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第12話 ワクワクさせる女
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樹海に入って最初に出会ったのは意思を持って動く大木、樹人間だ。
大木の枝や根で攻撃してくる魔物でとにかく手数が多い。
「せいっ! せいっ! せーいっ!!」
しかしその手数の多い樹人間の攻撃を盾役のビビアンが大盾で全て弾く。
「ふん!」
弾かれ、弛んだ枝をロアンが斬っていく。
「ロアン、危ない!」
地中からロアンの背後に根を伸ばし、ロアンの背を狙う樹人間。
クレアはその根を投げナイフで迎撃する。
「気を付けなさいって!」
「ふん、お前が援護せずとも反応できていたさ」
「なんですとぉ!」
騎士と錬金術師が共闘する時、基本錬金術師は援護に回る。
クレアの場合は投げナイフによる援護だ。
「いったー! エマ、手首怪我した! 治して!」
「はいはい」
エマは粉末状にしたヒールポーションをビビアンの手首に投げる。粉末を浴びたビビアンの手首はダメージを治していった。
エマは多種多様な錬金液(錬金術で作り上げた薬液)を使用し、味方を治癒することを得意とする錬金術師だ。
「樹人間の急所の毒は除草剤の役割を持つウィードキラー・リキッド」
シグレットはバッグの中から緑色の液体が入った瓶を出し、クロボシに渡す。
クロボシは瓶の中の液体を矢尻に浸し、樹人間に毒矢を撃った。
毒矢を撃たれた樹人間は明らかに動きを悪くする。その隙に駆け出したロアンが樹人間を両断する。
クレアは武器の投擲による援護を得意とし、
エマはポーションによる治癒、
シグレットは毒による相手の弱体化や破壊を得意とする。
3人それぞれタイプが違う援護の形だ。
「みんなお疲れ様」
シグレットは拍手する。
「え? 私たち、めちゃくちゃコンビネーション良くない!?」
クレアが目を輝かせて言う。
「そうね。はじめてにしては中々良かったかも。役割がハッキリ別れてるからかな」
エマも同意する。
「……毒の錬成が得意な錬金術師と弓の名手のコンビ、抜群の相性だな」
ロアンがシグレットとクロボシの連携を称賛する。
「あはは、元銀級に褒められるなんて嬉しいね」
と笑顔で言いつつ、心の内では、
(ふん、まぁ動きは悪くなかったな。だがそれだけでクレアに相応しいとは言い切れない)
シグレットは常にロアンの動きをチェックし、品定めしていた。
戦闘に関しては今のところ、文句のつけようがなさそうだ。
それから何体もの魔物を相手にしつつ、コンビネーションを高めたパーティは樹海の中にある野原にて一息つく。
「そろそろ岩人形の生息地だ。ここで一度休憩しよう」
シグレットが提案する。
「ロアン君、水汲みを手伝ってくれないかな?」
「わかった」
シグレットはロアンを連れて、森の中の川へ向かった。
その背をエマは目で追い、
「クレア、2人の後をつけるよ」
「え? なんで?」
「面白そうだから」
「えー、疲れたから休みたい……」
乗り気じゃないクレアをエマが引っ張って連れていく。
---
川沿い。
水筒に水を汲むロアンとシグレット。
2人を木影から覗き見るクレアとエマ。
「率直に聞くよ、ロアン君」
「む?」
エマは耳を尖らせる。
シグレットは笑顔を剥がし、真剣な顔をする。
「クレアのこと、一人の女性としてどう評価している?」
自分の話題が出てきたことで、乗り気じゃなかったクレアも耳を研ぎ澄まし始めた。
「……女性として、か」
クレアはドキドキと胸を鳴らし、ロアンの答えを待つ。
ロアンは「ふむ」と一息ついて、
「チビ、色気ゼロ、短気暴力娘」
シグレットとクレアの額にピシッと血管が浮かぶ。
「あとはあれだ……」
お、さすがになにか良いこと言うかな? とクレアは胸を躍らせる。
「発情期スケベ」
そこまでロアンが口にしたところでクレアは「あの野郎……」と飛び出そうとするが、エマが「どーどー」とクレアを抱きとめる。
「まったく君はなにもわかっていない……!」
シグレットが怒りを露わにする。
「クレアほど魅力のある女性はいないだろう!」
「ほう? ではどのあたりが魅力的か教えていただこうか」
「まずご飯を食べる時に、リスみたいに頬いっぱいに食べ物を詰める姿が可愛いだろうが!」
「……アレか。共に食事している時にやられると恥ずかしいだけだな」
「どんな人間が相手だろうと物怖じしないタフな精神力! 尊敬に値する!」
「少しは躊躇いを覚えてほしいものだな、誰彼構わずドロップキックするのはどうかと思うぞ」
「武器の錬成能力は他を寄せ付けない、錬金術師として卓越した技術を持っている!」
「武器以外はまるで駄目だがな」
シグレットの誉め言葉を全て打ち返すロアン。
言い淀んだシグレットはロアンを指さす。
「ならばなぜ君はクレアと組んだんだ! ただの成り行きか?」
クレアも気になる質問だった。
ただの成り行きと言えば成り行き。お互いパートナーから見放され、余り者同士組んだに過ぎない。例えロアンが成り行きと答えても責めることはできない……。
「ふん、どうせ本心では誰でもいいんだろう?」
シグレットは視線を尖らせる。
「最初こそは成り行きだ。だが……」
ロアンは小さく笑い、
「もし、学園の全錬金術師の中から自由に1人を選べと言われても、俺はクレア=シーフィアを選ぶだろう。アイツほど……なにをしでかすかワクワクさせる女はいない」
ロアンの、真っすぐな言葉。嘘や冗談ではないと、声色でわかる。
クレアはロアンを直視できず、つい顔を下げてしまう。
「ま、アイツほどなにをやらかすか不安な女もいないがな」
(その余計な一言を我慢できんのか、お前はぁ~!!)
クレアは草陰から殺気をロアンの背中に送る。
「話は以上かな?」
シグレットはロアンの迫力を前に、言葉を止めてしまった。
――その時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
けたたましい魔獣の叫び声が4人の耳を貫いた。
「この声……!?」
「野原の方ね」
クレアとエマは思わず立ち上がる。
ロアンとシグレットは2人の姿を発見する。
「く、クレア!?」
「あっ、しまった……!」
「やれやれ、趣味の悪い」
「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃない。早くビビアンとクロのところへ戻ろう。あの2人が待機している辺りから聞こえている気がする」
「ああ、そしてこの鳴き声聞き覚えがある……」
ロアンは目を細め、
「岩人形だ」
―――――――
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大木の枝や根で攻撃してくる魔物でとにかく手数が多い。
「せいっ! せいっ! せーいっ!!」
しかしその手数の多い樹人間の攻撃を盾役のビビアンが大盾で全て弾く。
「ふん!」
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「ロアン、危ない!」
地中からロアンの背後に根を伸ばし、ロアンの背を狙う樹人間。
クレアはその根を投げナイフで迎撃する。
「気を付けなさいって!」
「ふん、お前が援護せずとも反応できていたさ」
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騎士と錬金術師が共闘する時、基本錬金術師は援護に回る。
クレアの場合は投げナイフによる援護だ。
「いったー! エマ、手首怪我した! 治して!」
「はいはい」
エマは粉末状にしたヒールポーションをビビアンの手首に投げる。粉末を浴びたビビアンの手首はダメージを治していった。
エマは多種多様な錬金液(錬金術で作り上げた薬液)を使用し、味方を治癒することを得意とする錬金術師だ。
「樹人間の急所の毒は除草剤の役割を持つウィードキラー・リキッド」
シグレットはバッグの中から緑色の液体が入った瓶を出し、クロボシに渡す。
クロボシは瓶の中の液体を矢尻に浸し、樹人間に毒矢を撃った。
毒矢を撃たれた樹人間は明らかに動きを悪くする。その隙に駆け出したロアンが樹人間を両断する。
クレアは武器の投擲による援護を得意とし、
エマはポーションによる治癒、
シグレットは毒による相手の弱体化や破壊を得意とする。
3人それぞれタイプが違う援護の形だ。
「みんなお疲れ様」
シグレットは拍手する。
「え? 私たち、めちゃくちゃコンビネーション良くない!?」
クレアが目を輝かせて言う。
「そうね。はじめてにしては中々良かったかも。役割がハッキリ別れてるからかな」
エマも同意する。
「……毒の錬成が得意な錬金術師と弓の名手のコンビ、抜群の相性だな」
ロアンがシグレットとクロボシの連携を称賛する。
「あはは、元銀級に褒められるなんて嬉しいね」
と笑顔で言いつつ、心の内では、
(ふん、まぁ動きは悪くなかったな。だがそれだけでクレアに相応しいとは言い切れない)
シグレットは常にロアンの動きをチェックし、品定めしていた。
戦闘に関しては今のところ、文句のつけようがなさそうだ。
それから何体もの魔物を相手にしつつ、コンビネーションを高めたパーティは樹海の中にある野原にて一息つく。
「そろそろ岩人形の生息地だ。ここで一度休憩しよう」
シグレットが提案する。
「ロアン君、水汲みを手伝ってくれないかな?」
「わかった」
シグレットはロアンを連れて、森の中の川へ向かった。
その背をエマは目で追い、
「クレア、2人の後をつけるよ」
「え? なんで?」
「面白そうだから」
「えー、疲れたから休みたい……」
乗り気じゃないクレアをエマが引っ張って連れていく。
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川沿い。
水筒に水を汲むロアンとシグレット。
2人を木影から覗き見るクレアとエマ。
「率直に聞くよ、ロアン君」
「む?」
エマは耳を尖らせる。
シグレットは笑顔を剥がし、真剣な顔をする。
「クレアのこと、一人の女性としてどう評価している?」
自分の話題が出てきたことで、乗り気じゃなかったクレアも耳を研ぎ澄まし始めた。
「……女性として、か」
クレアはドキドキと胸を鳴らし、ロアンの答えを待つ。
ロアンは「ふむ」と一息ついて、
「チビ、色気ゼロ、短気暴力娘」
シグレットとクレアの額にピシッと血管が浮かぶ。
「あとはあれだ……」
お、さすがになにか良いこと言うかな? とクレアは胸を躍らせる。
「発情期スケベ」
そこまでロアンが口にしたところでクレアは「あの野郎……」と飛び出そうとするが、エマが「どーどー」とクレアを抱きとめる。
「まったく君はなにもわかっていない……!」
シグレットが怒りを露わにする。
「クレアほど魅力のある女性はいないだろう!」
「ほう? ではどのあたりが魅力的か教えていただこうか」
「まずご飯を食べる時に、リスみたいに頬いっぱいに食べ物を詰める姿が可愛いだろうが!」
「……アレか。共に食事している時にやられると恥ずかしいだけだな」
「どんな人間が相手だろうと物怖じしないタフな精神力! 尊敬に値する!」
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シグレットの誉め言葉を全て打ち返すロアン。
言い淀んだシグレットはロアンを指さす。
「ならばなぜ君はクレアと組んだんだ! ただの成り行きか?」
クレアも気になる質問だった。
ただの成り行きと言えば成り行き。お互いパートナーから見放され、余り者同士組んだに過ぎない。例えロアンが成り行きと答えても責めることはできない……。
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シグレットは視線を尖らせる。
「最初こそは成り行きだ。だが……」
ロアンは小さく笑い、
「もし、学園の全錬金術師の中から自由に1人を選べと言われても、俺はクレア=シーフィアを選ぶだろう。アイツほど……なにをしでかすかワクワクさせる女はいない」
ロアンの、真っすぐな言葉。嘘や冗談ではないと、声色でわかる。
クレアはロアンを直視できず、つい顔を下げてしまう。
「ま、アイツほどなにをやらかすか不安な女もいないがな」
(その余計な一言を我慢できんのか、お前はぁ~!!)
クレアは草陰から殺気をロアンの背中に送る。
「話は以上かな?」
シグレットはロアンの迫力を前に、言葉を止めてしまった。
――その時だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
けたたましい魔獣の叫び声が4人の耳を貫いた。
「この声……!?」
「野原の方ね」
クレアとエマは思わず立ち上がる。
ロアンとシグレットは2人の姿を発見する。
「く、クレア!?」
「あっ、しまった……!」
「やれやれ、趣味の悪い」
「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃない。早くビビアンとクロのところへ戻ろう。あの2人が待機している辺りから聞こえている気がする」
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