スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第105話 奇襲作戦

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 ネスさんを経由して、六仙さんに地球儀型の受信機について教える。
 すると20分ほどでネスさんがオケアノス兵をひきいてやってきた。兵隊の中には見知ったメカニックもいる。

「チャチャさん!」
「おっすシキっちょ~。ほえ~、これが噂の受信機ねぇ」

 チャチャさんは地球儀型受信機をくるくると回転させる。

「どうしてここに?」
「この受信機の情報を他端末に共有させるためさ。ふむふむ、こういう感じね。アーストリック社の受信端末を改造してるのか。技術は拙いけど、発想はおんもしろいね~」

 チャチャさんは腕時計型端末から電磁キーボードと電磁スクリーンを展開。さらに端末からケーブルを引っ張り出し、ケーブルを受信機に繋いで文章を打ち込み始めた。

「……前から思ってたんですけど、チャチャさん、オケアノス軍に入ったんですか?」
「入ったとは言えないかにゃ~。ましゅまろスマイルの活動もあるし、相談役って形でいざという時だけヘルプ入ってる感じだよ。ちょっとばかし、興味深いプランがあってね。そのプランのために協力してる感じかな」
「チャチャ様!」

 ネスさんがチャチャさんを威圧する。『喋るな』と目線で訴えている。どうやらそのプランとは機密情報のようだ。
 チャチャさんは謝るような手振りをし、作業を続ける。

「オッケー。共有化完了。これでアドレスさえ入力すれば位置情報を入手できるよ」

 チャチャさんは円形の携帯端末リモコンを出し、そこから3D映像で出来たオケアノスの模型を出す。電磁模型には発信機の場所が記されている。
 ネスさんは電磁模型をチェックすると、六仙さんにテレビ通話し、僕とチャチャさんを呼んだ。

『メーティス軍の本拠地は『サザンフォード島』、あの孤島か。これは非常にありがたい情報だ』

 六仙さんは頬を緩ませる。
 敵の本拠地の情報、それさえあれば話は簡単だ。

「あとは発信元を叩くだけですね。すぐにでも動くんですか?」
『いや。決戦の日まで本拠地は叩かない』
「なぜですか? 攻めない理由は無いかと思いますが」
 
 ネスさんが問う。

『考えてみろ。いま、奴らの戦力はそこに集中している。これを突破するのは骨だよ。開戦まで待って、奴らが各地に戦力を分散させた後、攻め込んだ方が良い』

 ネスさんが反論しようとするが、六仙さんは手で制し、

『それに、いま叩いたら各地に潜伏するメーティス軍を叩けない。わざわざ出てくると言っているんだ。この機会にコロニー内の膿を全て出す』

 よく考えてるな~。言いたいことは理解できた。
 今の段階で本拠地を潰すことは可能だと思う。ただそれをすると、頭は叩けても手足は叩けない。各地で戦闘準備をしているであろうメーティス軍はまた息を潜め、新たな頭を作り、また戦を起こす可能性があるわけだ。

 だから待つ。敵が総戦力をあばくまで。
 でも安全にいくなら現段階で叩くべきだ。実際、開戦した場合の被害は計り知れない。

 ローリスクで目先の安寧を取りに行くか、ハイリスク承知で長期の安寧を取りに行くかの話。六仙さんは後者を選んだということ。

『さてシキ君』
「え!? なな、なんですか?」

 急に名前を呼ばれたからビックリした。

『今回我々は全戦力をオフェンス2、ディフェンス8の割合で分ける。理由は言わなくてもわかるよね?』
「え、えっとぉ~? 守る範囲が広いからですか……?」
『そうか。君は世界樹について知らないのか。ネス君』
「かしこまりました」

 ネスさんはペンライトを出し、スイッチを入れる。するとペンライトが光り、そのペン先に1本の木の入ったガラス玉の映像が現れた。

「これが世界樹です。コロニーの核と言っていいでしょう。現国王をデリートした後、1時間以内にこれに触れることで、コロニーの所有者が変わります。この世界樹はアシアのマザーベースに存在します」
『これを取られたら終わりなんだ。ゆえに、僕らは守備を固める。しかしだね。2割の戦力でメーティスの本拠地を落とすこともまた難しい話だ。グリーンアイスはTWなどの兵器開発において卓越した技術を持つ』

 月上さんのコピーを作れるぐらいだもん。技術力でいったらチャチャさんに匹敵するレベルではないだろうか。

『守備の硬さは半端なものじゃないだろう。防備というのは時間さえあればいくらでも増強できる。彼女の潜伏期間は2年以上……崩すことは難しい。そこでだ! 僕は君に、グリーンアイスのを頼みたい』
「あ、暗殺!?」

 本当に殺し屋みたいになってきたなぁ……。

『グリーンアイスのクラスはすでに犯罪者に変えてある。撃てば終わりだ。グリーンアイスが落ちれば戦局は決まる。オケアノス軍で何とか隙を作るから、君は単独でその隙をつき、グリーンアイスを狙撃してくれ。成功すれば万事解決~! ハッピーエンドってわけさぁ♪』

 扇子を開き、自身を仰ぐ六仙さん。

「そ、そんな無茶苦茶な……」
「超他力本願だな」

 イヴさんもっと言ってやってください!

「うん。チャチャさんも無茶だと思うなぁ~」
『そうかな? シキ君のセンスなら、可能性は0じゃないと思うけど』

 チャチャさんが腰に手を当て、

「このグリーンアイスってさ、少なくともチャチャさんと同程度以上の技術力は持ってるわけじゃん。グリーンアイスほどの資金力と軍事力があれば、きっと本拠地から50km以内は監視網が張ってあるよ。その更に外からの狙撃は難しいし、潜入もまず無理。どこから攻めたって、暗殺するのは無理じゃないかな~」
「そ、そうですよ六仙さん! む、無茶ですやっぱり!」

 さすがに、軍隊に単独で突っ込むのは無理だよ無理!

『ふーむ。確かになァ……』
「しかぁし!!」

 チャチャさんが大声で遮る。

「オケアノスより外からの急襲にはさすがに対応できないと思うよ~」

 にへへ。とチャチャさんは悪い笑みを浮かべる。
 まだ僕にはチャチャさんの真意がわからない。

『外から?』
「そう。例えば」

 チャチャさんは上空を指さし、

「宇宙から♪」
『……ははっ! そういうことか。それは非常に愉快だな!』
「え? え?? どういうことです?」
「あぁ~」

 後ろの方で話を聞いていたイヴさんが、納得したような声を上げる。

「宇宙船か。宇宙船で宇宙から敵基地に向けて突撃するってわけだろ?」
「そういうこと♪ 真上から、ズドーンとね! 暗殺というか、奇襲?」
「……いやいやいや、いやいやいやいや!! そんなの上手くいくわけ……」
『いいや悪くない。宇宙船の速度なら対空砲が反応する前に突撃できる』

 ほ、本気で言ってるの……?

「馬鹿げた話ですね……」

 ネスさんだけが僕と同じ反応だ。

「対空砲が反応する前に突撃できるってのはどうかな~? さっきも言ったけど、グリーンアイスの技術力は半端じゃない。防備に隙は無い。ある程度のダメージは覚悟した方が良い」
『被弾覚悟と考えると、かなりの強度と兵器を揃えた宇宙船が必要になるな。そうなると宇宙船というか、宇宙戦艦だね。速度もかなり必要になる』
「宇宙戦艦は……今はちょっと厳しいですね……」
『ああ』

 六仙さんもネスさんも渋い顔をする。

「なにかあったのですか?」
「いえ。少し別の件で出払っていまして、戦艦と呼べるレベルの宇宙船は無いんです」
「ふむふむ。宇宙戦艦がないってわけね。無いなら作ればいいじゃーん♪」
『そう簡単に言うけどねぇ。残り数日で用意できるのかい?』
「お任せあれ!」

 チャチャさんは胸を叩き、

「運が良いことに、この場に宇宙戦艦の素体となりえる戦艦を! 所持している子がいるのです!!」

 へぇ~、どこの誰だろう。
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