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第84話 特報! 特報!
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現実の夜。
僕はお風呂に入りながら今日の出来事を思い返していた。
(ファーストキス……だけど、バーチャルの世界だし無効かな)
まだ残っている。千尋ちゃんの唇の柔らかさ、口に当たる息、顔に掛かる髪の感触。
(うぅ……! ドキドキが止まらない……! キスってあんな凄いの? バーチャルでこんなになるのに、もしも現実でやったら僕……心臓破裂しちゃうよ……)
口を湯船に埋め、ブクブクと泡を吹かす。
(き、キスの件は一旦置いとこう。考えれば考えるほどドツボだ)
気を入れ直し、湯船から顔を出して右の頬を撫でる。
(赤いワルサー……『ワルサーP38 Red-Lie』。不意を衝かれたとはいえ、僕はアレをくらい、そして……負けた。そう、アレは負けだ。キスされるぐらい接近されたのに反応できなかったんだ。やろうと思えば千尋ちゃんは僕を倒せた)
1対1で、ハンデの無い状態で負けるのはインフェニティ・スペースでは初めてかもね。というか、記憶を辿ってもイーブンな条件で負けたのはかなり昔、梓羽ちゃんに負けた時以来かも。
『じゃあさ! わたしは大怪盗になるから、レイちゃんは最高のガンマンになってよ! わたしがルパンで、レイちゃんが次元大介になるの!』
いつかの千尋ちゃんの言葉が蘇る。
次元大介、か。
(むしろ、僕は……)
ガラ。と風呂の戸が開かれる。
「あれ? お姉ちゃん、入ってたの?」
一糸まとわぬ妹ちゃんが入ってきた。
「梓羽ちゃん!? な、なんで……」
「着替えも無いし、気配もないから入ってないと思ってた」
「あ、着替え……忘れてた」
しまった。動揺していたせいで着替えを持ってくるのを忘れていた。
あとでバスタオル巻いて取りに行かないと。
「ま、別にいっか。入っちゃうね」
梓羽ちゃんとお風呂とか久しぶりだ。僕が中学生、梓羽ちゃんが小学生の時以来かな。
(妹とはいえ……いや、むしろ妹だからこそ、裸体は直視しづらい……)
と思いつつ、チラチラとシャワーを浴びる妹の体を見る。
一切の贅肉のない、洗練された体。細いけどガリガリではなく、引き締まっているという表現が正しい。一方で僕はまだまだ細身に分類されるけども、最近はお腹にちょっとぶよぶよの肉が……。
梓羽ちゃんはシャワーを終えると、湯船に入ってくる。しかも、僕に背中を預ける形で。僕の足と足の間に座り、僕の体に背中を押し付ける。
「なんか久しぶりだね。こうして梓羽ちゃんとお風呂入るの」
梓羽ちゃんと一緒に入る時はいつもこのスタイルだったなぁ。
「さすがに女子高生と女子中学生が一緒に入るのはね……」
「僕は全然気にしないけどなぁ。また梓羽ちゃんに頭洗ってもらいたいし」
「あのさ、普通は姉が妹の頭を洗うもんじゃないの? 幼稚園の頃とかずっと、お姉ちゃんの頭を私が洗ってあげてたけど、絶対逆だよね。しかもお姉ちゃん、目に泡が入るの怖いからってシャンプーハット付けてた。私はとっくにシャンプーハット取れてたのに」
今でもシャンプーの泡はちょっと怖いとは言えない……。
「え~、もしかして梓羽ちゃん、僕に頭洗って欲しいの?」
「……別に」
「まーたまた、照れちゃって!」
「照れてないし。お姉ちゃんみたいに女子力ない人に髪触って欲しくない」
「むっ……!」
僕は梓羽ちゃんの両脇を鷲掴みにする。
「みゃっ!? ――ちょっとレイ姉!」
「脇掴まれると力抜けちゃうの、治ってないんだね~」
「この……! 妹にだけ陽キャきしょい!」
「ぐさあっ!?」
愛しの妹からのドストレート悪口! メンタルにクリティカルヒット・スナイプ!
「隙あり」
「にゃあ!!?」
梓羽ちゃんが僕のへそを人差し指で撫でる。
「そっちこそ、へそが弱点なの変わらないんだね」
「や、やめっ! ちょ、梓羽ちゃん! へそはホントにダメだって――うわぁ!?」
くすぐりから逃れようと足に力を込めたのだが、動揺のあまり足を滑らせてしまった。
「ちょっ! こっちに倒れ――」
僕は梓羽ちゃんに胸を押し付けながら湯船に倒れ込んだ。
---
8月15日。
今日も今日とてインフェニティ・スペースにログイン。
家(というか戦艦)の食堂のテーブルに武装を出し、1つ1つ手入れをする。
(次、いつどこに彼女は現れるのだろう。僕は……千尋ちゃんを倒したい)
トライアドを取り返したことでネスさんや軍警の方々にはかなり褒められた。褒められた際、僕はネスさんに怪盗ラビリンスの情報を僕に流すようにお願いした。もしもオケアノスで、また彼女が予告状を出したなら、僕の耳にも入るだろう。
問題は彼女がオケアノスに残るかどうかだ。怪盗ラビリンスはこの宇宙のどこにでも現れる。オケアノスにこだわってはいない。けれど、取り逃した宝をそのままにするなんて、怪盗のプライドが許すだろうか。
カランカラン、と鐘の音が耳に届く。
「お客様かな……知っている人ならいいけど」
僕は戦艦の傍の桟橋に鐘を置いている。呼び鈴代わりだ。用がある人はこれを鳴らしてくれと橋に貼り紙をしている。
甲板に出て、桟橋を見下ろすとタバコを咥えたロリっ子がいた。
「よっ!」
「イヴさん? 用があるならメッセージを送ってくれればいいのに」
「いきなり行って驚かせたくてな」
「驚かせる?」
「これ、見たか?」
イヴさんは脇に抱えた新聞を開いて見せる。
「ぶっ!?」
僕は新聞の大見出しを見て、思わず噴き出した。
そこには……『大怪盗ラビリンス! 乙女の唇を奪う!』という文字と共に、僕と千尋ちゃんがキスをしている写真が大きく貼り出されていた……。
僕はお風呂に入りながら今日の出来事を思い返していた。
(ファーストキス……だけど、バーチャルの世界だし無効かな)
まだ残っている。千尋ちゃんの唇の柔らかさ、口に当たる息、顔に掛かる髪の感触。
(うぅ……! ドキドキが止まらない……! キスってあんな凄いの? バーチャルでこんなになるのに、もしも現実でやったら僕……心臓破裂しちゃうよ……)
口を湯船に埋め、ブクブクと泡を吹かす。
(き、キスの件は一旦置いとこう。考えれば考えるほどドツボだ)
気を入れ直し、湯船から顔を出して右の頬を撫でる。
(赤いワルサー……『ワルサーP38 Red-Lie』。不意を衝かれたとはいえ、僕はアレをくらい、そして……負けた。そう、アレは負けだ。キスされるぐらい接近されたのに反応できなかったんだ。やろうと思えば千尋ちゃんは僕を倒せた)
1対1で、ハンデの無い状態で負けるのはインフェニティ・スペースでは初めてかもね。というか、記憶を辿ってもイーブンな条件で負けたのはかなり昔、梓羽ちゃんに負けた時以来かも。
『じゃあさ! わたしは大怪盗になるから、レイちゃんは最高のガンマンになってよ! わたしがルパンで、レイちゃんが次元大介になるの!』
いつかの千尋ちゃんの言葉が蘇る。
次元大介、か。
(むしろ、僕は……)
ガラ。と風呂の戸が開かれる。
「あれ? お姉ちゃん、入ってたの?」
一糸まとわぬ妹ちゃんが入ってきた。
「梓羽ちゃん!? な、なんで……」
「着替えも無いし、気配もないから入ってないと思ってた」
「あ、着替え……忘れてた」
しまった。動揺していたせいで着替えを持ってくるのを忘れていた。
あとでバスタオル巻いて取りに行かないと。
「ま、別にいっか。入っちゃうね」
梓羽ちゃんとお風呂とか久しぶりだ。僕が中学生、梓羽ちゃんが小学生の時以来かな。
(妹とはいえ……いや、むしろ妹だからこそ、裸体は直視しづらい……)
と思いつつ、チラチラとシャワーを浴びる妹の体を見る。
一切の贅肉のない、洗練された体。細いけどガリガリではなく、引き締まっているという表現が正しい。一方で僕はまだまだ細身に分類されるけども、最近はお腹にちょっとぶよぶよの肉が……。
梓羽ちゃんはシャワーを終えると、湯船に入ってくる。しかも、僕に背中を預ける形で。僕の足と足の間に座り、僕の体に背中を押し付ける。
「なんか久しぶりだね。こうして梓羽ちゃんとお風呂入るの」
梓羽ちゃんと一緒に入る時はいつもこのスタイルだったなぁ。
「さすがに女子高生と女子中学生が一緒に入るのはね……」
「僕は全然気にしないけどなぁ。また梓羽ちゃんに頭洗ってもらいたいし」
「あのさ、普通は姉が妹の頭を洗うもんじゃないの? 幼稚園の頃とかずっと、お姉ちゃんの頭を私が洗ってあげてたけど、絶対逆だよね。しかもお姉ちゃん、目に泡が入るの怖いからってシャンプーハット付けてた。私はとっくにシャンプーハット取れてたのに」
今でもシャンプーの泡はちょっと怖いとは言えない……。
「え~、もしかして梓羽ちゃん、僕に頭洗って欲しいの?」
「……別に」
「まーたまた、照れちゃって!」
「照れてないし。お姉ちゃんみたいに女子力ない人に髪触って欲しくない」
「むっ……!」
僕は梓羽ちゃんの両脇を鷲掴みにする。
「みゃっ!? ――ちょっとレイ姉!」
「脇掴まれると力抜けちゃうの、治ってないんだね~」
「この……! 妹にだけ陽キャきしょい!」
「ぐさあっ!?」
愛しの妹からのドストレート悪口! メンタルにクリティカルヒット・スナイプ!
「隙あり」
「にゃあ!!?」
梓羽ちゃんが僕のへそを人差し指で撫でる。
「そっちこそ、へそが弱点なの変わらないんだね」
「や、やめっ! ちょ、梓羽ちゃん! へそはホントにダメだって――うわぁ!?」
くすぐりから逃れようと足に力を込めたのだが、動揺のあまり足を滑らせてしまった。
「ちょっ! こっちに倒れ――」
僕は梓羽ちゃんに胸を押し付けながら湯船に倒れ込んだ。
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8月15日。
今日も今日とてインフェニティ・スペースにログイン。
家(というか戦艦)の食堂のテーブルに武装を出し、1つ1つ手入れをする。
(次、いつどこに彼女は現れるのだろう。僕は……千尋ちゃんを倒したい)
トライアドを取り返したことでネスさんや軍警の方々にはかなり褒められた。褒められた際、僕はネスさんに怪盗ラビリンスの情報を僕に流すようにお願いした。もしもオケアノスで、また彼女が予告状を出したなら、僕の耳にも入るだろう。
問題は彼女がオケアノスに残るかどうかだ。怪盗ラビリンスはこの宇宙のどこにでも現れる。オケアノスにこだわってはいない。けれど、取り逃した宝をそのままにするなんて、怪盗のプライドが許すだろうか。
カランカラン、と鐘の音が耳に届く。
「お客様かな……知っている人ならいいけど」
僕は戦艦の傍の桟橋に鐘を置いている。呼び鈴代わりだ。用がある人はこれを鳴らしてくれと橋に貼り紙をしている。
甲板に出て、桟橋を見下ろすとタバコを咥えたロリっ子がいた。
「よっ!」
「イヴさん? 用があるならメッセージを送ってくれればいいのに」
「いきなり行って驚かせたくてな」
「驚かせる?」
「これ、見たか?」
イヴさんは脇に抱えた新聞を開いて見せる。
「ぶっ!?」
僕は新聞の大見出しを見て、思わず噴き出した。
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