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第14話 取るに足らない一幕
しおりを挟むガキィン!!!
これまで一番巨大な衝突音が鳴り響く。
クレアと岩人形が接触する直前で、影が1つ間に割り込んだ。
割り込んだ騎士は不完全な態勢だろうと構わず剣を振り上げ、岩の拳を受け止めた。
「ぐうぅ!!?」
「……ろ、ロアン……」
騎士――ロアンの右肩がミシミシと悲鳴を上げる。
「いい加減に――」
クレアの背後から、大盾を持ってビビアンが飛び出す。
「しやがってんだああああああああああああああっっっ!!!」
ビビアンは大盾を前にして思い切り岩人形の胴体に突っ込み、岩人形を仰向けに倒した。
「とどめっ! ロアン!」
ビビアンが叫び、
ロアンは飛び上がり、両手で剣を握った。
「はあああっ!!」
ロアンが岩人形の軟化した胸に剣を突き刺す。
岩人形は「がああああっっっ!!!」という断末魔を上げ、その命の灯を消した。
「ロアン! 大丈夫!?」
右肩を押さえるロアンにクレアが近づく。
「心配はいらん。肩が軽く外れただけだ」
ロアンは自分の右肩を左手で掴み、ごきゅ! と肩を入れた。
「ぎゃああっ! 無茶すんなバカ! エマ! 薬ある!?」
「はいよ」
エマは軟膏の入った壺をクレアに投げる。
クレアはエマから軟膏を受け取り、ロアンの服を脱がしにかかる。
「だ、大丈夫だと言っているだろう!」
「いいからちゃんと治せってば!」
クロボシがロアンの背後に回り、ロアンの体を掴み止めた。
「ちゃんと、治せ」
クロボシにもなだめられ、ロアンは観念する。
「……やるじゃないか」
シグレットはクレアとロアンの2人を視界に収め、寂しそうな笑顔を見せる。
「それで、判定はどうなの?」
シグレットの隣に立ち、エマが問う。
「彼になら、クレアのこと任せられる?」
エマの問いに対し、シグレットは唇を尖らせ、
「ひとまずは……保留にしておくよ」
---
狩りから一週間後。
「できたーっ!」
クレアは自身のアトリエで、ある物の製造を終えていた。
それは剣だ。ズッシリと重量感のある騎士剣。
刀身の色は炭のような黒色、岩人形の色だ。
「もう完成したのか」
アトリエに1人の来客、ロアンだ。
「うん! 自信作よ!」
クレアは青色の鞘に剣を入れ、ロアンに手渡す。
ロアンは剣を受け取り鞘から剣を抜いて、刀身を見る。
「……美しい」
剣に向けられたその言葉を、クレアはまるで自分に言われたように錯覚し、顔を赤めてしまう。
「武器の錬成に関しては文句のつけようがないな。この剣ならば、あらゆる攻撃を弾き飛ばせる気がする」
「大事に使ってよ。岩人形を加工するのめちゃくちゃ大変だったんだから!」
「ああ、わかっている」
ロアンは扉の所まで歩いて、
「早く支度をしろ。城下町に行くぞ」
「城下町? どうして?」
「つい最近、新しくクレープ屋ができたらしい。剣の礼だ、奢ってやる」
「本当!? 行く行く行きま~す!」
「その前に頭に乗った埃や顔についた油汚れを落とせ。今のお前と歩くのはご免だ」
「はーいっ!」
太陽が強く輝く午前11時。
取るに足らない休日の一幕、されど思い出には残り続けるであろう幸福の一幕だ。
―――――――
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