の管理も商人の取引も発展する。……帝国の未来を築くのは、知識ある民なのです」

 こうして帝国各地に「学舎」が建てられ、子供たちが学ぶ姿が見られるようになった。
 最初は疑念の声もあったが、やがて農村の収穫量が増し、商取引の効率が上がると、人々は皇后の慧眼に驚嘆するしかなかった。

「皇后陛下は……王の伴侶ではなく、帝国を導く“女帝”そのものだ」

 その囁きは、次第に人々の共通認識となっていった。



 夜。宮殿のバルコニー。
 ファミマリアは遠い空を見上げていた。
 そこには、今なお衰退を続ける王国の旗が翻っている。

 ジークフリードが隣に立ち、静かに問いかけた。
「……王国はもはや限界だ。だが、それでも見捨てきれぬのか?」

 ファミマリアは扇子を閉じ、冷たく微笑んだ。
「いいえ。私は王国を見捨てました。……ただ、愚かな過去を教訓にするために、あの国を見届けているだけです」

 彼女の声は澄んでいて、どこまでも冷徹だった。

「帝国が未来を掴むためには、秩序を築かねばなりません。民を育て、兵を養い、商を繁栄させる。……私がその全てを整えましょう」

 ジークフリードは笑みを浮かべ、彼女の手を取った。
「ならば私は、剣としてその秩序を守ろう。……お前の築く未来を」

 二人の視線が交わり、月明かりに照らされた。
 その瞬間、帝国の新しい秩序は確かに芽吹いたのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

双子令嬢の幸せな婚約破棄

石田空
恋愛
クラウディアは双子の妹のクリスティナに当主の座と婚約者を奪われ、辺境の地に住まう貴族の元に嫁ぐこととなった……。 よくある姉妹格差の問題かと思いきや、クリスティナの結婚式のときにも仲睦まじく祝福の言葉を贈るクラウディア。 どうして双子の姉妹は、当主の座と婚約者を入れ替えてしまったのか。それぞれの婚約者の思惑は。 果たして世間の言うほど、ふたりは仲違いを起こしていたのだろうか。 双子令嬢の幸せな婚約破棄の顛末。 サイトより転載になります。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜

いっぺいちゃん
ファンタジー
タイトルは「没落令嬢、バイト始めました 〜毒舌執事と返済ライフ〜」 婚約破棄により一夜にしてすべてを失った侯爵令嬢・エリシア・フォン・リースフェルト。 残されたのは誇りと、支払いきれない式場キャンセル料、ドレス代、其の他諸々計二万五千リラ。 家は差し押さえ、財産もゼロ。 そんな彼女の傍に残ったのは、皮肉屋で冷静すぎる執事――セシルだけだった。 「働くのよ、セシル! 借金を返して、私の人生を取り戻すの!」 「……お嬢様、まずは焦げたパンをどうにかしてください」 料理も家事も世間知らずな令嬢と、口の悪い完璧執事。 身分を失った主従が、パン屋・酒場・劇場……とバイトを転々としながら、借金返済と再起を目指す日々が始まる。 ぶつかり合いながらも、次第に生まれていく信頼と絆。 そして、やがて明らかになるセシルの過去の秘密――。 没落から始まる、二人の再生と恋の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。 ※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

婚約者が最凶すぎて困っています

白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。 そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。 最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。 *幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。 *不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。 *カクヨム。小説家になろうにも投稿。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん
恋愛
 運命が狂った瞬間は…あの舞踏会での王太子殿下の婚約破棄宣言。  罪を犯し、家を取り潰され、王都から追放された元侯爵令嬢オリビアは、辺境の親類の子爵家の養女となった。  嫌々参加した辺境伯主催の夜会で大商家の息子に絡まれてしまったオリビアを助けてくれたダグラスは言った。 「お会いしたかった。元侯爵令嬢殿」  ダグラスは、オリビアの犯した罪を知っていて、更に頼みたい事があると言うが…

処理中です...