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1-いち-
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◆
正直、また人型を迎える気はなかった。
れいを失った時のあの絶望と自責、後悔……そんなのはもう二度と、味わいたくなかったから。
だけれども、れいはまだ死んではいなかった。臓器を僕に提供して研究所に回収されて……記憶は全て失うけれど、また生命を再生することはできる。そのことを聞かされた時……「れいにまた会いたい」僕はそう、強く感じた。
回収した人型を再生して、元の人間の元に返す……それは研究所にとっても、極めて異例のことだった。でも、僕はそれを強く求めて。研究所としても、興味深いデータの一つになると踏んだのだろう。再生されたれいはまた、僕の元へ戻って来ることになったのだ。
れいが戻って来る……考えただけで嬉しくて幸せで。その前日から、僕は寝付くことができなかった。
再生された人型は、使用期限は半分ほどになるとも聞かされた。だけれども、僕はれいに「れいは回収される前から自分の恋人だった」と明かすつもりはなかった。彼女を不必要に混乱させたくはなかったし、それに……れいなら、自分に記憶がないことで、自身を責めてしまいそうだと思ったから。
僅かな時間……一年半という、本当に僅かな時間だけれど、僕は彼女と一緒に過ごして、お互いに忘れられない思い出を作っていきたい。そう思って、僕はまた、彼女を迎えることにしたのだ。
「お腹が空いてない?」
僕が尋ねると、彼女は
「はい。いちさんも……ですよね? 私、何か作ります」
と言って、キッチンへと立とうとした。
「ちょっと、待って」
僕は彼女を制した。
「今日は僕が作ってるんだ」
「えっ……」
彼女は目を丸くしたけれど……僕はキッチンのフライパンに入っていたカレーピラフをお皿に入れて、テーブルへと運んだ。
「そっか、これ……ここに来た時から、いい香りがすると思った。これだったのね」
「うん。食べてみて」
以前……回収される前のれいが初めてこの部屋に入った時には、僕は冷蔵していたカレーピラフを電子レンジで温めて彼女に出した。でも今日は、是非とも彼女に作り立てを食べて欲しくって。彼女の来る時間から逆算して、作っておいたんだ。
れいがスプーンで、カレーピラフをすくって口に運んだ。
どうだろう……目の前のこの娘のお口に合うだろうか?
そんな不安が頭をかすめた。
玲奈の好きだったカレーピラフはれいも大好物だったけれど、もし口に合わなかったら……れいは、あの日のれいとは違ってしまっているのかも知れない。
そんな不安が僕の中で悶々と渦を巻き始めていた。
だけれども……
「うそ……美味しい。すっごく美味しい……」
彼女の目にはじんわりと涙が浮かんで……その瞳は微かに揺れた。
「本当?」
あの日と同じ彼女の言葉に、僕の中にも熱いものが込み上げて……それは温かい涙となって、視界を滲ませた。
「えぇ。舌がとろけそうで、優しくって。こんなに美味しいもの、生まれて初めて食べるのに、何だか懐かしい……不思議な感じ」
「良かった……」
僕は込み上げる自分の想いを抑え切れなくなって、れいを抱きしめた。彼女はそんな僕を優しく受け止めてくれた。
僕は思い出していた。本当に『初めて』れいがこの家に来た日のこと。
あの日はお互い、ぎこちなくて。れいは恐縮したように固くなって、敬語を話していた。だけれども今日のれいは、まるで打ち解けたかのように、スムーズに僕と会話してくれて。こんな僕を違和感なく受け入れてくれていて。僕はそれが、とても嬉しかったんだ。
正直、また人型を迎える気はなかった。
れいを失った時のあの絶望と自責、後悔……そんなのはもう二度と、味わいたくなかったから。
だけれども、れいはまだ死んではいなかった。臓器を僕に提供して研究所に回収されて……記憶は全て失うけれど、また生命を再生することはできる。そのことを聞かされた時……「れいにまた会いたい」僕はそう、強く感じた。
回収した人型を再生して、元の人間の元に返す……それは研究所にとっても、極めて異例のことだった。でも、僕はそれを強く求めて。研究所としても、興味深いデータの一つになると踏んだのだろう。再生されたれいはまた、僕の元へ戻って来ることになったのだ。
れいが戻って来る……考えただけで嬉しくて幸せで。その前日から、僕は寝付くことができなかった。
再生された人型は、使用期限は半分ほどになるとも聞かされた。だけれども、僕はれいに「れいは回収される前から自分の恋人だった」と明かすつもりはなかった。彼女を不必要に混乱させたくはなかったし、それに……れいなら、自分に記憶がないことで、自身を責めてしまいそうだと思ったから。
僅かな時間……一年半という、本当に僅かな時間だけれど、僕は彼女と一緒に過ごして、お互いに忘れられない思い出を作っていきたい。そう思って、僕はまた、彼女を迎えることにしたのだ。
「お腹が空いてない?」
僕が尋ねると、彼女は
「はい。いちさんも……ですよね? 私、何か作ります」
と言って、キッチンへと立とうとした。
「ちょっと、待って」
僕は彼女を制した。
「今日は僕が作ってるんだ」
「えっ……」
彼女は目を丸くしたけれど……僕はキッチンのフライパンに入っていたカレーピラフをお皿に入れて、テーブルへと運んだ。
「そっか、これ……ここに来た時から、いい香りがすると思った。これだったのね」
「うん。食べてみて」
以前……回収される前のれいが初めてこの部屋に入った時には、僕は冷蔵していたカレーピラフを電子レンジで温めて彼女に出した。でも今日は、是非とも彼女に作り立てを食べて欲しくって。彼女の来る時間から逆算して、作っておいたんだ。
れいがスプーンで、カレーピラフをすくって口に運んだ。
どうだろう……目の前のこの娘のお口に合うだろうか?
そんな不安が頭をかすめた。
玲奈の好きだったカレーピラフはれいも大好物だったけれど、もし口に合わなかったら……れいは、あの日のれいとは違ってしまっているのかも知れない。
そんな不安が僕の中で悶々と渦を巻き始めていた。
だけれども……
「うそ……美味しい。すっごく美味しい……」
彼女の目にはじんわりと涙が浮かんで……その瞳は微かに揺れた。
「本当?」
あの日と同じ彼女の言葉に、僕の中にも熱いものが込み上げて……それは温かい涙となって、視界を滲ませた。
「えぇ。舌がとろけそうで、優しくって。こんなに美味しいもの、生まれて初めて食べるのに、何だか懐かしい……不思議な感じ」
「良かった……」
僕は込み上げる自分の想いを抑え切れなくなって、れいを抱きしめた。彼女はそんな僕を優しく受け止めてくれた。
僕は思い出していた。本当に『初めて』れいがこの家に来た日のこと。
あの日はお互い、ぎこちなくて。れいは恐縮したように固くなって、敬語を話していた。だけれども今日のれいは、まるで打ち解けたかのように、スムーズに僕と会話してくれて。こんな僕を違和感なく受け入れてくれていて。僕はそれが、とても嬉しかったんだ。
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