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第11話 ペアの形は人それぞれ

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 ロアンは一匹狼のような気質がある。
 クレアと最初組んだ時だって自分1人で星級ステラランクまで上がろうとしていた。そんな彼がパーティの話を受けるかどうかクレアは半信半疑だった。
 しかし、

「いいだろう」

 騎士専科ナイトクラスの教室に乱入したクレアがロアンを誘うと、ロアンはあっさりと了承した。

「へぇ、意外。てっきり『岩人形ロックゴーレムなど俺1人の力で十分だ。他の奴の手はいらん』とでも言うかと思った」

 クレアはロアンの物まねをして言う。

「お前の友人であるシグレット=リーパー、奴の名は知っている。毒の錬成に関しては教師すら凌ぐと言われる錬金術師だ。加えて、奴のパートナーであるクロボシは学年トップの弓兵。奴の弓の腕は見たことあるが、アレは素晴らしいものだったな。あのコンビが味方ならば足を引っ張ることはあるまい」

「へぇ、シグとクロってそんな有名人だったんだ」

「お前は奴らとどういう関係だ?」

「エマもシグもクロも同じ村の幼馴染よ。エマのパートナーのビビアンだけ面識ないわね」

「ビビアンならあそこにいるぞ」

 ロアンは顎をクイッと動かし、教室前方にクレアの視線を誘導する。

「あのツインテールの子?」

「そうだ」

「かわいい……」

 茶髪でツインテールの女子だ。キリッと強気な目つきをしている。
 なにやら貴族の男子と仲睦まじく話している。

「アイツは性格に難があるが優秀な盾役ガードナーだよ」

 同じクラスだけあってロアンはビビアンのことをよく知っているようだ。

「そろそろ帰ったらどうだ? 午後の授業が始まるぞ」

「げっ! もうこんな時間!?」

 教室の掛け時計を見たクレアは慌てて教室を出る。
 廊下に入ると、ちょうどロアンのクラスの隣のクラスに入ろうとする赤毛が1人。

「ヴィンセント様?」

 ヴィンセントはクレアを見つけると顔を綻ばせそうになるが、貴族のプライドで何とか緩んだ表情を引き締める。
 ヴィンセントは無言でクレアに近づき、

「え?」

 クレアの前髪を右手で押さえ上げ、自分のおでことクレアのおでこを接触させた。

「みゃっ!?」

 予想外のヴィセントの行動にクレアは硬直する。
 硬く、それでいてにきび1つない繊細な肌の感触がおでこに伝わる。クレアは自身のおでこになにか出来物がなかっただろうか不安になり、すぐさま距離をとった。

「ななな、なにをするのですか!?」

「……もう熱はないようだな」

 そこでクレアは思いだす、自分が倒れてからヴィンセントと会っていなかったことを。

「そ、その件はありがとうございました。ヴィンセント様が医務室まで運んでくれたんですよね?」

「まったくだ。俺の手を煩わせやがって」

 ヴィンセントはそう口にしつつ、「……違う、そうじゃない。そういうことが言いたいんじゃなくて」と自分の意思とは違うことを口走る口に嫌気を差す。

「……治って良かったな。お前はやっぱり、呆れるぐらい元気なのがお似合いだ」

 いつもと違い、憂いのあるヴィンセントの表情に、クレアはつい頬を赤く染めてしまう。

「おい」

 そんな2人の間に割り込む男が1人。
 褐色肌の騎士、ロアンだ。

「いつまでここに居る? とっとと錬金術専科アルケミストクラスに帰れ」

 ロアンはどこか不機嫌そうに言い放った。

「あ、そ、そうね。早く帰らなくちゃ……」

 クレアはぎこちない動きで階段の方へ向かう。
 一度だけ振り返ってみると、一切の言葉を発せず、にらみ合う2人の騎士の姿があった。


 ---  


 休日がやってきた。
 樹海の入り口に、総勢6名の学生が集まる。

 クレア&ロアン。
 エマ&ビビアン。
 シグレット&クロボシ。

 3ペア勢揃いだ。

「ビビアンさんとロアン君ははじまして! 今回の狩りを計画したシグレットです。毒の錬成を得意としています。このパーティはひとまず僕がリーダーとして指示を出すつもりなので、よろしくお願いします」

 シグレットに続いてクレアとエマも自己紹介する。
 錬金術師3人が自己紹介を終えると、次は騎士であるクロボシが口を開いた。

「……クロボシだ。弓兵をやっている。あまり喋るのは得意じゃない」

 と短い文で自己紹介を終えた。
 クロボシは真っ黒な髪をした男子で、頭には髪の色と同じ真っ黒なバンダナを巻いている。
 存在感が希薄で、今にも影に溶けそうだ。背には弓と矢筒を背負っている。

「ロアンだ。剣士、以上」

 ロアンはクロボシより短い文章で自己紹介を終えた。

 そして最後に名乗るは……大きな盾を背負った少女だ。

「ビビアン=マーチェリーよ。先に言っておくけど……私は貴族以外の男に興味はない!」

 ビビアンは男3人を順々に見て言った。

「夢は玉の輿! 貴族と添い遂げるためにこの学校に来たわ! 平民共! 私に惚れても無駄だからうっかり惚れないよう気をつけなさい!! 以上よ!」

 唖然とする一同。

「お前も平民のクセに」
「あっはは、面白い子だね」
「……」

 ボヤくロアン、苦笑いするシグレット、無言無表情でビビアンを見るクロボシ。

「え? それならなんで平民で女子のエマとペアになったの?」

 湧いた疑問をクレアはそのまま口にする。

「貴族は基本、平民と組みたがらないからね~。平民の男と組んだら貴族男子に勘違いされるかもだし、エマで妥協したのよ」

「私は男と組むと面倒な問題が多いと思ったからビビアンと組んだ。利害は一致してる」

「いろんなペアの形があるのね……」

 こうして個性豊かな6人パーティが出来上がったのだった。


―――――――

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