悪役令嬢に転生した“元”狂人は普通に暮らしたい

幸見大福

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幼少期編

戦いは終盤へ

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うわあ…実際にあんな痛々しい人がいるんだあ…

ていうかなんでそんな台詞セリフが出てくるのかな。ある意味尊敬するよ。



引き気味でミライであろう人を見ていると、突然ぐるりと顔が回った。



180度に。



「……!」



そのあまりの気味の悪さに硬直していると、見えない顔が見えた気がした。

口角が上がり、ギラギラ輝いた眼が。



ゾクッと背筋を嫌なものが這う。



人間じゃない。直感的にそう感じていると、気が付けば私たちの数メートル手前までやってきていた。



「っ!?」



慌てて空中へ身を投じるが、あとに残ったギィたちを瞬時に思い出す。



私の影で見えて回避が遅れてるんじゃ…



そんな嫌な予感がし、視線をすぐに元居た場所に移すと、そこに二人の姿はすでになかった。

上手く反応したのだろうか。いや、そんなことが可能…?あの二人ならあり得そうだし…。兎に角は大丈夫ということで大丈夫だろう。



そうして安心したのも束の間だった。



「…どうやら本当に相手のかしらは子供だったらしい」



誰!?



隣からの見知らぬ声に振り向くと、またまた個性の強そうな人がいた。

服装は黒で統一された執事風の服。コスプレかと一瞬目を疑ってしまったのは仕方ない。更に腰には懐中時計がぶら下がっており、気品溢れる立ち姿と相まって貴族といわれても信じそうだ。



だけど女性。



滅茶苦茶美人。切れ長な目は鋭く、クールそう。それが美貌と相まって人を寄せ付けない雰囲気がある。だけど執事服着てる。



…どういうことだ。



少し混乱するが、その頭を見て更に混乱することになった。

なぜならその頭には…





ふっさふっさと動く黒いうさ耳があった。





「!?」



今度は別の意味でショックを受けていると、その黒うさ執事が口に手を当ててピコピコと耳を動かして聞き捨てならないことをつぶやいた。



「…そろそろ始末の時間ですかね」



誰の始末かなんて、聞くまでもない。

引き攣った口角は私の心境をよく表してくれる。



この人は敵だ。

ならその刃が向くのは、黒うさ執事の敵である、私。



脳がその事実にたどり着くと同時に、視界に光るものがちらりと映った。



「【光の障壁バリア】!」



がむしゃらにヒロインの魔法の一つを叫ぶ。そして本当に展開されるかもわからないので、念のために後ろに飛んでおく。

その判断は、予想と違えど結果的には正しかった。



「…ふっ」

「え?」



魔法が斬られた。

比喩じゃなくて、本当に剣でばっさりと。



…魔法って斬れるものだっけ?



呆気にとられつつも、地面に着地する。そして、でこぼこな地に少しよろめくのだった。



「…なんでやねん」



思わず関西弁が口から洩れるが、仕方のないことだと思う。

この一瞬のうちに何があったのかわからないが、土は盛り上がり、クレーターが出来上がっているという酷い有様だ。



何があったらそうなる。



そうツッコみたいが、なんとなく予想がついてしまうのは私もこの世界に慣れてきたからだろう。



「…さて、誰の仕業かなんて考えるまでもないかな」



十中八九、あの時のミライの攻撃の所為だろう。先程見た時と違うのが気になるが、そんなことを考えている場合ではない。



「マリー、大丈夫か!」

「怪我は!?」



考えていると、ギィとギーアが駆け寄ってくた。その横には険しい顔をしながら周りを見るグリム。全員無事だったようだ。



「私は大丈夫!ギィたちも怪我はない?」

「これぐらい余裕。気配も殺意も隠す気のない攻撃ぐらい見えているも同然」



毒を言えるぐらいの余裕尊敬します。



だけど、今の状況では頼もしい。これならいけるかもしれない。



「ならミライとも戦えるなら?」



そう言っても、二人は余裕を失わなかった。むしろ馬鹿にしているまでもある。



「行けるんじゃない?」

「あんな攻撃程度なら本気を出すまでもないな」

「……」



グリムは黙って何も言わなかった。だけど沈黙は肯定という自分の理念に従い、同意とみなして敵をにらみつけた。



宣戦布告をしようとすると、グリムが先に口を開いた。



「…ミライ様。今まで仕方なく従っていたが、転機が訪れた。俺は幼女の門に下る」



これにミライと黒うさ執事が反応する。

お互い顔を向き合うと、少し間を開けて溜息した。



「…ほう。冥界の領域に魂を在し在っていたとしてまさかとは思っていたが…誠に天に敵対し者だとはな…」

「前から馬鹿だとは思っていましたが、本当に馬鹿でしたか」



呆れたように、いや実際に呆れているのだろう。そんな風に言う二人に、グリムは鼻で笑う。



「ハッ。散々こき使っておいて何を言う。今までの恨み、晴らさせてもらうぞ…」

「真なる愚者。お前は高く買っていたというのに…」



そこでいったん区切ると、ミライは私の方を向いた。



「貴殿が誑かしたのか。いよいよをもって許しがたい」



よし、やっと私に注意が向いた。



「…ではそろそろお願いできますか?こちらも急いでいるので」



改めて尋ねると、何がおかしいのかくつくつといった笑い声が聞こえた。



「ククッ。自ら墓を作りに来るとは。良かろう最上級の墓所を用意してやろうじゃないか!」



誰も墓なんていらんわ!

しかしそんな挑発に易々と乗る奴なんて、私たちの中には――



「その余裕、今すぐ剥いでやる…!」



いたわ。



「あ、ちょ待てって!」



飛び出していったギィを、驚きの瞬発力で追いかけるギーア。直後、二人の気配は消え去った。

目の前で初めて見せられた、綺麗ともいえる技術に思わず感嘆の声が出そうになったが、慌てて後を追い始める。しかし、私は正面からだ。



丸腰で作戦も立てずに突っ込むなど、いくら何でも考えがなさすぎる。いや、実力で負けるはずがないという自信からこその行動かもしれないが、それでも浅はかにもほどがあって。



要は罠とか警戒しろよ、馬鹿者!



「っらぁ!【聖剣ホーリーソード】!」



掛け声とともに魔法を放ち、即座に手に光るつるぎを握る。

姿を隠さずにやってきた私に驚いたのか、張り巡らされていた警戒の網が一瞬崩れる。その隙を見逃すなんてことはしない。



「ふっ」



軽く息を吐き、腕を振る。成功の証とばかりに過剰なほど伝わってくる生々しい音と匂いに、顔を顰める。



「ミライ様!」



すぐ横で、うさ耳執事の悲鳴が聞こえた。怒りに目を吊り上げたうさ耳執事が私をロックオンするが、もう遅い。

二つの影が走ったと思ったら噴き出す血しぶきが、一色だった地面を濃く彩る。鮮やかなまでに赤いものを生み出したのはもちろんギィとギーア。



「…まさか正面から行くなんて。これじゃあ暗殺者もクソもないなぁ」

「いいでしょ。それに、なんで何か話し合う前に突っ込んだの。危険、バカ、阿呆」

「今はそれどころじゃないから。兄さんと姫さん、そういうのは後にして」



まさかの戦犯に止められた。

いや、それより…



「何その姫さんって呼び方」



さっきまで違ったよね?



「令嬢だから」

「飛躍しすぎだって」



元に戻してと訴えるが、他にも理由があるなど聞き入れて貰えなかった。



「それに姫さん将来皇太子妃になるらしいし」

「ならないから」



あとどこで知ったんだと思ったが、ギィの後ろで口を押えてプルプルしてるあいつが原因だな。私が公爵令嬢だって知ったのもギーアだし。

…後で私について調べるのやめるようお願いしよう。えぇお願いしましょう。



「…ところでいつまで続けるつもりなんだ?」



グリムのぼやきに逸れかけていた意識が復帰する。

そうだ。それどこではない。ギーアについては後でじっくり考えるとしよう。



「よし、それじゃあ分担。正直私とあのうさ耳執事では相性が悪い。剣を使ってることから騎士に近いと思うし、なによりどういう原理か魔法が斬られた。だから私はミライの相手をするつもり」

「大丈夫なのか?」



即座に疑問が投げかけられるが、自信満々で頷く。



「あのうさ耳さんには破られたけど、魔法のアドバンテージは大きい。守りながら、自分の死角を潰すようにして魔法を撃てば傷さえ受けないと思う。それに、頭の逝ってるグリムもいるし」

「おい、誰が頭逝ってるだt」

「え、この胡散臭い男と共闘するの?」

「こいつら全っ然年上を敬う気持ちないな」



最近の若者は嫌だ…と呟くグリムを睨む。

こういう比べてくる大人は本当にイラつくんですよね。分かる方は沢山いるはずだ。



溜息を我慢して、説得する。



「こんなんだけど、かなり強いから。こんなんだけど」

「なんで二回言ったんだ?ああ?」

「ふーん…まぁその言い方なら一度戦ったことあるんだろ。ならマリーを信じて任せる」

「ありがとう」

「こいつらスルースキル高すぎだろ!」



グリムを無視して進められていく作戦にご本人は悲鳴を上げているが、自業自得だ。…多分。

更に流れを話そうとしたが、敵はこれ以上の時間を許さなかった。否。あっちの準備が終わったからだ。もう時間はない。



「取りあえず、今言った通りに動くよ!」

「OK」

「了解」

「しゃーない」



全員が覚悟したのを確認し、天を仰ぐ。なんで乙女ゲームに転生したのにこんな目にあっているんだと思うが、ほぼ私の責任だし。自分から突っ込んだもんだし。未来のためだし。



脳内で様々な理由を並べて闘争心を奮い立たせて顔の角度を戻す。

そして、魔法を行使しようとして、標的がいなくなっていることに気付いた。



…どこ行った?



先ほどまで確かに前にいたのに、いつの間にか消えている。

走りかけていた足を止めて、全神経を耳に集中させる。



「……」



…やばい。まったく分からない。各地で戦闘しているため雑音が多いのもあるが、ミライの技術の高さがそのまま反映している。

もしかしたら、さっきの攻撃は小手調べだったんじゃないかと最も想像のしたくない考えが浮かんでくる。



音がない。どこ?どこからやってく――



「幼女!上だ!」

「破ッ!!」



!?



「っ!」



振り下ろされた踵を強化した腕で受け止める。風圧が私たちを中心に広がり、あたりを吹き飛ばしていく。



「…っ!」



なんで、最大まで【身体強化】してるのにこんなに痛いの!

腕に伝わる激痛に、堪え切れず顔を顰める。



「くぅ…」

「やはり所詮は子供。この程度で音を上げるなんて、なんとも嘆かわしい。我在りし存ず世界に愚者は在るのか…」



悲しいと言うように空いていた手で顔を覆うミライ。私には言ってることを理解出来なかったが、馬鹿にしてることは分かった。



…オーケー。とりあえず一発ぐらいは殴らないと気が済まない。いや、最初からそのつもりだったんだけど、更に怒りゲージ的なのが上がった気がする。



「…今言ったこと、あとで後悔しな!」



怒りを力に変えて。痛みを意識の外野に置き。

無理やり腕を蹴り上げる。相手もまさか更に抵抗すると思っていなかったのか、動揺した様子が伝わってきた。



そして、払われた自身の腕を見て、笑い声をあげた。



「くくっ。そうか、そうか…余の一撃を受け止め振りほどくか。なら、少しだけ本気を見してやろう」



そう言って、ミライの更にスピードが上がる。超どうでもいいけど一人称不安定ですね。



阿呆な感想が頭をよぎるが、一瞬で消し去るぐらいに意識が敵に集中する。



視覚?そんなものは既に当てにしていない。こんな化け物を相手に凡人が普通にやって勝てるわけがないのだから。



ミライがまだ力を隠していたことに驚きはない。あれだけ盛大にフラグが立っていたのだから、強くない方が驚く。



飛んでくる拳を避けながら、場合によっては受け止めながら先ほどの攻撃によって足止めを食らったグリムを待つ。

でも少し遅いなと、視線を向けると何か考え込んでいた。



その姿にイラっときて、つい怒声を飛ばす。



「ちょ!なんで助けにこないの。このままだと本当に死ぬんだけど!」

「…あぁ悪い。今参戦する」



そう言うと、グリムは一つの剣を取り出した。何もない空間から。



「…は?」



…待て待て、なんでいきなり剣出てきたの。

私の素っ頓狂な声に、グリムは馬鹿にしたような笑いをする。



「見てわからないか?俺の固有魔法だ」

「なんであんたが魔法を使えるの!?」



魔眼持ちでもないのに、何で…?

そう尋ねるが…いや、ほぼツッコミに変わらないけど。これにグリムはどや顔をした。



「【アイテム収納】の魔法が埋め込まれた魔石を持ってるから」



…なんじゃそれ。

聞いたこともないものだったが、更に聞く暇もないので深くは突っ込まない。それに、魔法が使える理由は魔石というのは分かったからいい。なんとなく『埋め込まれた』というのからどういうものか予想がついたし。



だけど、だけどさぁ…



「それにしてはずるくない!?」

「幼女の魔法が一番ずるいけどな!」



叫ぶとすかさずツッコミが飛んできた。

私の魔法のどこがずるいのだ。確かに光る壁で守れたり、光速の攻撃を放てたりするけど。そこまでずるくは…



「…ずるいな」

「おーい、そっちに行ったぞー」



はっ!



「【光の障壁バリア】…くだらないこと話すのはやめてバトルに集中するよ!」

「幼女が戦犯だとは思うが、同意だ」



そして、無言の戦闘が続いた。

私たちは言葉など要らずとも、自分たちの判断で動き、時には目線だけで合図を出し合っている。

しかし、それでもミライは強い。

私が必死に一撃一撃を回避するのに対し、私たちの攻撃はカウンターのように反撃を受けてしまう。



一向に進まない戦況に歯噛みしていると、グリムの呟きが聞こえた。



「…仕方ない。捨て身で行くか」

「は?」



言っている意味が分からず聞き返すが、求めている答えは帰ってこず。そのままグリムは飛び出したしまった。たった一つの言葉を残して。



「幼女は動くなよ!」

「なんで!?あんた一人だと負け――」



…目の前で起こったことは信じられなかった。



グリムが予備動作をつけて殴りかかったと思ったら、これにミライが一瞬ではあるが、確実に怯んだのだ。



なんでグリムが出来た?先ほどまで二人がかりでも無理だったことを何故グリムがすることができた?



…いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。これは絶好のチャンスだ。逃すわけにはいかない。

跳躍で踏み込み、ミライの目の前に踏み込む。

相手を睨みつけると、息を呑む音がした。…もう遅い。



「…私たちの、勝ち――」



必殺の意思を込めて魔法の剣で斬りつけるつもりで、思いっきり振り上げる。

…しかし、どこまでも現実は私に冷たいようだ。

あと数ミリで首に当たる直前、刃がぴたりと止められたのだ。



「っ!?」



信じられないと、今度こそ本気で思う。

ありえない。ありえない。



「ありえない――」

「我が漆黒の腕を受けるがいい!」



私の声にかぶさるようにして聞こえた変な声がやけに響いた刹那、世界が反転した。

比喩ではなく、本当に視界の上下が逆になって――





地面に平行になるように飛んでいるんだと気が付いたとき、私は吹き飛んだ。



***



「ゴホッゴホッ…」



身体中に伝わる衝撃に咳き込む。口から溢れる血を見るに、あばら骨は何本か折れているだろう。

【ヒール】で癒しながら、よろよろと立ち上がる。



何が起こったのか理解できなかったが、動くのをやめた瞬間に死ぬというのは分かっている。

だから止まるわけにはいかない。いかないんだ――



「……」



喉元に突き付けられた刃に、全身の筋肉が強張るのが分かった。

恐る恐る視線を上げ、私に殺意を向けてくる相手に息を呑んだ。



「…グリム、なんかの冗談…?」



微妙に引き攣った声でグリムに問いかけるが、先ほどミライに向けた笑いを…嘲笑を向けてきた。



「ハッ、本当に寝返ったとでも思ったのか?とんでもないくらいめでたい頭だな」



幼女だからめでたいのが当たり前だと思うんだけど。



そういいたいけどショックで口が動かない。軽口が脳内に出てきたのは一種の現実逃避かもしれない。

考えてみればそうだ。そうやすやすと主を裏切ることなんてない。まして相手はプロ。タイマンの戦闘の時に私に負けたのは不自然だ。



「…どこからが演技だったの?」

「最初からだ」



最初から…つまり…



「あの戦闘も…?」

「半分正解で半分不正解。俺が取り入ったふりをしたのはプランBだ。あんなに強いとは思っていなかったから予想外だったがな」



私は信じたい事実だけを信じてしまっていた。

一つの考えに縛られていた。



だけど、こいつは一つの案を作っていた。

私は生まれ変わっても変わらなかった。



自分が見ている表面の事しか見ようともせず、こうしてまんまと騙されている。



…なんて馬鹿なんだろう。

自分でも笑ってしまうぐらいに甘ったれた考えだ。



「さぁ、そろそろ決着の時間だ」



グリムが一歩踏み出すと、ミライが制した。



「ここは余に引導を引き渡せてもらおう」

「…分かりました」



何を思ったのか、ミライは自分自身で手を下そうとしたようだ。

ずかずかと私の前に立ち、拳を握る。



「ではあの世で余たちを見物してるがよい」



そういうと、ミライは何かを纏った。

赤いようなオーラに、脳が一気に加速する。



…やばい



「真・僧――」



避けないと――



「砲龍拳!!」



死ぬ。



目の間に迫る拳は、まるでスローモーションのよう。

避けれない。体が動かない。自分の身体が自分じゃない。



「…ぁ」



僅か数週間の転生してからの日々が走馬灯となって駆け巡る。



憎い兄貴が転生していたこと。でも語られた物語を知ってなんと接したらいいのか容赦が半端になってしまったこと。二度目の人生でもシルフに会えて嬉しかったこと。何故か暗殺者と深くかかわったこと。ギィとギーアと過ごすのは疲れるけれどとても楽しかった。



…あぁルイもいた。物理的に光ってたり、恐ろしいほどの美貌で気絶したり。

マリーベルが唯一傷つけなかった人でもあるんだ。



これだけ思い出しても私がやったことに後悔はない。そう思ってしまうのは、前世と比べとても充実していたからか。今回の出来事は私の自惚れが原因。ならばその責任を負うのは必然なのかもしれない。



それでも自分の身が吹き飛ぶのが怖い。見たくないし、認めたくない。

迫りくる現実から、そして自分自身の矛盾した考えからも目を背けるようにして瞼を閉じ、ただ最後を訪れるのをじっと待つ。それしか今の私にできることはない。



しかしその衝撃は私に降りかかることは無かった。

風圧を感じて更にぎゅっと目を閉じると、私にぶつかる前に違う音となった。

ガコンッと鋼のようなぶつかる音が響く。続いて息を呑む音。

数秒経っても何も起こらず、あたりも静まり返っている。

この理解の出来ない状況に、恐る恐る目を開けると同時、よく知っている声、姿を見、愕然とした。



「…さぁ。私の未来の妻に触れようとしたのはどいつだ」



怒りの炎をゆらめかせたルイが、剣を片手に立っていた。
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