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第五章 封印の指輪
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王妃は各地から収集した宝物などそっちのけで、アシスに付きっ切りとなった。来る日も来る日も、アシスを洗脳した。
この世の全てを凍らせることができると、アシスがこの世の王となれること、全てを手にすることができること、そして、そのためにはまずは隣のマグリア国を氷漬けにしなければならないこと。
アシスは日に日に邪悪な漆黒の色に染まっていった。
しかし、その状況はエバンが『封印の指輪』を探すには寧ろ好都合だった。
王妃はアシスの洗脳に夢中になっている。アシスの力で自分がこの世界の神となれば、より一層素晴らしい宝が手に入る。
だから、今持っている宝には興味を示さずに部屋を空けている。
その部屋にこっそり入り、宝の山の中から指輪を探した。
ダイヤやルビーなど、煌びやかな宝石のついた指輪がほとんどであったが、無造作に置かれていたそれらとは別に、確りとしたケースに入れられた指輪があった。ケースを開けてみると、他の指輪に比べて極めて地味であったが、よく見るとその指輪には呪文のような文字が沢山書かれていた。
「これは、恐らく……封印の呪文。これが『封印の指輪』だ」
エバンはそう確信し、こっそりと指輪を持ち出した。
「リルム、左手を出して」
洞窟の中。蝋燭に照らし出された美しいリルムに、エバンは言った。
何だろう……。
リルムは、不思議に思いながらも言われたとおり左手を差し出した。すると、エバンは左手の薬指にゆっくりと指輪をはめたのだ。
え、これって……指輪?
母から聞いたことがある。王子さまから指輪をはめて貰ったら、結婚して下さいってこと?
リルムは、鼓動が速くなるのを感じた。
「きゃー、やった、やったぁ!」
マリヤははしゃいだ。
「リルム姫さま、ついに王子さまと御結婚ですね!」
メレンも、目を輝かした。
「おめでとうございます!僕達も、嬉しいです」
エルスは、感動のあまり目に涙を浮かべている。
「これこれ、違うって」
エバンは、早とちりの妖精達をたしなめた。
「この指輪は、『封印の指輪』。これをはめると、魔力を封印することができるんだ。だから、リルムも洞窟から出て暮らせるんだ!」
「なぁんだ、結婚じゃないのか」
妖精達は少しがっかりとした。
「でも、リルム姫さまが洞窟から出ることができるんだ!」
期待に目を輝かせた。
リルムも、プロポーズではないことを知り少しがっかりしたものの、洞窟から出ることができるかも知れないと知って胸が高鳴った。
「さぁ、リルム、一緒に出よう」
洞窟の出口。エバンは、リルムの手を引く。
「でも……やっぱり、怖い」
リルムは、足が進まない。
あとほんの二、三歩先では、ジリジリと太陽の眩しい光が照りつけている。自分は、この太陽の力で、知らなかったとはいえ、これまでに二人も殺してしまった。
衛兵が悶え苦しみ、黒こげになっていく……。その様が、フラッシュバックしてリルムの足を引き留める。
すると、エバンは凛々しい笑顔で真っ直ぐリルムを見つめた。
「大丈夫! 僕を信じて」
リルムはドキドキした。おそるおそる、足を進める。
「わぁ、気持ちいい」
リルムは、初めて青空の下に出た。
青く澄んだ空に吸い込まれそう。木の上では白い小鳥達が囀り、自分を歓迎してくれているようだった。
緑色の木と草。色とりどりのお花たち。
太陽の陽射しの下で見るそれらはとても色鮮やかで、リルムは見とれた。
「な、言ったとおり、外の世界はとても楽しくて、気持ちいいだろ」
エバンは、リルムに白い歯を見せて笑う。
「ええ……」
リルムは、太陽の陽射しの下で頬を桃色に染めた。
「私達、お邪魔なようね」
マリヤは、嬉しいけど少し寂しそうな顔をして言った。
「でも本当に、リルム姫さまが幸せそうでよかった」
妖精達も、リルムが太陽の下に出ることができて心から喜んだ。
この世の全てを凍らせることができると、アシスがこの世の王となれること、全てを手にすることができること、そして、そのためにはまずは隣のマグリア国を氷漬けにしなければならないこと。
アシスは日に日に邪悪な漆黒の色に染まっていった。
しかし、その状況はエバンが『封印の指輪』を探すには寧ろ好都合だった。
王妃はアシスの洗脳に夢中になっている。アシスの力で自分がこの世界の神となれば、より一層素晴らしい宝が手に入る。
だから、今持っている宝には興味を示さずに部屋を空けている。
その部屋にこっそり入り、宝の山の中から指輪を探した。
ダイヤやルビーなど、煌びやかな宝石のついた指輪がほとんどであったが、無造作に置かれていたそれらとは別に、確りとしたケースに入れられた指輪があった。ケースを開けてみると、他の指輪に比べて極めて地味であったが、よく見るとその指輪には呪文のような文字が沢山書かれていた。
「これは、恐らく……封印の呪文。これが『封印の指輪』だ」
エバンはそう確信し、こっそりと指輪を持ち出した。
「リルム、左手を出して」
洞窟の中。蝋燭に照らし出された美しいリルムに、エバンは言った。
何だろう……。
リルムは、不思議に思いながらも言われたとおり左手を差し出した。すると、エバンは左手の薬指にゆっくりと指輪をはめたのだ。
え、これって……指輪?
母から聞いたことがある。王子さまから指輪をはめて貰ったら、結婚して下さいってこと?
リルムは、鼓動が速くなるのを感じた。
「きゃー、やった、やったぁ!」
マリヤははしゃいだ。
「リルム姫さま、ついに王子さまと御結婚ですね!」
メレンも、目を輝かした。
「おめでとうございます!僕達も、嬉しいです」
エルスは、感動のあまり目に涙を浮かべている。
「これこれ、違うって」
エバンは、早とちりの妖精達をたしなめた。
「この指輪は、『封印の指輪』。これをはめると、魔力を封印することができるんだ。だから、リルムも洞窟から出て暮らせるんだ!」
「なぁんだ、結婚じゃないのか」
妖精達は少しがっかりとした。
「でも、リルム姫さまが洞窟から出ることができるんだ!」
期待に目を輝かせた。
リルムも、プロポーズではないことを知り少しがっかりしたものの、洞窟から出ることができるかも知れないと知って胸が高鳴った。
「さぁ、リルム、一緒に出よう」
洞窟の出口。エバンは、リルムの手を引く。
「でも……やっぱり、怖い」
リルムは、足が進まない。
あとほんの二、三歩先では、ジリジリと太陽の眩しい光が照りつけている。自分は、この太陽の力で、知らなかったとはいえ、これまでに二人も殺してしまった。
衛兵が悶え苦しみ、黒こげになっていく……。その様が、フラッシュバックしてリルムの足を引き留める。
すると、エバンは凛々しい笑顔で真っ直ぐリルムを見つめた。
「大丈夫! 僕を信じて」
リルムはドキドキした。おそるおそる、足を進める。
「わぁ、気持ちいい」
リルムは、初めて青空の下に出た。
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「な、言ったとおり、外の世界はとても楽しくて、気持ちいいだろ」
エバンは、リルムに白い歯を見せて笑う。
「ええ……」
リルムは、太陽の陽射しの下で頬を桃色に染めた。
「私達、お邪魔なようね」
マリヤは、嬉しいけど少し寂しそうな顔をして言った。
「でも本当に、リルム姫さまが幸せそうでよかった」
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