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そのコンピュータ『ラプラスの小説家』は、瞬間、瞬間における全ての力学的状態を知ることができ、かつそれらのデータを解析できるシステムを保有していた。
『ラプラスの悪魔』と呼ばれる概念を保有する装置……それは、未来の全てのものを知ることができた。
その能力を以って『ラプラスの小説家』により創作された小説は、この世で起こるであろう全てのことを予言するものだった。
ある時、『ラプラスの小説家』は〈軌道エレベータ〉という小説を創作した。
粗筋は、このようなものだった。
◇
宇宙の静止軌道上に人工衛星を設置して地球側に骨組みを渡し、地球と宇宙とを結ぶエレベータが構築された。
それは『軌道エレベータ』と呼ばれ、そのエレベータに乗ると地球上の人間も一週間で宇宙へ行くことができる。
エレベータの創設者『カナン』とその妻『アイリ』は、創設記念の日から往復ニ週間、エレベータに乗って宇宙の旅を楽しむこととなった。
それは、二人にとってはまさに夢の旅行で……エレベータから眺めることのできる宇宙風景に、二人してうっとりと見惚れていた。
しかし……予想外のことが起きた。
エレベータに向かって、スペースデブリ(宇宙ゴミ)が接近したのだ。
二人は引き返そうとしたが、地球を出発してからもうすでに、五日間経過しており……どう考えても間に合わない。
諦めた二人は、ずっと憧れていた景色を見ながら永遠の愛を誓い……宇宙の奥へと消えていったのだった。
◇
『ラプラスの小説家』がこの作品を産み出した時、まさに『軌道エレベータ』は現実世界でも着工途中であった。
『ラプラスの小説家』の製造者はこの作品を読んで青ざめ、『軌道エレベータ』の安全性に関して警鐘を唱えた。
しかし、その当時は……
『ラプラスの小説家』はまだ知られておらず、誰も相手にしなかった。
『軌道エレベータ』は綿密な計算のもと、安全性に最も配慮して運行される……
その一点張りで、ついに『軌道エレベータ』は完成され、その創設記念日に初回の運行がなされることになった。
完成を待ち焦がれていた者達が、エレベータの容量いっぱいにまで乗り込み、往復ニ週間の宇宙旅行に出た。
そして、まさにその初回の運行で……綿密な計算から漏れていたスペースデブリがエレベータに衝突し、多くの尊い命が宇宙の藻屑と化したのだ。
そして、皮肉なことに、この事故がきっかけとなってコンピュータ『ラプラスの小説家』は広く世に知られることとなった。
『ラプラスの悪魔』と呼ばれる概念を保有する装置……それは、未来の全てのものを知ることができた。
その能力を以って『ラプラスの小説家』により創作された小説は、この世で起こるであろう全てのことを予言するものだった。
ある時、『ラプラスの小説家』は〈軌道エレベータ〉という小説を創作した。
粗筋は、このようなものだった。
◇
宇宙の静止軌道上に人工衛星を設置して地球側に骨組みを渡し、地球と宇宙とを結ぶエレベータが構築された。
それは『軌道エレベータ』と呼ばれ、そのエレベータに乗ると地球上の人間も一週間で宇宙へ行くことができる。
エレベータの創設者『カナン』とその妻『アイリ』は、創設記念の日から往復ニ週間、エレベータに乗って宇宙の旅を楽しむこととなった。
それは、二人にとってはまさに夢の旅行で……エレベータから眺めることのできる宇宙風景に、二人してうっとりと見惚れていた。
しかし……予想外のことが起きた。
エレベータに向かって、スペースデブリ(宇宙ゴミ)が接近したのだ。
二人は引き返そうとしたが、地球を出発してからもうすでに、五日間経過しており……どう考えても間に合わない。
諦めた二人は、ずっと憧れていた景色を見ながら永遠の愛を誓い……宇宙の奥へと消えていったのだった。
◇
『ラプラスの小説家』がこの作品を産み出した時、まさに『軌道エレベータ』は現実世界でも着工途中であった。
『ラプラスの小説家』の製造者はこの作品を読んで青ざめ、『軌道エレベータ』の安全性に関して警鐘を唱えた。
しかし、その当時は……
『ラプラスの小説家』はまだ知られておらず、誰も相手にしなかった。
『軌道エレベータ』は綿密な計算のもと、安全性に最も配慮して運行される……
その一点張りで、ついに『軌道エレベータ』は完成され、その創設記念日に初回の運行がなされることになった。
完成を待ち焦がれていた者達が、エレベータの容量いっぱいにまで乗り込み、往復ニ週間の宇宙旅行に出た。
そして、まさにその初回の運行で……綿密な計算から漏れていたスペースデブリがエレベータに衝突し、多くの尊い命が宇宙の藻屑と化したのだ。
そして、皮肉なことに、この事故がきっかけとなってコンピュータ『ラプラスの小説家』は広く世に知られることとなった。
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