ジェミニ 〜魂の契約者達〜

えいりす

文字の大きさ
70 / 226
第三章 王都への旅

70.指名依頼

しおりを挟む
翌朝、再びギルドへ集まった4人は早速新しい依頼が張り出されていないか確認した。

しかし、そんなに都合よく昨日の今日で新しい依頼など来るわけもなく依頼ボードは昨日のままであった。


「そう簡単にはいかないか」

「昨日の今日だもんね……さすがに依頼増えてないかぁ」

「そんなあなた達に依頼ですよ?」


後ろから急に声をかけられる。4人が振り向くとセラスが立っていた。


「あなた達おはよう。今日はあなた達4人に指名依頼が入っているわよ?」

「指名依頼?」

「おれたちを指名して依頼されてるんですか?一体誰から?」


エイシェルとアリスはランクもCに上がり、そこそこ依頼もこなして来たが指名を受けるほどとは思えない。
ニックネームが売れているアリスなら指名の依頼が来てもおかしくは無いのだが、今回は4人を指名との事だ。
そうなると、今までの依頼者の中に絞られる。
エイシェルが、そんな事を考えているとセラスから答えが伝えられる。


「依頼人はセルロって人からね。ほら、薬草を1時間以内にもってこいって依頼の人。気難しそうな人に見えたけど、わざわざ指名してくるなんてあなた達気に入られたのかしら?」


何故指名されたのか、考えれば理由はいくつか考えられるが推論に過ぎない。
指名依頼は当然指名されるのだから依頼も割高になる。それでも指名してきたのだ。
だが、4人にとってこの依頼は非常に助かった。
手頃な依頼の無いタイミングだったため今日は休みにしようかと考えていたところだった。


「どんな依頼なんですか?」

「鹿の角の納品ね。南西の山に鹿がいるから、その角を持って来て欲しいみたいよ。」

「南西の山……」


フルームは少し引っかかった。南西の山って最近どこかで見たかがしたのだ。
フルームが考えていると、そんな事は知らないセラスが依頼書を渡して来た。

描かれた内容はシンプルだった。
回復薬の効果を高める為に試行錯誤しており、鹿の角を試したいとのこと。

依頼内容を確認した4人はこれならば問題ないだろうと依頼を受ける事にした。
エイシェルが代表して依頼を受注する。
何事もなく受付証明書を貰ってエイシェルが戻ってきた。


「場所が少し遠いからしっかり準備していこう。帰る頃には夕方になると思う」


エイシェルがそう言うと4人はそれぞれ出掛ける準備をするのだった。
3人が準備している間にエイシェルはセルロの家を訪ね依頼を受け付けた旨説明した。
セルロはすぐに引き受けてくれた事に感謝し喜んだ。
途中あの娘にもよろしく言っといてくれと言われ、アリスが余程気に入られているんだなと実感するエイシェルだった。




準備を終えたら町の西側に集合する事にしていた4人。
女子3人が準備を終えて待っているとエイシェルが籠を背負いやってきた。もはや見慣れた光景である。


「お待たせ。セルロさんにも報告してきた。それじゃあ行こう」

「場所はここから南西にある山よね?結構漠然としてるけど場所はわかるの?」

「私達も西側ってあまり依頼で行かないから詳しくないわよ?」


出発しようとしたところで根本的な確認が入る。
そもそも依頼内容が大雑把過ぎて場所がアバウトなのだ。
すると、エイシェルがため息をこぼす。


「あのなぁ……おれが分かるからいいけど、分からないなら依頼受ける時にひとこと言ってくれ」

「ごめんごめん。でもさすがエイシェルね。……そう言えばあなた西の方から来てたわね」


アリスは自分が旅立った日のことを思い出していた。なんとなく西の方に存在を感じたのが懐かしく感じた。
そして、それはエイシェルも同じだった。


「そうだな……こんなに色々起きたのに村を出てからまだ1週間しか経ってないんだな……」


オージンが見送ってくれてから色々あったが、実はまだ1週間しか経っていないのだ。村で過ごしていた頃は1週間なんてすぐに過ぎた印象だったが、ここ1週間は濃厚な時を過ごしており、時間の進むスピードが遅く感じていた。


「この前も話したけど、本当にここ数日濃厚よね」

「私は楽しいから濃厚でいいけどねー」


フラムもフルームも同意見だった。






そんな他愛もない話をしながら歩くこと約2時間。目的の山に到着した。
例の如くアリスは疲れていた。


「……ねぇ、エイシェル……?こんなに遠いなら……始めに言ってくれない……?」

「あれ?帰りは夕方くらいって言った気がするが……」

「山までが遠すぎるってことよ!普通時間がかかるって山に入ったり鹿を探す時間のことでしょ!それに、何度もスルーしたそれっぽい山にはいないの!?」

「いやいや、町に面してる南の山じゃないんだからこれくらいはかかるって。むしろ近い方だと思うぞ?」

「…….そうなの?」


あまりの距離にアリスが怒るが、エイシェルにとってはむしろ近い方だと感じていた。
そもそも時間がかかったのはアリスのスピードに合わせていたことが大きい。
エイシェルの話を聞いたアリスは半信半疑でフラムとフルームを見た。


「そこで私達を見られても……まぁ、エイシェルの言う通り、山に入るんなら近いんじゃないかしら?それこそ本当なら山に入るのって何日もかけて行くものだし」

「私達が山で修行させられた時は行くだけで3日かかったよ?」


フラムとフルームの回答にアリスはカルチャーショックを受けていた。
 
アリスにとっての山はイノシシを狩った町に面したあの山のイメージだ。そのため、町から南西の山と言われても少し歩けば着くだろうくらいに思っていた。
見積もりが甘くなるのも仕方がなかった。


「ごめんなさい……普通はそんなにかかるのね……勉強になったわ」

「分かってくれたなら良かった……。ただ、本当にキツかったら言ってくれ」

「うん、ありがとう」


アリスの機嫌が戻ったところで、鹿を探しに山へ入るのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...