スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第106話 隕石直撃

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「い~や~で~す! い~や~で~す!  やめてくださいぃぃ!!!」

 僕はチャチャさんの背中にしがみつくも、ズルズルと引きずられてしまう。

「これは戦艦じゃなくて、僕の家なんです~!!」
「シキっちょ! 何百万の民の命と家! どっちが大事なのさ!」
「な、なにをこんな時だけまともなこと言ってるんですか!」

 宇宙戦艦の素体となりえる戦艦として、チャチャさんが挙げたのはなんと僕の家、僕の戦艦オールザウェイだった。
 許せるはずがない……こんな特攻作戦に使わせるわけにはいかない。十中八九、この作戦で使った戦艦は壊れる。

 もう僕はこの戦艦に強い愛着を持ってしまっている。内装も自分なりにオシャレにしたんだ。
 カーテンもピンクのフリフリのやつにしたり、観葉植物も可愛いのいっぱい飾ったし、ドーナツのクッションとかハートの壁紙とか、なんとなく女の子っぽいと感じた物を片っ端から買って配置したんだ!

 ここはもう、僕の第二の家なんだ!

「さてと、どこから手をつけたものか……」

 チャチャさんは戦艦の甲板で考え込む。もう止まる気はないらしい。

「そ、そもそもチャチャさん1人で改造できるんですか?」

 宇宙戦艦なんてそう簡単に作れないはず。

「心配はいらぬよシキっちょ。優秀な助手を呼んである」
「――そりゃ、あたしのことかな」

 スタ。と、僕の背後で着地の音がした。
 後ろを見ると、ソルニャーが立っていた。背中にはイヴさんが乗っている。

「言われた通り、工具とか色々持ってきたぞ」
「サンキュー、イヴりん♪」

「さっき振りにゃ。仮主殿」
「ソルニャー!」

 僕はソルニャーのふわもこな体に抱き着く。

「またお前と共同作業か」
「ゴールデンコンビ再臨なり~」

 チャチャさんとイヴさんのタッグ、対ナドラ研究所以来か。
 こ、この2人なら期日までに宇宙戦艦を作れてしまう……!

「や、やっぱりい~や~で~す!」

 仰向けに倒れ、手足をバタバタ動かして拒否の意を最大限伝える。

「なんでシキは幼児返りしてんだ?」
「この戦艦を改造することに反対なんだってさぁ~。仕方ないな~もう」

 あ、諦めてくれたかな。

「シキっちょ。宇宙戦艦に乗ってみたくは無いのかな」
「はうっ!?」
「宇宙船とは感覚が全然違うよ~? 宇宙戦艦はね、武装や加速機構にリソースを割く分、内部へのリカバリーが甘くてね。大気圏脱出も突入も、すんごいリアルな衝撃を味わえるんだよ!」
「うっ……!」
「それにさぁ、敵基地からの弾幕を掻い潜って基地へ突撃するなんて、すっごくワクワクしない? 戦艦で突撃するなんてもう~! ロボアニメマニアとしては涎が出ちゃうシチュエーションだよねぇ!!」
「くぅ……!!」
「さらば~♪ 地球よ~♪ 旅立つ~♪ 船は~♪」

 くぅ~! この人はいつも、僕の急所を的確に……!!

「ぬわぁ~!! わかりましたよわかりました! やってくれていいですとも! ただし、必ず補填してくださいねっ!!」
「もちろん!」
「……ちょろいな~、お前」

 さよならオールザウェイ。君のことは忘れない。

「僕も戦艦を改造するところ見学してもいいですか? せめて変わりゆく姿を見届けたいんです」
「いいよーん!」
「つか手伝えよ。人手足りてないし」

 チャチャさんは艦内の操縦室ブリッジへと足を運ぶ。
 チャチャさんはメインモニターを起動させ、モニターにオールザウェイの設計図と現在の状態を表示した。

「ふむふむ。弾薬とエネルギーがちょっと不足してるね。なんかあったん?」
「えぇっと、賞金稼ぎに襲われた際、迎撃システムレベル10を使いました」
「それでか。OK。これぐらいならすぐに補充できる」
「やっば。なんだこの設備……これ1機で軍隊相手できんだろ」

 イヴさんは設計図を読み取れたようで、感心の声を漏らす。

「元々そういう要望で作った戦艦だしね~。いま思えばあの子もメーティス軍の一員だったのかも。軍属でもないのにやけに武装にこだわってたから」

 そういえば、この戦艦って元は別の人のものだった。確かその子はアカウントBANされて、それで僕がオールザウェイを――

(というか今更だけど、この戦艦って100万程度で譲っていいものじゃないよね……明らかにその10倍、下手したら100倍の値段の価値がある)

 もしかしてこの人、僕にこの戦艦を管理キープさせるために売ったのでは!?
 いざという時にこうして使うために……。

「ちゃ、チャチャさん……あの」
「シキっちょ。チャチャさんはいつも善意100%で生きてるよ……」

 この人、悪意100%だ絶対!!

「フレアフィールドで大気圏は突破できるし、装甲レベルも十分。武装は宇宙で使う予定は無いから、別に弄る必要も無し。推進システムを選択式シフトにして、宇宙用のギアを入れないとね。姿勢制御システムと重力制御システムが不十分だからこれも何とかしないと――ああっ!?」

 突然、チャチャさんが奇声を上げた。

「どうしたよ」
「しまったぁ! エンジン! コアエンジンどうしよ! 宇宙戦艦ってめちゃくちゃエネルギー使うから、いま搭載してるエンジンじゃ無理だ!」
「それなら問題ない。ソルニャー」
「にゃっさ~」

 ソルニャーは僕らにお尻を向け、そのお尻から伸びている尻尾をフリフリとする。

「パージにゃ」

 尻尾の先端がポロっと落ち、銀の突起物が現れる。電源ケーブルの先っぽについてるアレに似てる。

「ソルニャーをコアエンジンに接続して、ソルニャーのコアエンジンであるフェニックスのエネルギーを戦艦に与える。ツインエンジンシステムだ」
「おぉ~! フェニックス! いいの持ってんねぇ。それなら問題ない」

 チャチャさんは戦艦の設計図に次々と新たな機構を付け足し、宇宙戦艦verの設計図を完成させる。さらに宇宙戦艦に改造するにあたって必要な資材をリスト化し、ソルニャーがリストの品をイヴさんの指示で買いに行った。

 資材が届いた後はチャチャさんとイヴさんが分かれて作業開始。ソルニャーやヒューマノイド(多分、僕のコピー)が2人を手伝う。

(僕いらな~。人手足りてるじゃないですか)

 ほとんど見物しているだけだ。だけど、宇宙戦艦が出来ていく様は面白い。
 ゲームだから簡略化されている作業もあれば、ゲームなのにかなり細部までやらないとダメな作業もある。たとえば兵装を取り付けたり、装甲を張り替えたりとかは1クリックで出来るけど、配線の組み換えとかプログラムの組み立ては手作業だ。

 僕は甲板に出て背筋を伸ばし、空を見上げる。

(ここに居るべきじゃないな。決戦に向けてレベルを上げるか、それともプレイヤースキルを上げるか……)

 その時、

「え?」

 真昼間の空に、真っ白の流星が走った。


 --- 


 オケアノス軍・マザーベース総統室――の天井は、大きな穴を作っていた。

 総統の机でいつもふんぞり返っていた六仙も、あまりの出来事に後転を決め机から転げ落ちていた。いつも冷静なネスも、目の前の光景が信じられず眼鏡をずり落としていた。

 軍の、総統の部屋に乱入してきた少女は、何食わぬ顔で聞く。

「シキは……どこ?」

 白い流星ならぬ白い隕石の乱入だ。
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