3 / 16
0-れい-
しおりを挟む
◇
『デートに行こう』
その言葉がいちの口から出て、私の心臓は跳ね上がった。
恋人同士がするというそれは、楽しくってワクワクしてて、甘い。私はデートしたことはないけれど……本とかを読んで抱いていたイメージはそうだった。
「れいはどこに行きたい?」
そう聞かれて、私は迷わず「遊園地!」って答えた。
遊園地なんて本当は行ったことはなかったんだけれど……デートでのお決まりのコースだということは知っていて。私達が自然に恋人同士でいられる場所だと思ったから、どうしても、いちとの初デートで行きたかったんだ。
そんな私に、いちはにっこりと白い歯を見せて頷いた。
精一杯『恋人同士』でいようとする私を受け入れてくれる彼のそんな表情に、私はまた心をときめかせてしまったのだった。
*
「あれは……」
「観覧車っていうんだ。この遊園地の全体を見渡せるよ」
「そっか。あれが観覧車なんだ」
いざ遊園地に着いてみると、私はやはり、初めて見るものばかりで、いちに教えてもらうばかりだった。
周りのカップルは私達みたいなことはなくって、彼氏も彼女もとっても楽しそうに笑い合っていて……やっぱり私は、普通の女性とは違うんだ。
そんなことを考えて、落胆の溜息が口から漏れそうになっていた時だった。
「なぁ、れい。メリーゴーランドに乗らない?」
「えっ、メリーゴーランド?」
「うん。ほら、あれ……お馬さんが上下に揺れながら回ってるだろ」
「あ、あれ? うん! 楽しそう!」
本で見たことがある。それは、小さな子供達が楽しそうに乗っている、メルヘンチックな乗り物で……いつか乗ってみたいって、ずっと思ってた。
周りのカップル達はもっと大人向けの絶叫マシンに列を作ってならんでいたけれど、私はそんな恐い乗り物よりも、笑顔で楽しめる素敵な乗り物の方に憧れていて。いちがメリーゴーランドを提案してくれて、とっても嬉しくってワクワクした。
「ほら、れい。跨って、棒にしっかりと掴まって」
「えぇ……」
「僕も隣の馬に乗るから、安心して」
「そうね。ありがとう」
それは、子供でさえも普通に乗っているものだけれど、初めて乗る私はやはり緊張した。だけれどもいちは、私の手を取って優しく乗せてくれて、隣のに乗って微笑みかけてくれて……恋人って、彼氏って、こんなに優しくて温かいものなんだ。私の心はじんわりと熱くなった。
パイプオルガンから流れるようなメルヘンチックな音楽とともにメリーゴーランドが回り始めた。隣の馬に跨ったいちは、とっても楽しげに笑っている。そして周りの子供達の楽しげにはしゃぐ笑い声が聞こえるとともに、私の心もまるでくすぐられるように、口からは自然に笑い声が漏れた。
「あはは、あははは!」
今まで作り笑い……偽りの笑いしかしたことがなかった私だけれど、何だかとっても温かくって、くすぐったくて。
楽しいって、こんな感じなんだ。人型の私は、初めてその感情を理解した気がした。
「次、観覧車に行こうか」
いちは、初めて遊園地に来た私を気遣ってか、優しくて穏やかなアトラクションを選んで手を引いてくれる。
私にとってはいずれも初めての感情なんだけれど……私はきっと、彼の何気ない優しさが、嬉しくって楽しくって幸せで堪らなかった。
だから、観覧車の中で向かい合うと、私は何だか体の中がむず痒くなって、つい彼から目を逸らしてしまった。すると、彼は不安そうに眉を下げた。
「なぁ、れい」
「えっ?」
「僕とのデート、楽しい?」
そんな彼を見ていたら、どういうわけか、私の顔は自然に綻んだ。
「えぇ、楽しいわ。楽しくって、幸せで、仕方ない」
このデートでは初めて体験すること、初めて抱く感情ばかりで。私の口からはまるで自然に、その言葉が出た。
すると、彼は少し目を見開いた。
「やっぱり、れい……似てるな」
「えっ?」
不思議に思う私を見る彼の顔は、だけれどもすぐに綻んで白い歯を見せた。
「いや。そう言ってくれて、良かった。嬉しいよ」
「うん!」
私もそんな彼ににっこりと微笑んだ。
いちの元に来た時、これから始まるのは「偽りの恋人ごっこ」だと思っていた。
私は所詮、商品で、いちはただ商品を「購入」しただけ。だから、彼が私を「人型」として扱っても何ら構わないはずだった。
なのに、今日……「刻印」を追う彼の視線に気付いた時、私はどうしても、彼に「人型」だと思われたくない。何故だか、強くそう思ったんだ。
私のそんな想いを、彼は明るく受け止めてくれた。いや、内心では複雑な想いを抱えていたのかも知れないけれど……そんなことは微塵も口には出さずに、私をデートに誘ってくれた。
そして今、楽しくって幸せで堪らなくって……私は優しくて純粋ないちに、偽りではない想いを抱き始めているのだった。
だけれど……今、向かい合っているこの人の心の中には、絶対に忘れられない女性がいる。だから私は何だか堪らない気持ちになった。
「ねぇ」
「ん?」
私は恐る恐る、彼に尋ねた。
「いちは、私と一緒にいて楽しい?」
「楽しい!」
不安気な私にいちは即座に答えてくれて……そして、少し頬を染めて目を逸らした。
「楽しいし、幸せだよ。すっごく」
私は彼のその言葉が嬉しくて、だけれどもやっぱり、堪らなくくすぐったくなって。
「良かった」
一言そう答えた私の全身はかぁっと熱くなって、すっといちから目を逸らした。
そんな私を見る彼の口から、嘆息のような呟きが漏れた。
「綺麗……」
「えっ?」
彼の言葉に振り返ると、ついさっきまで吸い込まれそうに青かった空は美しいオレンジ色に輝いていて。丁度、観覧車のてっぺんから見るそれは最高に綺麗だった。
「本当だ。夕陽、すっごく綺麗……」
その美しさに目を潤ませる私に、彼は「違うよ」と言って席を立った。
「えっ?」
再度振り返っていちを見た私に、彼は顔を近付けた。
「夕陽に照らされたれいが、すっごく」
次の瞬間、私の唇に柔らかな彼の唇が重なって。このまま時間が止まって欲しい……そんなことを願う私は、体の奥からとろけてしまいそうなくらいに幸せだったんだ。
『デートに行こう』
その言葉がいちの口から出て、私の心臓は跳ね上がった。
恋人同士がするというそれは、楽しくってワクワクしてて、甘い。私はデートしたことはないけれど……本とかを読んで抱いていたイメージはそうだった。
「れいはどこに行きたい?」
そう聞かれて、私は迷わず「遊園地!」って答えた。
遊園地なんて本当は行ったことはなかったんだけれど……デートでのお決まりのコースだということは知っていて。私達が自然に恋人同士でいられる場所だと思ったから、どうしても、いちとの初デートで行きたかったんだ。
そんな私に、いちはにっこりと白い歯を見せて頷いた。
精一杯『恋人同士』でいようとする私を受け入れてくれる彼のそんな表情に、私はまた心をときめかせてしまったのだった。
*
「あれは……」
「観覧車っていうんだ。この遊園地の全体を見渡せるよ」
「そっか。あれが観覧車なんだ」
いざ遊園地に着いてみると、私はやはり、初めて見るものばかりで、いちに教えてもらうばかりだった。
周りのカップルは私達みたいなことはなくって、彼氏も彼女もとっても楽しそうに笑い合っていて……やっぱり私は、普通の女性とは違うんだ。
そんなことを考えて、落胆の溜息が口から漏れそうになっていた時だった。
「なぁ、れい。メリーゴーランドに乗らない?」
「えっ、メリーゴーランド?」
「うん。ほら、あれ……お馬さんが上下に揺れながら回ってるだろ」
「あ、あれ? うん! 楽しそう!」
本で見たことがある。それは、小さな子供達が楽しそうに乗っている、メルヘンチックな乗り物で……いつか乗ってみたいって、ずっと思ってた。
周りのカップル達はもっと大人向けの絶叫マシンに列を作ってならんでいたけれど、私はそんな恐い乗り物よりも、笑顔で楽しめる素敵な乗り物の方に憧れていて。いちがメリーゴーランドを提案してくれて、とっても嬉しくってワクワクした。
「ほら、れい。跨って、棒にしっかりと掴まって」
「えぇ……」
「僕も隣の馬に乗るから、安心して」
「そうね。ありがとう」
それは、子供でさえも普通に乗っているものだけれど、初めて乗る私はやはり緊張した。だけれどもいちは、私の手を取って優しく乗せてくれて、隣のに乗って微笑みかけてくれて……恋人って、彼氏って、こんなに優しくて温かいものなんだ。私の心はじんわりと熱くなった。
パイプオルガンから流れるようなメルヘンチックな音楽とともにメリーゴーランドが回り始めた。隣の馬に跨ったいちは、とっても楽しげに笑っている。そして周りの子供達の楽しげにはしゃぐ笑い声が聞こえるとともに、私の心もまるでくすぐられるように、口からは自然に笑い声が漏れた。
「あはは、あははは!」
今まで作り笑い……偽りの笑いしかしたことがなかった私だけれど、何だかとっても温かくって、くすぐったくて。
楽しいって、こんな感じなんだ。人型の私は、初めてその感情を理解した気がした。
「次、観覧車に行こうか」
いちは、初めて遊園地に来た私を気遣ってか、優しくて穏やかなアトラクションを選んで手を引いてくれる。
私にとってはいずれも初めての感情なんだけれど……私はきっと、彼の何気ない優しさが、嬉しくって楽しくって幸せで堪らなかった。
だから、観覧車の中で向かい合うと、私は何だか体の中がむず痒くなって、つい彼から目を逸らしてしまった。すると、彼は不安そうに眉を下げた。
「なぁ、れい」
「えっ?」
「僕とのデート、楽しい?」
そんな彼を見ていたら、どういうわけか、私の顔は自然に綻んだ。
「えぇ、楽しいわ。楽しくって、幸せで、仕方ない」
このデートでは初めて体験すること、初めて抱く感情ばかりで。私の口からはまるで自然に、その言葉が出た。
すると、彼は少し目を見開いた。
「やっぱり、れい……似てるな」
「えっ?」
不思議に思う私を見る彼の顔は、だけれどもすぐに綻んで白い歯を見せた。
「いや。そう言ってくれて、良かった。嬉しいよ」
「うん!」
私もそんな彼ににっこりと微笑んだ。
いちの元に来た時、これから始まるのは「偽りの恋人ごっこ」だと思っていた。
私は所詮、商品で、いちはただ商品を「購入」しただけ。だから、彼が私を「人型」として扱っても何ら構わないはずだった。
なのに、今日……「刻印」を追う彼の視線に気付いた時、私はどうしても、彼に「人型」だと思われたくない。何故だか、強くそう思ったんだ。
私のそんな想いを、彼は明るく受け止めてくれた。いや、内心では複雑な想いを抱えていたのかも知れないけれど……そんなことは微塵も口には出さずに、私をデートに誘ってくれた。
そして今、楽しくって幸せで堪らなくって……私は優しくて純粋ないちに、偽りではない想いを抱き始めているのだった。
だけれど……今、向かい合っているこの人の心の中には、絶対に忘れられない女性がいる。だから私は何だか堪らない気持ちになった。
「ねぇ」
「ん?」
私は恐る恐る、彼に尋ねた。
「いちは、私と一緒にいて楽しい?」
「楽しい!」
不安気な私にいちは即座に答えてくれて……そして、少し頬を染めて目を逸らした。
「楽しいし、幸せだよ。すっごく」
私は彼のその言葉が嬉しくて、だけれどもやっぱり、堪らなくくすぐったくなって。
「良かった」
一言そう答えた私の全身はかぁっと熱くなって、すっといちから目を逸らした。
そんな私を見る彼の口から、嘆息のような呟きが漏れた。
「綺麗……」
「えっ?」
彼の言葉に振り返ると、ついさっきまで吸い込まれそうに青かった空は美しいオレンジ色に輝いていて。丁度、観覧車のてっぺんから見るそれは最高に綺麗だった。
「本当だ。夕陽、すっごく綺麗……」
その美しさに目を潤ませる私に、彼は「違うよ」と言って席を立った。
「えっ?」
再度振り返っていちを見た私に、彼は顔を近付けた。
「夕陽に照らされたれいが、すっごく」
次の瞬間、私の唇に柔らかな彼の唇が重なって。このまま時間が止まって欲しい……そんなことを願う私は、体の奥からとろけてしまいそうなくらいに幸せだったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる