スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第107話 インフェニティ・レッスン

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『あー、もしもしシキ君。君にお客だよ。非常に非常識なお客様だ。人様のコロニーに乱入してあろうことかその王様の部屋にホールインワンしてきた愉快なお客様だ。砂漠に雪が降ってきたような衝撃だよ。早く来てくれ。あまりの事態に僕はいま、考えるのをやめてしまっている。僕がコントローラーを投げてしまう前に来てくれ。頼むよシキ君』

 なんて連絡を受け取った僕は刺客(賞金稼ぎ)を倒しつつ、アシアの軍港まで戦艦オールザウェイで行き、マザーベースへと足を運んだ。

 マザーベースの総統室に入り、目を疑った。天井に、隕石でも降ってきたようなどでかい穴が空いていた。しかもなぜか月上さんがソファーで茶菓子を食べており、六仙さんは呆けた顔で頬杖をついていて、ネスさんは指で額を繰り返し叩いている。

「――ぼ、僕……やっぱり帰ってもいいですか?」
「ダメだ。君が責任もって連れて帰れ、この暴れん坊を……!」

 六仙さんはご立腹のようだ~。しかもその怒りが僕へ向いている~。

「えっと、シラホシさん……僕にどういった用事で?」

 白い流星、もとい月上さんは茶菓子をごくんと飲み込み。

「特訓しよ」

 なんて気軽に言ってきた。

「と、特訓!?」
「うん。今日誰も月に来なくて暇だから、鍛えてあげる。なんか大きな戦いも近々あるんでしょ?」
「は、はい。あの、特訓はとってもありがたいですけど、僕を鍛えることが目的ならなぜ直接僕の所ではなくここに来たのですか?」
「あなたがコロニーのどこにいるかわからないから、ここで居場所を教えて貰おうと思って。国民のことを聞くなら王様でしょ?」
「……ここは案内所じゃないんだよ、シラホシ君」

 型破りにも程があるよ月上さん……。

「それはそれとして!」

 六仙さんは声の調子を上げ、

「白い流星の特訓とは興味があるねぇ。僕も参加させてくれないかな」
「構わない。あなたも可能性を持つ人間だから……」

 だけど。と月上さんは条件を付け加える。

「参加するのは私とシキとあなただけ。特訓の光景を撮影することは許さない。第三者が覗き見ることも許さない」
「その条件で構わないさ」
「……もし破ったら、この基地斬り刻むから」

 その最後のセリフが癪に障ったのか、六仙さんは机から降り、ポケットに手を突っ込んだまま月上さんを見下ろす。

「1度勝ったくらいで調子に乗るなよ。ここは僕のはらの中だ。月と同じに考えないことだよ。最低限相討ちに持っていけるだけの備えはある」

 もし六仙さんの言葉が事実でも、本音では戦いたくないはずだ。ロゼッタさんに睨まれている今のこの状況で、相討ち覚悟の戦いはリスクが大きすぎる。

「……あなたはまだ私の底を知らない。いいよ。この特訓で教えてあげる……どう足掻いても私に勝てないということを」
「面白い。ぜひご教授願いたいねぇ」

 な、なんか……空気悪い……!

「シミュレーターを用意して。1対2、私とあなた達2人で戦う」
「ぼ、僕と六仙さんがチームですか……!」
「シキ君とチームだなんて心が躍るね」

 僕も同感だ。
 六仙さんの指揮には興味がある。

完全武装フルアーマーでは戦わない。条件は揃える」

 この3人で僕だけ∞アーツ持ってないからね。完全武装フルアーマーで戦ったら僕だけフルボッコだ。
 でも、∞アーツ使いの衝突はちょっと見てみたかったかも。

「武装は全員4つ。初期選択できる武装から選んでもらう。ロールは自由に決めていいけど、スナイパーはやめてほしい」

 シミュレーターの中なら色々と設定は弄れる。武器もレア度が低い物なら自由に使える。ロールも自由に変更可能だけど、

「僕らスナイパーなのに?」
「遠距離だと声が届かないから、近~中距離のロールでお願い」

 そっか。指南するには声が遠いと困るもんね。

「フレンドになれば通話で話せるよ?」
「私は誰ともフレンドになる気はない」

 六仙さんは「やれやれ」と言いつつ、月上さんの要望を全面的に呑む姿勢を見せる。

「わかった。ネス君、こんな時にすまないが総統の役割を一時預ける」
「了解です」

 総統室を離れ、マザーベースのシミュレーター室へ。
 元々いた軍警の人たちには全員出て行ってもらい、僕らだけがシミュレーター室に残る。六仙さんがシミュレーターを操作すると、空間が広がり景色も変わって殺風景な真っ白な部屋になった。部屋には適当な障害物(立方体や直方体などの立体のオブジェクト)がまばらに設置されている。

「メニューから武装やロールを変えられる。全員が準備出来次第、始めようか」

 遠距離はダメとのことなので、ロールは『ガンナー』にし、武装はアサルトライフルとサーベル、シールドピース2セットでいくことにした。
 六仙さんはハンドガン×2とシールドピース2セット。月上さんはサーベル×2とシールドピース2セットに決めたようだ。

「今回教えるのは、インフェニティバーストの入り方」
「∞バースト……前に言っていたやつですね」

 脳の限界を引き出す……とか、そんな感じのやつだったはず。

「ちょい待ち。なんの話をしているかまったくわからないよ。なんだい∞バーストって」

 僕もちゃんとした説明を受けているわけじゃないんだよなぁ。

「∞バーストは、仮想空間内における『ゾーン』のようなもの」
「ゾーン?」
「スポーツでよく聞く単語だね。高い集中力と適度なリラックスが引き起こす活性状態。一言で言うなら絶好調、って感じかな」
「仮想体で起きるそれは、ゾーンとは比較にならない作用をもたらす。五感のキレ、脳波の数値、そして自分の『特性』が大幅に強化される。実演するよ。まずは、通常状態の私と戦ってもらう。その後で、∞バーストに入った私と戦い、その差を体感してもらう」
「OK。じゃあ、僕の発砲が合図だ」

 六仙はハンドガンを2丁とも抜き、右手に持ったハンドガンを頭上に向ける。僕もアサルトライフルを持ち、月上さんもサーベルを2本構える。
 距離は30m。

「よーい、ドン!」

 銃声が鳴り、全員が動き出す。
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