悪役令嬢に転生した“元”狂人は普通に暮らしたい

幸見大福

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幼少期編

いいから話せゴラァ

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そうして待とうと椅子に腰かけた時、男二人が目を覚ました。回復はしてある。



まず最初に呻き声を上げ、ぼんやり目を開けたと思ったら飛び上がる。そしてふらつき初期位置に戻るという面白い行動をしてくれた。



…こいつなんかの芸でも見せてくれてるのかな



「…なんだその面白いものを見る目は」

「実際可笑しかったけどね。さて、目を覚ましたことだし何で私を知ってたのか。どこに所属する人か。何か目的でもあったのか、話してね」

「答えるわけがーー」



なんか戯言をほざいたので、無言で首を締めあげた。

徐々に強くなってくる圧迫感に流石に不味いと悟ったのか、焦った感じを出す男。



いや、私は本気で殺そうと思ってないんだけどこれくらいしないと話さなそうだし。

拷問は嫌いなので、なるべく楽にしたいのだが…どうやらこの人は口が堅いらしい。

手を離すと、むせながらも睨んでくる。



「…誰が、言うもんか。言ったら殺す癖に…」

「え、殺さないよ?」



こわ!この人なんて物騒な事言ってるの?…ブーメランとか気にしない。



驚いて目を見開くと、きょとんとしたようになる男。



「いや、だって…ミライ様から、マリーと名乗る少女が紫音の主人だって聞いたから…残酷な人なんだろうって…」



うわあこの人話術絶対苦手だー。もう既にかなり答えてるー。

遠い目になってその“ミライ”さんを想像して合掌していると、リアナの声が聞こえてきた。



「いいからさっさと吐けゴラァ」



続いて響く叫び声。まるでムンクの叫びがそのまま再現されたよう。





どうやらリアナの方も今情報を聞いているらしい。

その声が気になり目を向けるが…いや、私は何も見てない。爪を剥いでるところなんて見てない。そんな拷問はみてない。



見てないったら見てない。



………なんか身体が冷たくなったなー。何でだろうなー。



「…どうする?」

「話す」



この男も何気に忠誠心が薄かった。さっきまでの頑固さはどこに行ったんだろう。



「…もしも話しても殺されないよな?」

「だからそうだって言ってるじゃん」



私はね。貴方の団の方は知りません。

すう…と息を吸うと、男はゆっくり話し始めた。



「…俺らは、紫音を落とすためにマリーを暗殺しに来た」



いきなり確信ね。

それで紫音は…まあ予想通り。というかそれ以外の筋だったら怖いんだけど。私との戦闘との途中で噂通りって言っていたし、まあそしたら馬鹿でもなんとなく予想がつく。



だけどなんで殺しに来たのか理由はわからない。



「…貴方はどこの誰?」

「…聞いて驚くなよ?」

「はよ言え」



催促すると、若干ショックを受けたようにうなだれた。

そしてぶすっとした表情で言う。









「…赤竜の集い。俺はエリュースをしている『グリム』だ」







……ええと、どこだそこ。滅茶苦茶もったいぶってたけど、有名なのか?なんかすごそうな名前だし。

だが分からなかったのは私だけらしい。リアナの悲鳴のような声が聞こえた。



「え!?この人も赤竜何ですか!?初めて生で見ました!」



知ってるの!?

振り向くと、どこから出したのか紙とペンを差し出しているリアナ、そして、そのすぐそばで息絶えたように床にうつぶせになっている、赤装束の男。あの赤は床を見るに絶対に血だな。



「サインください!」



いや無理だと思うよ。その人ボロボロだから。すでに気絶しているよね?



「…ちょっと待ってて」

「?おう」



椅子から立ち上がり、もう一人の側による。

近くに来るとまた一つ分かった。…いやあああ!顔色が土気色よおお!!!



「マリー様?」

「リアナ、これからはやりすぎに気を付けてね【ハイヒール】」



回復をかけると、血の気の引いていた顔が少し良くなった気がする。…でも青。真っ青。

これどう考えてもダメなやつ。



「…血は、肉魚豆。肉…買ってくる?」



この独り言に反応したのはリアナだ。



「私が買ってきます!」

「え、ちょま」

「安心してください!私の私財から出しますので!ではよろしくお願いしますね!」



リアナはそうまくしたてると、風の如く行ってしまった。

…もう!



「なんで話聞かない人がこんなに多いのおおお!?」



私の魂の叫びに、男がびくっとした。



「お、おおい、どうしたんだ。というかお前、赤竜って聞いて驚かないのかよ」

「驚くも何も知らんわ、その組織!」

「はあああ!?」



逆にグリムがのけぞった。

と思ったら距離を詰めて、つば飛びそうな勢いで話し出した。



「あの赤竜だぞ!?で、ん、せ、つ、の!赤竜だぞ!?」

「知るか、ンなもん!まだ生きて六年なんだぞ!」

「随分とませた子供だなあ!本当はドワーフとかなんじゃねーか!?」

「なわけあるかあ!」



そこでぜえぜえと息を吐き、もう一回主張を並べる。



「いい?私は普通の人間でまだ六歳。あと幼女って呼ばないで。今後もう一回そうやって呼んだらロリコンって言ってやるから」

「…分かった。だけど絶対にお前六歳じゃないよな」

「(表面上は)六歳だよ」



私たちの応答がうるさかったのか、再び生死を彷徨うこととなったもう一人の男のうめき声が聞こえた。



「…う、なんだまぶしい…」

「あ、今度こそ目が覚めた?」

「うわああ!?」



声をかけると慌てて腰を引く男に、少しだけカチンとくる。

いくらなんでもその反応はないだろう。



…でも、リアナにされたことを考えると仕方のないことか。



鳥肌の立った腕をさすりながら、ゆっくり近づく。

一歩踏み出す。男は無意識なのか知らないが、私に合わせて一歩下がった。少し間をあけて、また距離を詰める。そして戻る。



「……」



…なんか面白い。鬼ごっこのようだ。

いややらないけどね?余計に怖がらせるだけだから。



「…まずは…話を聞いてね?」



とりあえずは五メートルほど離れた状態で話すことにした。



***



聞き終わった後はひどいものだった。

まず、男はグリムにとびかかり、「お前裏切ったな!」とか「本国に殺されるぞ!」など叫んだ。さらにグリムが感化されたように反論するものなのでうるさいのなんの。耳をふさいでうるさいと言いたかった。



まあ強制的に止まったんですけどね。魔法で二人にかすめるように撃ったら、まさかの直撃。アハハ、胃に大きな穴ができて驚いた。



それでおとなしくなった二人に、私は根掘り葉掘り聞いたのだが…すべてを聞き終わったとき、今度は私が頭を抱える番だった。



「うえええ…ちょっかいを出したのってあんたらかよお」



そう、みなさんは覚えているだろうか?あの紫音の女暗殺者が来た時の会話を。



『ちょっかいを出してきた組織があったので排除してきてもいいでしょうか?』



的な内容。細かいところまでは覚えてないよ。

とまあ私はすっかり頭から抜け落ちていて。



…え?こんなの覚えてろって?主人失格だって?

うるさいな。記憶力はそこまで高くないんじゃい!私に期待するな!



…うん、だけど通りでいないわけだよ。みんな今全力で戦っているもんね。そりゃあ誰も残さないでいるよ。

だけど日程とかは伝えてほしかったかな。私、あの時寝ぼけてたから好きなようにしてって言った気がする。自業自得かな。いやな言葉だ。



「てことは貴方たちは頭を潰しに私を狙いに来た、と」

「そうだ。まあ今は完ぺきに木乃伊取りが木乃伊になる状態なんだが…」

「ま、たまたまリアナがいたからよかったね。さすがに一人だと無理」



一人だけでも大変だったのに、二人相手とか間違いなく殺しちゃうよ。



付け足すように言うと、グリムががっくりと肩を落とした。



「…勝つのは決定なのかよ」

「そりゃあ魔法の差があるから。この差は大きいよ」

「そういえば魔法を使ってたってことは…まさか!ようj--マリーは貴族!?」



あまりの大声に、うるさくて顔をしかめてしまう。

こいつはさっきから騒がしい。いっそその口を封じてしまおうかと何回思ったか。



「…それはどうでもいいでしょ。んで、どうする?さっきは言わなかったけど、暗殺対象ターゲットに計画を言ったってことがばれたらあなたたちが今度は殺される番だよ」



私の言葉に青ざめる二人。しかし、私は飴と鞭を使い分けることができる。

にやりとしそうになる口角をなんとか微笑みまでに押し殺す。



「だけど、もしも貴方たちが紫音に入るんだったら、絶対に守ると約束するよ」



だからもっと情報を言ってね。



貴方たちのところの団をつぶすために。
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