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第13話 vsロックゴーレム
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クレア、ロアン、エマ、シグレットが居なくなった後、野原にはビビアンとクロボシだけが残された。
「……」
(なーんで、よりによってコイツと2人きりにされるわけ?)
おしゃべりなビビアンと寡黙なクロボシは相性最悪。
気まずい空気が流れる。
(つーかみんなどこ行ったの? もうっ! そもそも男3人もいて全員平民とかどういうことよっ!)
苛々とするビビアンに、クロボシが無言で近づいてくる。
「は? なに?」
「足、見せろ」
2人きりという状況もあって、ビビアンはクロボシに恐怖を覚える。
「なっ! ふざけないで! 変な気起こしたら殺すわよ!」
「……」
クロボシは無言でビビアンの右足首を掴む。
「つっ!?」
ビビアンの足首には引っかき傷のようなものがあった。
クロボシはポーチから消毒液と包帯を取り、治療していく。
「こ、こんなのただのかすり傷だって……」
「自然を舐めるな。ただのかすり傷が致命傷になりえる」
最初こそ抵抗していたビビアンだったが、有無を言わせず治療するクロボシに観念しておとなしくなる。
包帯を巻き終えると、クロボシは立ち上がり、また静かに距離を取った。
「……」
(変なやつ……)
鎮座するクロボシ。だがすぐにクロボシは瞼を開き、立ち上がった。
「避けろ!!!」
普段物静かなクロボシの怒号。
ビビアンはすぐさま背後の殺気を感じ、飛びのいた。
ビビアンの座っていた岩を、岩の拳が打ち砕く。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
人型の岩石の集合体、岩人形が雄たけびをあげた。
---
クレアたちがビビアンたちと合流したのは岩人形が現れてから3分後のことだった。
「ビビアン! クロ!」
エマが声を掛ける。
クロボシは唇から血を零し、片膝をついている。
ビビアンは左腕をぶらんと下ろし、右腕だけで盾を持っている。
「エマは2人の治療を! ロアンは前線で盾になってくれ!」
シグレットが指示を飛ばす。
ロアンは前に出て、岩人形の攻撃を弾き返していく。
「ぐっ!」
ロアンの剣と岩の拳が衝突する度、大気が震えるほどの衝撃が起きる。
ロアンが踏ん張っている間にビビアンとクロボシをエマが治療する。
「……2人は動けなさそうだね。クレア、僕の毒を君に預ける」
「了解! 私がクロの役割を担うわけね」
岩人形が右拳を引いた。
嫌な予感を察知したロアンが後ろを振り向く。
「気を付けろ!」
岩人形はクレアに向かって拳の先にある岩石を飛ばした。
「クレア!」
シグレットの声。
クレアは大きく飛び上がり、岩石を躱す。
「あっぶない!」
クレアは着地し、おでこの汗を拭った。
シグレットはホッと胸を撫でおろす。
(クレアは騎士の適正も持つ錬金術師。こういう陣形が乱れた時には頼りになる……ますます惚れ直しちゃうな~っ!)
いけないいけないと、シグレットは自らの頬を叩き、呆けた心を引き締め直す。
シグレットはバッグから黄色の液体の入った瓶を出し、
「アシッド・リキッド。岩人形の表面を柔らかくする毒だ」
クレアがシグレットから毒を受け取る。
「狙うのは胸の中心、岩人形は人間と同じ場所に心臓を持つ。毒で表面を軟化させてロアン君の剣で貫いてもらおう」
「私の責任重大ね」
クレアは毒にナイフを浸し、岩人形に接近する。
「……うえぇ!? 無理しちゃダメだ! クレア!」
「確実に当てるにはもっと近づかないと!」
「やれやれ……我がパートナーながら世話の焼ける」
クレアに意識を向ける岩人形、しかしロアンが岩人形の足を弾き、意識を自身に集中させる。
「お前の相手は俺だ、でくの坊」
ロアンが引き付けている間に、クレアは必中距離に踏み込んだ。
クレアは毒付きナイフを投げる。
「いっけぇ!」
クレアのナイフが、岩人形の胸に突き刺さった。
「がああああああああああああっっ!!?」
岩人形の胸が酸化し、溶けていく。
「よし、成功――」
「ガアアアアアッ!!!」
様子がおかしい。
岩人形が暴れ出した。興奮しているようだ。
(岩人形は岩の表面を剥がした先に神経を張り巡らしている……毒が強すぎて、内部の神経まで侵してしまったのか!?)
神経が毒に反応し、激痛から悶えている。
岩人形は暴走し、クレアに向かって走り出した。
「え……ちょっと待って!!」
騎士の適正を持つとはいえ、さすがのクレアも岩人形に真っ向から立ち向かうのは無理だ。
(しまった……! 僕のミスだ!!)
シグレットはクレアに手を伸ばすが、クレアとシグレットの距離は10メートル近くある。
助けに行くには離れすぎているし、例え間に合ってもシグレットでは岩人形の暴走は止められない。
「クレアァ!!!」
岩人形が拳をあげ、クレアに向かって振り下ろす――
―――――――
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「……」
(なーんで、よりによってコイツと2人きりにされるわけ?)
おしゃべりなビビアンと寡黙なクロボシは相性最悪。
気まずい空気が流れる。
(つーかみんなどこ行ったの? もうっ! そもそも男3人もいて全員平民とかどういうことよっ!)
苛々とするビビアンに、クロボシが無言で近づいてくる。
「は? なに?」
「足、見せろ」
2人きりという状況もあって、ビビアンはクロボシに恐怖を覚える。
「なっ! ふざけないで! 変な気起こしたら殺すわよ!」
「……」
クロボシは無言でビビアンの右足首を掴む。
「つっ!?」
ビビアンの足首には引っかき傷のようなものがあった。
クロボシはポーチから消毒液と包帯を取り、治療していく。
「こ、こんなのただのかすり傷だって……」
「自然を舐めるな。ただのかすり傷が致命傷になりえる」
最初こそ抵抗していたビビアンだったが、有無を言わせず治療するクロボシに観念しておとなしくなる。
包帯を巻き終えると、クロボシは立ち上がり、また静かに距離を取った。
「……」
(変なやつ……)
鎮座するクロボシ。だがすぐにクロボシは瞼を開き、立ち上がった。
「避けろ!!!」
普段物静かなクロボシの怒号。
ビビアンはすぐさま背後の殺気を感じ、飛びのいた。
ビビアンの座っていた岩を、岩の拳が打ち砕く。
「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」
人型の岩石の集合体、岩人形が雄たけびをあげた。
---
クレアたちがビビアンたちと合流したのは岩人形が現れてから3分後のことだった。
「ビビアン! クロ!」
エマが声を掛ける。
クロボシは唇から血を零し、片膝をついている。
ビビアンは左腕をぶらんと下ろし、右腕だけで盾を持っている。
「エマは2人の治療を! ロアンは前線で盾になってくれ!」
シグレットが指示を飛ばす。
ロアンは前に出て、岩人形の攻撃を弾き返していく。
「ぐっ!」
ロアンの剣と岩の拳が衝突する度、大気が震えるほどの衝撃が起きる。
ロアンが踏ん張っている間にビビアンとクロボシをエマが治療する。
「……2人は動けなさそうだね。クレア、僕の毒を君に預ける」
「了解! 私がクロの役割を担うわけね」
岩人形が右拳を引いた。
嫌な予感を察知したロアンが後ろを振り向く。
「気を付けろ!」
岩人形はクレアに向かって拳の先にある岩石を飛ばした。
「クレア!」
シグレットの声。
クレアは大きく飛び上がり、岩石を躱す。
「あっぶない!」
クレアは着地し、おでこの汗を拭った。
シグレットはホッと胸を撫でおろす。
(クレアは騎士の適正も持つ錬金術師。こういう陣形が乱れた時には頼りになる……ますます惚れ直しちゃうな~っ!)
いけないいけないと、シグレットは自らの頬を叩き、呆けた心を引き締め直す。
シグレットはバッグから黄色の液体の入った瓶を出し、
「アシッド・リキッド。岩人形の表面を柔らかくする毒だ」
クレアがシグレットから毒を受け取る。
「狙うのは胸の中心、岩人形は人間と同じ場所に心臓を持つ。毒で表面を軟化させてロアン君の剣で貫いてもらおう」
「私の責任重大ね」
クレアは毒にナイフを浸し、岩人形に接近する。
「……うえぇ!? 無理しちゃダメだ! クレア!」
「確実に当てるにはもっと近づかないと!」
「やれやれ……我がパートナーながら世話の焼ける」
クレアに意識を向ける岩人形、しかしロアンが岩人形の足を弾き、意識を自身に集中させる。
「お前の相手は俺だ、でくの坊」
ロアンが引き付けている間に、クレアは必中距離に踏み込んだ。
クレアは毒付きナイフを投げる。
「いっけぇ!」
クレアのナイフが、岩人形の胸に突き刺さった。
「がああああああああああああっっ!!?」
岩人形の胸が酸化し、溶けていく。
「よし、成功――」
「ガアアアアアッ!!!」
様子がおかしい。
岩人形が暴れ出した。興奮しているようだ。
(岩人形は岩の表面を剥がした先に神経を張り巡らしている……毒が強すぎて、内部の神経まで侵してしまったのか!?)
神経が毒に反応し、激痛から悶えている。
岩人形は暴走し、クレアに向かって走り出した。
「え……ちょっと待って!!」
騎士の適正を持つとはいえ、さすがのクレアも岩人形に真っ向から立ち向かうのは無理だ。
(しまった……! 僕のミスだ!!)
シグレットはクレアに手を伸ばすが、クレアとシグレットの距離は10メートル近くある。
助けに行くには離れすぎているし、例え間に合ってもシグレットでは岩人形の暴走は止められない。
「クレアァ!!!」
岩人形が拳をあげ、クレアに向かって振り下ろす――
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