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PAST TIME CAPSULE
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「私達、相対性理論研究員は、このカプセル『PAST TIME CAPSULE』を、光より速い速度で運搬する技術を開発しました。そして、そのことにより、このカプセルを過去に届けることが可能になったのです」
全世界が見守る中。菅川は新技術『PAST TIME CAPSULE』の発表を行った。
聴衆達がざわつく中、菅川は余裕の笑みさえ浮かべながら爽やかに続ける。
「このカプセルに過去の誰かへの贈り物を入れてこちらのリモコンで操作すると……その贈り物は調節しただけの時間をさかのぼって、その場所に届けられるのです。こちらはまだ実験段階なのですが、きっと皆様に『夢』と『希望』を運ぶことができる。私どもは、そう、信じています」
以前のビクビクと挙動不振な彼が嘘のように、堂々と発表する。まぁ、もっとも、発表でははっきりと自分の言いたいことを伝えられるよう私がスパルタ特訓をした成果なんだけど。
でも、それでも一番前の席で聴いていた私は鼻の奥がツーンと痛くなって涙が込み上げてくるほどに感動した。
こいつは、ついに実現してくれた。あの日、私が書いた夢……欲しくて欲しくてたまらなかったものを、ついに開発してくれたのだ。
感涙を必死に堪える私と目が合った彼は柔らかく微笑み……再度、口を開いた。
あれ? 私が特訓をしたのは、さっきのフレーズまで。それ以上のことは練習していない。ここからは、もしかして……こいつのサプライズ?
不思議そうな目を向ける私に微笑みながら、菅川は口を動かした。
「私がこのカプセルの開発に着手し始めたきっかけは、小学校の時の卒業文集です。私の初恋の相手は文集に『タイムマシンが欲しい』と書いていた。だから、私はがむしゃらになってこの研究に取り組んだのです。今の技術ではカプセルに入るサイズのものを過去に届けることに留まっていますが、これから先、タイムマシンを生み出すに至る研究なのです。私の夢は、初恋の女性……今、私の彼女として隣にいる女性と一緒にタイムトラベルをすることです」
その場は一気に聴衆達の歓声と笑い声に包まれた。
私の顔は一気に火照る。きっと今、鏡を見ると、真っ赤に熟れたトマトと対面することになるだろう。
彼はそんな私を見てにっこりと笑った。
「そして……。この技術で世界中の皆様の過去と未来を繋ぐことができる。私どもは皆様に、夢と希望に満ち溢れた未来を、必ずお届けいたします」
聴衆達の大きな拍手とともに、技術発表は大成功のうちに幕を閉じた。
技術発表後。
「もう~、菅川。何、あれ? サプライズのつもり? 私、メッチャ恥ずかしかったんだからね」
「ご、ご、ごめん……」
顔を火照らせて頬を膨らます私に、発表の時とは別人のようにおどおどした彼はどもりながら俯いた。
こいつ、本当にあの発表者と同一人物? でも……私はこいつのこんなギャップも痺れるほどに大好きなのだ。
だから私は、クスっと笑って目を細めた。
「でも、ありがとう。すっごく嬉しかった。それに……」
私は柔らかく目を細めた。
「とっても素敵な発表だったよ。みんなの夢が広がる……」
夜景の素敵なレストランでのディナー。背広姿のこいつとドレスを着た私は、傍目に見ても良いムードになった。
勿論、こいつにはこんな店は選べないんだけど。私がセッティングしたのだ。
「い、いや、澤村さんのおかげだよ」
相変わらず謙遜する彼が可笑しくて、クスっと笑った。
「そこは、自分の力だって認めなよ。ま、そんな所が菅原らしくて好きなんだけどね。それと……」
照れて頭を掻く彼氏を見て、私はにっこりと微笑んだ。
「ねぇ、そろそろ、澤村さんでなく、棗って呼んでよ。私もあんたのこと、利樹って呼ぶからさ」
すると、利樹は緊張した面持ちで向き直り、力んで言葉を発した。
「う、う、うん。ナチュメ……」
「プッ……」
私は思わず吹き出す。
「何、それ。私の名前すらマトモに呼べないわけ?」
私の名前を呼ぶだけなのに、緊張しすぎて噛んだ彼がまた可笑しくなって、大笑いした。こいつと付き合っていると、常に笑いが絶えない。
すると、彼は何やらモゾモゾとしだして、ガラス製の一つのケースを取り出した。
「何?」
「な、なつめ……今日、誕生日だよね」
「わぁ、プレゼント、くれるの? 今日二度目のサプライズ、嬉しい!」
はしゃぐ私に利樹はまた照れて、幸せそうに頭を掻いた。
そのケースを開けた私は、目を丸くした。
そこに入っていたのは、澄んだ海のように青く光り輝くサファイアのネックレス……そう。間違いない。
二十一歳の誕生日にあのカプセルに入って私に送られてきたネックレスだったのだ。
その瞬間、私は……全てを理解した。
そうなんだ。このネックレスの贈り主は……そうだったんだ。
私は利樹に、悪戯な笑顔を向けた。
「ねぇ。利樹が開発した『PAST TIME CAPSULE』。製品化されたら……一番に私に使わせてくれない?」
「えっ?」
「それでさ、このネックレスを入れて私の二十一歳の誕生日に届けるの。だって、このネックレスがあったから……今の私とあなたがあるんだから」
私は知っている。このネックレスは、海の底に沈んでしまう運命だ。
でも、このネックレスは私の元からなくなるとしても……あの時、このネックレスが届いたからこそ、今の私がある。そして、その『今の私』はこの上なく幸せなのだ。
「それで! 来年の誕生日にはちょうだいね。サファイアの婚約指輪!」
狐につままれる利樹に、私は飛び切りの笑顔でそう言った。
*
「こ、このカプセルに入れて……このリモコンで操作すると、過去の今の場所に届けることができるんだ」
私は、丁度三年前にこのカプセルが現れた場所……そう。私の部屋のドアの前に、ネックレスを入れた『PAST TIME CAPSULE』をセッティングした。利樹はもそもそとリモコンをいじっている。
「ねぇ、まだ?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
配送時期の調節に時間がかかりすぎる彼にイラついて尋ねると、彼はさらにしどろもどろになった。
「もう……」
私は腰に手を当てて溜息をついた。
そして、じっと『PAST TIME CAPSULE』を見つめた。
丁度三年前……このカプセルがここに現れるまでは、将来、私の隣に利樹がいることになるなんて考えもしなかった。
きっと、上流企業で働いているイケメンの輝と結婚して、幸せに暮らしている……そう、信じていた。でも、そんなのは仮初の幸せだったのだ。
友達伝いに聞いた噂では、輝は私を振った後、社長の令嬢と結婚した。しかし彼は、結婚した後も私にしていたように、色んな若い女をたぶらかして遊んでいた。そして、そんなことが社長の耳に入って彼は当然、クビ。令嬢とも離婚した挙句、多額の慰謝料を請求されて知人に金を借りまわっているという話だ。
どうして、そんな男に熱を上げていたのだろう……私は、自分の男性を見る目の無さに嫌気がさした。
本当の幸せは……私のすぐそば。近すぎて、気付かない所にあった。
私はぼんやりと利樹を見つめた。
こいつはいつも挙動不審で、何を言っているのか分からなくて、女友達に紹介するのに抵抗を感じる時もあった。でも、いつも真っ直ぐに私だけを見ていてくれて、私の夢……いや、私だけじゃない。世界中のみんなの夢の装置を作ってくれたんだ。
三年前の今日、私のもとにとどいたサファイヤのネックレスは、未来の私達からのちょっと辛口な誕生日プレゼントだったんだ。
そんなことを考えると、何だか可笑しくなって笑えてきた。
その時だった。
突如、ドアの前のタイムカプセルが金色の光に包まれて……忽然と姿を消したのだ。
「え、マジ!?」
こうなることは分かっていたけれど、いざ自分の目の前で起こると信じられなくて。私はしばし、真っ白になった。
「で、で、できた!」
菅川はほっと安心したようにリモコンとドアの前を交互に見た。
「ちょっと! 早すぎるよ!」
「え?」
「タイムカプセルを消すの、早すぎる」
「え、で、でも……なつめが早くって」
「そうは言っても、もっとこう、何ていうかな……。感慨にふけったりとか、そんな時間も欲しかったでしょ」
「そ、そ、そうか。ごめん」
私の理不尽な言い分にも素直に謝るこいつが可笑しくて。私はいつものように大笑いしたくなるのを堪えた。大笑いしても良いけれど……こいつなら、きっとこのタイミングでくれるはず。もう、お互いのことをしっかり理解しあう私には分かっていた。
「な、なつめ。これ……」
彼は真っ赤になって……しかし、芯のしっかりと通った真っ直ぐな眼差しを私に向けた。
手の平にのせたケースには、私の誕生石……サファイヤの指輪が輝いていた。
「ぼ、僕と、け、け、け……」
「いや、噛みすぎだって!」
ツッコんでからやはり堪えきれなくなって、私はいつものように腹を抱えて大笑いした。そして、ひとしきり笑った後……私は困った顔をしている彼に向き直り、指輪を受け取ってそっと自分の左手の薬指にはめた。
「うん、利樹。結婚しよ!」
そして、私は顔を彼の顔に近付けて……熱い口づけを交わしたのだった。
*
「何、これ?」
二十一歳の誕生日の朝。
私は、突如部屋に届いたものを見て首を傾げた。いや、部屋に『届いた』というのには、語弊がある。
「さっきまで、こんなのあったっけ?」
その金属製の『カプセル』は、突如私の部屋のドアの前に『現れた』のだ。
ステンレスのような光沢を放つそれには、よく見ると『PAST TIME CAPSULE』と印字されていた。
「PAST TIME CAPSULE……過去のタイムカプセル?」
あまり見ない言葉に不思議に思いながらも、私はそのカプセルを開いてみた。
(了)
全世界が見守る中。菅川は新技術『PAST TIME CAPSULE』の発表を行った。
聴衆達がざわつく中、菅川は余裕の笑みさえ浮かべながら爽やかに続ける。
「このカプセルに過去の誰かへの贈り物を入れてこちらのリモコンで操作すると……その贈り物は調節しただけの時間をさかのぼって、その場所に届けられるのです。こちらはまだ実験段階なのですが、きっと皆様に『夢』と『希望』を運ぶことができる。私どもは、そう、信じています」
以前のビクビクと挙動不振な彼が嘘のように、堂々と発表する。まぁ、もっとも、発表でははっきりと自分の言いたいことを伝えられるよう私がスパルタ特訓をした成果なんだけど。
でも、それでも一番前の席で聴いていた私は鼻の奥がツーンと痛くなって涙が込み上げてくるほどに感動した。
こいつは、ついに実現してくれた。あの日、私が書いた夢……欲しくて欲しくてたまらなかったものを、ついに開発してくれたのだ。
感涙を必死に堪える私と目が合った彼は柔らかく微笑み……再度、口を開いた。
あれ? 私が特訓をしたのは、さっきのフレーズまで。それ以上のことは練習していない。ここからは、もしかして……こいつのサプライズ?
不思議そうな目を向ける私に微笑みながら、菅川は口を動かした。
「私がこのカプセルの開発に着手し始めたきっかけは、小学校の時の卒業文集です。私の初恋の相手は文集に『タイムマシンが欲しい』と書いていた。だから、私はがむしゃらになってこの研究に取り組んだのです。今の技術ではカプセルに入るサイズのものを過去に届けることに留まっていますが、これから先、タイムマシンを生み出すに至る研究なのです。私の夢は、初恋の女性……今、私の彼女として隣にいる女性と一緒にタイムトラベルをすることです」
その場は一気に聴衆達の歓声と笑い声に包まれた。
私の顔は一気に火照る。きっと今、鏡を見ると、真っ赤に熟れたトマトと対面することになるだろう。
彼はそんな私を見てにっこりと笑った。
「そして……。この技術で世界中の皆様の過去と未来を繋ぐことができる。私どもは皆様に、夢と希望に満ち溢れた未来を、必ずお届けいたします」
聴衆達の大きな拍手とともに、技術発表は大成功のうちに幕を閉じた。
技術発表後。
「もう~、菅川。何、あれ? サプライズのつもり? 私、メッチャ恥ずかしかったんだからね」
「ご、ご、ごめん……」
顔を火照らせて頬を膨らます私に、発表の時とは別人のようにおどおどした彼はどもりながら俯いた。
こいつ、本当にあの発表者と同一人物? でも……私はこいつのこんなギャップも痺れるほどに大好きなのだ。
だから私は、クスっと笑って目を細めた。
「でも、ありがとう。すっごく嬉しかった。それに……」
私は柔らかく目を細めた。
「とっても素敵な発表だったよ。みんなの夢が広がる……」
夜景の素敵なレストランでのディナー。背広姿のこいつとドレスを着た私は、傍目に見ても良いムードになった。
勿論、こいつにはこんな店は選べないんだけど。私がセッティングしたのだ。
「い、いや、澤村さんのおかげだよ」
相変わらず謙遜する彼が可笑しくて、クスっと笑った。
「そこは、自分の力だって認めなよ。ま、そんな所が菅原らしくて好きなんだけどね。それと……」
照れて頭を掻く彼氏を見て、私はにっこりと微笑んだ。
「ねぇ、そろそろ、澤村さんでなく、棗って呼んでよ。私もあんたのこと、利樹って呼ぶからさ」
すると、利樹は緊張した面持ちで向き直り、力んで言葉を発した。
「う、う、うん。ナチュメ……」
「プッ……」
私は思わず吹き出す。
「何、それ。私の名前すらマトモに呼べないわけ?」
私の名前を呼ぶだけなのに、緊張しすぎて噛んだ彼がまた可笑しくなって、大笑いした。こいつと付き合っていると、常に笑いが絶えない。
すると、彼は何やらモゾモゾとしだして、ガラス製の一つのケースを取り出した。
「何?」
「な、なつめ……今日、誕生日だよね」
「わぁ、プレゼント、くれるの? 今日二度目のサプライズ、嬉しい!」
はしゃぐ私に利樹はまた照れて、幸せそうに頭を掻いた。
そのケースを開けた私は、目を丸くした。
そこに入っていたのは、澄んだ海のように青く光り輝くサファイアのネックレス……そう。間違いない。
二十一歳の誕生日にあのカプセルに入って私に送られてきたネックレスだったのだ。
その瞬間、私は……全てを理解した。
そうなんだ。このネックレスの贈り主は……そうだったんだ。
私は利樹に、悪戯な笑顔を向けた。
「ねぇ。利樹が開発した『PAST TIME CAPSULE』。製品化されたら……一番に私に使わせてくれない?」
「えっ?」
「それでさ、このネックレスを入れて私の二十一歳の誕生日に届けるの。だって、このネックレスがあったから……今の私とあなたがあるんだから」
私は知っている。このネックレスは、海の底に沈んでしまう運命だ。
でも、このネックレスは私の元からなくなるとしても……あの時、このネックレスが届いたからこそ、今の私がある。そして、その『今の私』はこの上なく幸せなのだ。
「それで! 来年の誕生日にはちょうだいね。サファイアの婚約指輪!」
狐につままれる利樹に、私は飛び切りの笑顔でそう言った。
*
「こ、このカプセルに入れて……このリモコンで操作すると、過去の今の場所に届けることができるんだ」
私は、丁度三年前にこのカプセルが現れた場所……そう。私の部屋のドアの前に、ネックレスを入れた『PAST TIME CAPSULE』をセッティングした。利樹はもそもそとリモコンをいじっている。
「ねぇ、まだ?」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
配送時期の調節に時間がかかりすぎる彼にイラついて尋ねると、彼はさらにしどろもどろになった。
「もう……」
私は腰に手を当てて溜息をついた。
そして、じっと『PAST TIME CAPSULE』を見つめた。
丁度三年前……このカプセルがここに現れるまでは、将来、私の隣に利樹がいることになるなんて考えもしなかった。
きっと、上流企業で働いているイケメンの輝と結婚して、幸せに暮らしている……そう、信じていた。でも、そんなのは仮初の幸せだったのだ。
友達伝いに聞いた噂では、輝は私を振った後、社長の令嬢と結婚した。しかし彼は、結婚した後も私にしていたように、色んな若い女をたぶらかして遊んでいた。そして、そんなことが社長の耳に入って彼は当然、クビ。令嬢とも離婚した挙句、多額の慰謝料を請求されて知人に金を借りまわっているという話だ。
どうして、そんな男に熱を上げていたのだろう……私は、自分の男性を見る目の無さに嫌気がさした。
本当の幸せは……私のすぐそば。近すぎて、気付かない所にあった。
私はぼんやりと利樹を見つめた。
こいつはいつも挙動不審で、何を言っているのか分からなくて、女友達に紹介するのに抵抗を感じる時もあった。でも、いつも真っ直ぐに私だけを見ていてくれて、私の夢……いや、私だけじゃない。世界中のみんなの夢の装置を作ってくれたんだ。
三年前の今日、私のもとにとどいたサファイヤのネックレスは、未来の私達からのちょっと辛口な誕生日プレゼントだったんだ。
そんなことを考えると、何だか可笑しくなって笑えてきた。
その時だった。
突如、ドアの前のタイムカプセルが金色の光に包まれて……忽然と姿を消したのだ。
「え、マジ!?」
こうなることは分かっていたけれど、いざ自分の目の前で起こると信じられなくて。私はしばし、真っ白になった。
「で、で、できた!」
菅川はほっと安心したようにリモコンとドアの前を交互に見た。
「ちょっと! 早すぎるよ!」
「え?」
「タイムカプセルを消すの、早すぎる」
「え、で、でも……なつめが早くって」
「そうは言っても、もっとこう、何ていうかな……。感慨にふけったりとか、そんな時間も欲しかったでしょ」
「そ、そ、そうか。ごめん」
私の理不尽な言い分にも素直に謝るこいつが可笑しくて。私はいつものように大笑いしたくなるのを堪えた。大笑いしても良いけれど……こいつなら、きっとこのタイミングでくれるはず。もう、お互いのことをしっかり理解しあう私には分かっていた。
「な、なつめ。これ……」
彼は真っ赤になって……しかし、芯のしっかりと通った真っ直ぐな眼差しを私に向けた。
手の平にのせたケースには、私の誕生石……サファイヤの指輪が輝いていた。
「ぼ、僕と、け、け、け……」
「いや、噛みすぎだって!」
ツッコんでからやはり堪えきれなくなって、私はいつものように腹を抱えて大笑いした。そして、ひとしきり笑った後……私は困った顔をしている彼に向き直り、指輪を受け取ってそっと自分の左手の薬指にはめた。
「うん、利樹。結婚しよ!」
そして、私は顔を彼の顔に近付けて……熱い口づけを交わしたのだった。
*
「何、これ?」
二十一歳の誕生日の朝。
私は、突如部屋に届いたものを見て首を傾げた。いや、部屋に『届いた』というのには、語弊がある。
「さっきまで、こんなのあったっけ?」
その金属製の『カプセル』は、突如私の部屋のドアの前に『現れた』のだ。
ステンレスのような光沢を放つそれには、よく見ると『PAST TIME CAPSULE』と印字されていた。
「PAST TIME CAPSULE……過去のタイムカプセル?」
あまり見ない言葉に不思議に思いながらも、私はそのカプセルを開いてみた。
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