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四.おさんぽで……
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まどからぽかぽかとさすお日さまが気持ちいい、ある日のことだった。
「じゃーん!」
かおりちゃんが、両方のほっぺにえくぼをつくって、青いひもみたいなのを見せてくれた。
「ほら、ポコ。シマリス用の、小さなリードだよ。お父さんに買ってもらったんだ。これで、いっしょにお外におさんぽに行けるよ!」
そのひもが何なのか分からなかったけれど、かおりちゃんはとってもうれしそうで。これからきっと、楽しいことが起こるんだろうと分かって、ぼくもドキドキ、ワクワクした。
「はい、ポコ。これをくぐって……こら、言うことを聞いて!」
それからは、ぼくもかおりちゃんも一苦労。かおりちゃんはぼくをつかまえてそのひもをくぐらせようとしたけれど、ぼくはそんなのこわくて、にげ回って……。だけれども、結局、ぼくは必死なかおりちゃんに負けて、そのひもをくぐってつけることになった。
「わぁ、ポコ、青いリードがとっても似合ってる。かわいい!」
かおりちゃんはぼくを見て、よろこんでほめてくれた。どうしてほめられているのかはよく分からなかったんだけれど、ぼくは得意な気持ちになった。
かおりちゃんはそんなぼくを手の平に乗せてケージから出してくれた。
「ほぉら、ポコ。もうどこへ行っても自由だよ。だって、どこへ行っても見つけられるもん」
そう言ってにっこりと笑ったかおりちゃんは、いっつもとはちがってぼくが手首からうでに登ろうとしても、あわてることはなかった。
だからぼくは、いいのかな……と思いながらも、ひげをひくひくとして確かめながら、かおりちゃんのうでに登った。うでをどんどん登っていって肩に乗ったら、かおりちゃんはくすぐったそうに、キャッキャと笑っていた。
ぼくもかおりちゃんの肩に乗るのは初めてだ。いつもケージごしにしか見ていなかった、かおりちゃんの顔が近くにあって。少し高いけれど、ぼくは飛び降りられるくらいの高さで、こわくなくて安心できる場所だった。
「よーし、ポコ。私の家のぼうけんだよ」
そう言ってかおりちゃんはゆっくり歩いて、それに合わせてぼくの見える風景もだんだんと変わっていった。
わぁ……ぼくのいるかおりちゃんの家って、こんなだったんだ。
四角いつくえにいす、それに大きなたながいくつもあって、それらはぼくの初めて見るものだった。
そして、床はやわらかそうな緑色をしていた。ぼくはかおりちゃんの体を伝って、ぴょんとその床に飛び降りた。
それはやっぱりやわらかくてフカフカとしていて、飛び降りても全然、いたくなかった。
すごい、楽しい……!
ぼくは楽しくって、うれしくなって、その緑色の床を走った。
すると、ぼくにつけられた青いひもがピンとはって、ぼくは少し引っぱられた。
「こらこら、ポコ。楽しくなりすぎたらあぶないよ。でも、このリードがあるからだいじょうぶだけどね」
ぼくの後ろでは、手に青いひものはしを持ったかおりちゃんが、目を細めてにっこりと笑っていた。
そっか、青いひもって、そのためにつけているんだ。
ぼくは、このひもをちょっときゅうくつに感じてしまった。
「でもやっぱり、リードがあるし、だいじょうぶだよね。ねぇポコ。お外におさんぽに行こう」
かおりちゃんはそう言って、ニッと白い歯を見せた。
「だって私。ずっと、おさんぽがしたかったんだ」
そう言えば、かおりちゃんって、初めてお店に来た時にも言ってたっけ。
ぼくはそんなことを思い出して。お外をおさんぽできるのがとてもうれしくて、ドキドキと心がおどった。
かおりちゃんがドアを開けると、外はとってもまぶしくって、ぼくは思わず、かおりちゃんの肩までよじ登った。
「そうだね、ポコ。ここはマンションの三かいだから、しばらく肩でじっとしててね」
そう言って歩くかおりちゃんの肩にゆられて見える世界は、まさにぼくの全く知らなかった世界だった。
かおりちゃんは肩にいるぼくに気をつけながら、一だんずつゆっくりとかいだんを降りてくれている。マンションのすきまからさしこむお日さまの光が心地よくて、ぼくの体を吹きぬける風がすずしくってとっても気持ちいい。
マンションを出ると、ぼくたちの上にはとっても大きくて青い空が広がっていた。見上げると、その青さにすいこまれそうで……おどろいた。この世界には、こんなにきれいなものがあったんだ。
だから、ぼくはもっともっと、ぼくがいる世界のことを知りたくて。かおりちゃんの体をはなれて、走り出した。
だけれどもその瞬間、ぼくの体につけられたひもがピンとはった。
「ポコ、ダメだよ。楽しくなりすぎたらあぶないよ」
かおりちゃんはそう言って、青いひもをたぐりよせた。
ちぇっ、ぼく、もっと外のことをよく見てよく知りたいのに。
そんなことを思ってしまった。
だって、この世界はとっても大きくて、きれいで、ぼくの知らないことばっかりで、わくわくする。それに、大きな木もあって……こんな大きな木、ぼくは初めて見るはずなのに、何だかなつかしいようなふしぎな感じがして、ぼくの胸はドキドキと高なるんだ。
だから、ぼくはもっと自由に動きたい。なのに、ぼくが自分の足で遠くに行こうとしたら、青いひもでピンと引っぱられるんだ。
そんなふうに、この青いひもを不自由に思っていた時だった。とつぜん、かおりちゃんが目を見開いて止まった。
ぼくも、前からものすごい気配を感じて見ると、こわそうな犬がこっちを見て歯をむき出してうなっていた。そのはるかに後ろから、おばさんがあわてて走って来ていたけれど……その犬は、今にもこちらに飛びかかってきそうだった。
かおりちゃんがあぶない……!
ぼくは、とっさにそう思った。
そう思うやいなや、ぼくの足はかけ出した。道路は黒い石がたくさんうまっていて走りにくかったけれど、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
すると、その犬はこちらに気をとられて、追いかけてきた。
そうだ、かおりちゃんからはなれて……こっちに来い!
ぼくは必死で走った。どういうわけか、青いひもで引っぱられる感覚はなくて、ひもはするっと抜けたような気がするけれど、そんなことにも構わないでぼくは走り続けた。
「ポコ!!」
かおりちゃんのあわてたさけび声も聞こえたけれど……すぐ後ろを犬が追いかけてきているのは分かっていて。だからぼくは、後ろをふり返らずに、黒い石のたくさんうまっている道路を走り続けたのだ。
「ワン! ワン!」
後ろから犬の声が聞こえて、ぼくは必死に走り続けた。どれくらい走っただろう……足がクタクタになってきた時、目の前に大きな木が見えた。
やった……ぼく、木登りは得意なんだ。
ぼくは足を木のうろにひっかけて、するすると登った。犬はどんどんと木に近付いてくるから、必死で追いつかれないように、どんどんと高くまで登った。
木のみきから枝に移った時に、犬は木の下にたどり着いた。
「クゥー!」
犬はぼくを見上げてくやしそうにうなっていたけれど、どうすることもできないみたいだった。ぼくはホッと息をついてその枝でじっとしていると、犬は木の下をぐるぐると何回も回って。しばらくこっちを見上げていたけれど、もう一回、くやしそうにうなって、来た道を帰って行った。
ふぅ……びっくりした。
ぼくも犬に追いかけられるなんて初めてで、とってもこわかった。だけれども、何ともなくて……かおりちゃんのことも守ることができて、良かった。
あ、そうだ……かおりちゃんの所へもどらなきゃ。
そう思って、その木を降りようとした時だった。ぼくの体についていた青いひもが、ピンとはるのを感じた。
え、どうしたんだろう?
そう思って、ひもを見て……ぼくはあぜんとした。何と、ぼくの体についていた青いひもは、木の枝とかみきとか、あちらこちらにからまっていたんだ。
どうしよう……ひもが取れないし、ここから動けない。
ぼくが青いひもをほどこうと動けばうごくほどに、ひもはさらに木にからまってうごけなくなっていった。
ぼく、かおりちゃんのところにもどらないといけないのに……。
「キュル、キュル!」
ぼくの口からはそんな声が出たけれど、だれにも届かなくって。自分の力ではどうにもできなくて、ぼくはぼうぜんとしていた。
どのくらいの時間がたっただろう。ぼくが動けないでいると、木の枝の先に、スズメさんが止まった。
スズメさん、助けて!
ぼくは「キュル、キュル」と鳴いて伝えようとしたけれど……スズメさんも「チュンチュン」とあわただしく鳴いて、ぼくに何かを伝えようとしてくれているみたいだった。
どうしたんだろう……?
そのただならぬ様子に、ぼくはあたりを見回した。
チョロチョロと動いて、キョロキョロと見回して……ぼくは見つけてぞっとした。何と、一匹の大きなネコがこの木を登ってきていたんだ。
ぼくは大いそぎで青いひもから抜けようとしたけれど、どうしても抜けなかった。そうしているうちに、そのネコはぼくの前にあらわれて。身を少し低くして、ぼくにねらいを定めた。
こわい……すっごくこわかったけれど、ぼくはせいいっぱいにそのネコを見つめて、
「グルルルル!」
と声を出した。
来る……!
ネコの体勢が変わって、その手が伸びた瞬間に、ぼくは身をひるがえした。
ぼくの体はそのつめをのがれることができたけれど、ひもに引っぱられた。ぼくの体のひもは、ネコのつめに引っかかったみたいで、グンとすきまが大きく広がった。
やった……これで、ぼくの体はひもを抜けることができる!
ネコはすかさず、もう一つの手でぼくを押さえつけようとしたけれど、ぼくは必死でひもを抜けて。大急ぎ、ダッシュでその木を降りた。
「ニャァー!」
ネコは追いかけてきたけれど、ぼくはひたすらに走ってにげて。黒い石のうまっている道路から灰色のへいなんかをよじ登って、家をいくつも超えて。木のたくさんある山に入って、ようやくネコをふり切った。
「じゃーん!」
かおりちゃんが、両方のほっぺにえくぼをつくって、青いひもみたいなのを見せてくれた。
「ほら、ポコ。シマリス用の、小さなリードだよ。お父さんに買ってもらったんだ。これで、いっしょにお外におさんぽに行けるよ!」
そのひもが何なのか分からなかったけれど、かおりちゃんはとってもうれしそうで。これからきっと、楽しいことが起こるんだろうと分かって、ぼくもドキドキ、ワクワクした。
「はい、ポコ。これをくぐって……こら、言うことを聞いて!」
それからは、ぼくもかおりちゃんも一苦労。かおりちゃんはぼくをつかまえてそのひもをくぐらせようとしたけれど、ぼくはそんなのこわくて、にげ回って……。だけれども、結局、ぼくは必死なかおりちゃんに負けて、そのひもをくぐってつけることになった。
「わぁ、ポコ、青いリードがとっても似合ってる。かわいい!」
かおりちゃんはぼくを見て、よろこんでほめてくれた。どうしてほめられているのかはよく分からなかったんだけれど、ぼくは得意な気持ちになった。
かおりちゃんはそんなぼくを手の平に乗せてケージから出してくれた。
「ほぉら、ポコ。もうどこへ行っても自由だよ。だって、どこへ行っても見つけられるもん」
そう言ってにっこりと笑ったかおりちゃんは、いっつもとはちがってぼくが手首からうでに登ろうとしても、あわてることはなかった。
だからぼくは、いいのかな……と思いながらも、ひげをひくひくとして確かめながら、かおりちゃんのうでに登った。うでをどんどん登っていって肩に乗ったら、かおりちゃんはくすぐったそうに、キャッキャと笑っていた。
ぼくもかおりちゃんの肩に乗るのは初めてだ。いつもケージごしにしか見ていなかった、かおりちゃんの顔が近くにあって。少し高いけれど、ぼくは飛び降りられるくらいの高さで、こわくなくて安心できる場所だった。
「よーし、ポコ。私の家のぼうけんだよ」
そう言ってかおりちゃんはゆっくり歩いて、それに合わせてぼくの見える風景もだんだんと変わっていった。
わぁ……ぼくのいるかおりちゃんの家って、こんなだったんだ。
四角いつくえにいす、それに大きなたながいくつもあって、それらはぼくの初めて見るものだった。
そして、床はやわらかそうな緑色をしていた。ぼくはかおりちゃんの体を伝って、ぴょんとその床に飛び降りた。
それはやっぱりやわらかくてフカフカとしていて、飛び降りても全然、いたくなかった。
すごい、楽しい……!
ぼくは楽しくって、うれしくなって、その緑色の床を走った。
すると、ぼくにつけられた青いひもがピンとはって、ぼくは少し引っぱられた。
「こらこら、ポコ。楽しくなりすぎたらあぶないよ。でも、このリードがあるからだいじょうぶだけどね」
ぼくの後ろでは、手に青いひものはしを持ったかおりちゃんが、目を細めてにっこりと笑っていた。
そっか、青いひもって、そのためにつけているんだ。
ぼくは、このひもをちょっときゅうくつに感じてしまった。
「でもやっぱり、リードがあるし、だいじょうぶだよね。ねぇポコ。お外におさんぽに行こう」
かおりちゃんはそう言って、ニッと白い歯を見せた。
「だって私。ずっと、おさんぽがしたかったんだ」
そう言えば、かおりちゃんって、初めてお店に来た時にも言ってたっけ。
ぼくはそんなことを思い出して。お外をおさんぽできるのがとてもうれしくて、ドキドキと心がおどった。
かおりちゃんがドアを開けると、外はとってもまぶしくって、ぼくは思わず、かおりちゃんの肩までよじ登った。
「そうだね、ポコ。ここはマンションの三かいだから、しばらく肩でじっとしててね」
そう言って歩くかおりちゃんの肩にゆられて見える世界は、まさにぼくの全く知らなかった世界だった。
かおりちゃんは肩にいるぼくに気をつけながら、一だんずつゆっくりとかいだんを降りてくれている。マンションのすきまからさしこむお日さまの光が心地よくて、ぼくの体を吹きぬける風がすずしくってとっても気持ちいい。
マンションを出ると、ぼくたちの上にはとっても大きくて青い空が広がっていた。見上げると、その青さにすいこまれそうで……おどろいた。この世界には、こんなにきれいなものがあったんだ。
だから、ぼくはもっともっと、ぼくがいる世界のことを知りたくて。かおりちゃんの体をはなれて、走り出した。
だけれどもその瞬間、ぼくの体につけられたひもがピンとはった。
「ポコ、ダメだよ。楽しくなりすぎたらあぶないよ」
かおりちゃんはそう言って、青いひもをたぐりよせた。
ちぇっ、ぼく、もっと外のことをよく見てよく知りたいのに。
そんなことを思ってしまった。
だって、この世界はとっても大きくて、きれいで、ぼくの知らないことばっかりで、わくわくする。それに、大きな木もあって……こんな大きな木、ぼくは初めて見るはずなのに、何だかなつかしいようなふしぎな感じがして、ぼくの胸はドキドキと高なるんだ。
だから、ぼくはもっと自由に動きたい。なのに、ぼくが自分の足で遠くに行こうとしたら、青いひもでピンと引っぱられるんだ。
そんなふうに、この青いひもを不自由に思っていた時だった。とつぜん、かおりちゃんが目を見開いて止まった。
ぼくも、前からものすごい気配を感じて見ると、こわそうな犬がこっちを見て歯をむき出してうなっていた。そのはるかに後ろから、おばさんがあわてて走って来ていたけれど……その犬は、今にもこちらに飛びかかってきそうだった。
かおりちゃんがあぶない……!
ぼくは、とっさにそう思った。
そう思うやいなや、ぼくの足はかけ出した。道路は黒い石がたくさんうまっていて走りにくかったけれど、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
すると、その犬はこちらに気をとられて、追いかけてきた。
そうだ、かおりちゃんからはなれて……こっちに来い!
ぼくは必死で走った。どういうわけか、青いひもで引っぱられる感覚はなくて、ひもはするっと抜けたような気がするけれど、そんなことにも構わないでぼくは走り続けた。
「ポコ!!」
かおりちゃんのあわてたさけび声も聞こえたけれど……すぐ後ろを犬が追いかけてきているのは分かっていて。だからぼくは、後ろをふり返らずに、黒い石のたくさんうまっている道路を走り続けたのだ。
「ワン! ワン!」
後ろから犬の声が聞こえて、ぼくは必死に走り続けた。どれくらい走っただろう……足がクタクタになってきた時、目の前に大きな木が見えた。
やった……ぼく、木登りは得意なんだ。
ぼくは足を木のうろにひっかけて、するすると登った。犬はどんどんと木に近付いてくるから、必死で追いつかれないように、どんどんと高くまで登った。
木のみきから枝に移った時に、犬は木の下にたどり着いた。
「クゥー!」
犬はぼくを見上げてくやしそうにうなっていたけれど、どうすることもできないみたいだった。ぼくはホッと息をついてその枝でじっとしていると、犬は木の下をぐるぐると何回も回って。しばらくこっちを見上げていたけれど、もう一回、くやしそうにうなって、来た道を帰って行った。
ふぅ……びっくりした。
ぼくも犬に追いかけられるなんて初めてで、とってもこわかった。だけれども、何ともなくて……かおりちゃんのことも守ることができて、良かった。
あ、そうだ……かおりちゃんの所へもどらなきゃ。
そう思って、その木を降りようとした時だった。ぼくの体についていた青いひもが、ピンとはるのを感じた。
え、どうしたんだろう?
そう思って、ひもを見て……ぼくはあぜんとした。何と、ぼくの体についていた青いひもは、木の枝とかみきとか、あちらこちらにからまっていたんだ。
どうしよう……ひもが取れないし、ここから動けない。
ぼくが青いひもをほどこうと動けばうごくほどに、ひもはさらに木にからまってうごけなくなっていった。
ぼく、かおりちゃんのところにもどらないといけないのに……。
「キュル、キュル!」
ぼくの口からはそんな声が出たけれど、だれにも届かなくって。自分の力ではどうにもできなくて、ぼくはぼうぜんとしていた。
どのくらいの時間がたっただろう。ぼくが動けないでいると、木の枝の先に、スズメさんが止まった。
スズメさん、助けて!
ぼくは「キュル、キュル」と鳴いて伝えようとしたけれど……スズメさんも「チュンチュン」とあわただしく鳴いて、ぼくに何かを伝えようとしてくれているみたいだった。
どうしたんだろう……?
そのただならぬ様子に、ぼくはあたりを見回した。
チョロチョロと動いて、キョロキョロと見回して……ぼくは見つけてぞっとした。何と、一匹の大きなネコがこの木を登ってきていたんだ。
ぼくは大いそぎで青いひもから抜けようとしたけれど、どうしても抜けなかった。そうしているうちに、そのネコはぼくの前にあらわれて。身を少し低くして、ぼくにねらいを定めた。
こわい……すっごくこわかったけれど、ぼくはせいいっぱいにそのネコを見つめて、
「グルルルル!」
と声を出した。
来る……!
ネコの体勢が変わって、その手が伸びた瞬間に、ぼくは身をひるがえした。
ぼくの体はそのつめをのがれることができたけれど、ひもに引っぱられた。ぼくの体のひもは、ネコのつめに引っかかったみたいで、グンとすきまが大きく広がった。
やった……これで、ぼくの体はひもを抜けることができる!
ネコはすかさず、もう一つの手でぼくを押さえつけようとしたけれど、ぼくは必死でひもを抜けて。大急ぎ、ダッシュでその木を降りた。
「ニャァー!」
ネコは追いかけてきたけれど、ぼくはひたすらに走ってにげて。黒い石のうまっている道路から灰色のへいなんかをよじ登って、家をいくつも超えて。木のたくさんある山に入って、ようやくネコをふり切った。
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