スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

文字の大きさ
108 / 113

第108話 底知れず

しおりを挟む
 六仙さんは空に1発撃ち、すぐさま2丁の照準を月上さんに合わせた。僕もアサルトライフルで月上さんを狙う。

 僕と六仙さんは同時にレーザーを放つ。

 月上さんは連弾を全て回避するが、これは予想内。

「シキ君! 君はそのまま本体を狙え!」

 六仙さんは集中して月上さんを狙うのをやめ、弾をばら撒き始めた。月上さんの動きが六仙さんの弾によって抑制され、次第に僕の弾丸が月上さんを捉え始める。月上さんは仕方なくシールドピースで防御を固める。

「来るよ。後退しつつ火力を維持」
「りょ、了解!」

 月上さんは防御を固めながら突進してくる。

「左に飛んで!」

 僕は六仙さんの言う通り左に飛ぶ。六仙さんは逆に右に飛ぶ。
 左右に散った僕と六仙さん。月上さんは六仙さんを追う。

「よし、そのまま背後を狙って!」

 六仙さんが正面から月上さんに攻撃し、僕が背後から月上さんを狙う。

(上手い! 自然と挟み撃ちの形になった!)

 これはさすがの月上さんもどうしようもないはず。

「高出力モード」

 月上さんは右手のサーベルを高出力モードにし、サーベルを延長。
 伸びたサーベルを手もとで回しながら直進。六仙さんの弾丸を回転させたサーベルで弾いて接近していく。

(サーベルを盾代わりに!?)

 僕の射撃はシールドピースでガードされる。
 ダメだ。削り切れない……!

(いやでも、高出力モードが終わるまでに六仙さんとの距離は詰め切れないはず!)

――スン!!

 と、風を切る音が鳴った。
 月上さんは右手のサーベルを投げ、六仙さんの右手のハンドガンを貫き破壊した。

「ちっ!」
「終わりだよ」

 六仙さんは残った左手のハンドガンで応戦するも、月上さんは真っ向から回避しつつ接近。左手のサーベルで六仙さんの胴体を切断する。
 デリートされた六仙さんはすぐさまその場に復活するけど、もちろんもう戦いには参加しない。

(削り切った!!)

 月上さんが六仙さんを倒すと同時に、シールドピースを削り切れた。防御の手を失った月上さんの左腕を僕の射撃が削り切る。

 月上さんは右手にサーベルを持ち替え、今度は僕に突撃を仕掛ける。

「あ」

 そこでちょうど、アサルトライフルがエネルギー切れ。

(慣れない武器だからエネルギー残量見誤った!)

 しかも、もう1つの武装はサーベルをチョイスしているという二重ポカ!

(まぁいいか。月上さんの剣術を直に見るなら、サーベルが1番!)

 僕はサーベルを起動させ、飛んできた月上さんと斬り合う。

「……サーベルもそれなりに使えるんだね」
「はい。剣が出てくるゲームも経験はあるので!」

 ガンマニアとはいえ、一通りのゲームジャンルは経験している。

「あなたは狙撃の技術が飛び抜けているけど、体術・剣術・戦術……他の能力も並じゃない。隙らしい隙は無いね」

 人に見られると緊張するという欠点はありますけどね。特に、接近戦は視線を直に感じるから体がちょくちょく硬直する……! やっぱり、接近戦で達人レベルに一歩遅れるのはこれが原因だなぁ……!

「と思ったけど、隙あり」

 月上さんのサーベルに首を落とされる。

(また首……! 偽物も含めたらこれで3回目の首斬りだよ!)

 デリートされ、すぐに復活する。

「2対1で勝てなかったのは残念だけど、良い線まではいけたね。正直、君との差はもっとあると思っていたよ」

 挑発するように六仙さんは言う。

「もしも2人が本来のロールだったら、私が負けてただろうね。だけどそれは、あくまで通常の私が相手の場合。次が、本番」

 月上さんは1度俯き、そして間を置かず顔を上げる。

「「!?」」

 僕と六仙さんはその威圧感から、思わずスラスターを使ってまで距離を取った。

「私は右腕一本このままでいい」

 なんだ、アレ。
 右眼に、『∞』のマークが浮かんでる……。

「これが――∞バースト。無限の力だ……」

 月上さんは合図を待たず、駆け出す。
 僕らは当然応戦するも、その場から動くことすら許されず、すれ違い様に僕も六仙さんも首を切断された。

(速い……はずはない。能力値は変わってないんだ。速度はさっきと変わらないはず! なのにまるで反応できなかった!!)

 無駄が無かった。1ミリの無駄すら無かった。
 弾の1発1発を、極限まで引きつけて回避していた。あと1ミリで掠るぐらいのギリギリで躱していた。体捌きも、これ以上無いほど洗練されていた。

 まるでRTA (リアルタイムアタック)――この条件で、僕と六仙さんを倒す最短ルートを月上さんは走ったのだ。

「お、驚いたな……これが君の全力か」
「いいえ。全力ではない」

 六仙さんは眉をひそめる。『マジで……?』と目は言っているが、口では言わない。
 六仙さん、やっぱり月上さんに対してだけはいつもの余裕が無い。ライバル意識みたいなのを感じる。

「私の特性は『スロースターター』。尻上がりに調子を上げていく能力。大体戦闘開始から10分ぐらいで私の調子は最高潮になる」

 まだ僕らは戦い初めて5分も経っていない。
 つまり、あと5分、彼女の調子は上がり続けるということ。

「もう5分、君と戦わないと君の全力は見れないということか」
「違う。『10分間調子が上がり続ける』というのはの話。さっきも言ったけど、∞バースト発動中は基礎能力だけでなく、個人の特性も大きく強化される」
「は……?」
「まさか、∞バーストが発動している時は、もっと上限が上ってことですか……!?」

 そんな……怪物過ぎる。

「一体どれだけの時間調子が上がり続けるんだい? 20分? 30分?」

 月上さんは首を横に振る。

「上限は

 僕と六仙さんは、瞳から光を消した。
 上限がない。それはつまり――

「無限。戦い続ける限り、私は永遠に強くなり続ける」

 白い流星、月上星架。
 底が知れないと常々思っていたけど、そりゃそうだ。底も知れないはずだ。なぜなら彼女に底なんて無いのだから。

「きっついな……ならば君を倒すには短期決戦じゃないとダメってことか。神速で動く君を短い時間で倒すなんて、無茶にも程が――」
「ふふっ。――あ、いや、すみません」

 思わず、笑ってしまった。そんな僕を見て、六仙さんは目を細め、月上さんは僅かに頬を緩ませた。

(やっぱり月上さんは凄いや。理不尽に強い。だからこそ『良い』。まだまだ僕の力じゃ足元にも及ばない……だからこそ『楽しい』)

 このターゲットだけは、誰にも譲れない。

(必ずあなたは、僕が撃つ……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

無表情ドールマスター

けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが そんなことは関係なく自由に行動していく物語 良ければ 誤字・脱字があれば指摘してください 感想もあれば嬉しいです 小説を書こうでも書いてます

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...