運命には抗えない〜第一幕〜

みこと

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 ちゅっ、ちゅう。

「あのっ!これじゃあ話が出来ませんよ。」

 レオナルド様がちゅっちゅっして来るもんだから全く話が進まない。
 僕たちは2人でレオナルド様の部屋にいた。レオナルド様はソファーに座り膝の上に僕を乗せてぎゅーっと抱きしめてくる。

「はぁ。可愛い。良い匂い。ずーっとこうしたかった。」

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅう。キスして頸に鼻を擦り付けて来る。今まで苦しかったことを思うとあまり強くも言えない。されるがままだ。

「ぼくの知り合いにカナン様と言う人がいるんです。世界中を旅して歩いていたみたいでとても物知りなんです。慈悲深く素晴らしい人なんですよ。カナン様なら何か知っているかもしれません。」

「カナンは男?アルファ?そのカナンとルーファスの関係は?ルーファスはカナンが好きなの?」

 ガバッと顔を上げたかと思ったらトンチンカンな質問をしてきた。

「ベータの男性です。兄の友人ですよ。尊敬はしてますが好きとかそんなではありません。」

 ふーん、と言ってまたキスしてくる。そのまま首筋や頸を舐めて甘噛みする。

「手紙を書きますので二人で会いに行きませんか?」

 僕はカナン様に手紙を書いた。
 近況の報告とカミュの病気の事。聞きたいことがあるので出来るだけ早く会いたいとお願いした。
 レオナルド様は手紙を覗き込んでいる。不満げな顔だが自分の事なので仕方ない、と言った様子だ。
 僕はあの日からずっとレオナルド様の側にいる。最初は慣れなかったがロイやハンナも出来るだけ二人きりになれるように配慮してくれた。
 それはその…キスしなければならないからだ。しなければって言うのもおかしな言い方だか、キスにどれくらいの効力があるのか分からないので極力一緒に居て暇さえあれはキスしている。
 本当にそんなに必要かな、と思う時もあるけどレオナルド様は絶対に必要だと主張された。

 五日後にカナン様から返事が届いた。見慣れた癖のある字はカナン様のものだ。嬉しくなって手紙を開けて読んでみる。みんな元気にやっているようだ。
 カナン様の手紙にはカミュの件を誉めて下さっていて薬草の苦味を取るには砂糖よりもハチミツの方が良い事を最近発見したと書かれていた。暫くは王都にいるのでいつでも訪ねてくるようにとの事だった。
 レオナルド様は手紙を読んで直ぐにでも行こうと、ロイとハンナを呼んで王都に行く準備をさせた。仕事の調整があったのです出発は二日後になった。
 カミュの件について聞かれたので詳しくお話しした。そして靴擦れが酷くて勝手に馬車を使ってしまった事を詫びた。

「ルーファスが謝る事なんてない。私の方こそ皆に謝罪しないといけないな。ルーファスが優しい人間で良かった。私を見捨てないでいてくれて良かった。この事が片付いたら直ぐに結婚式を挙げようね。」

 レオナルド様が優しく僕の髪を撫でてくれる。
 結婚しようと言ってくれた。でも僕は大事な事を彼に言っていない。

「レオナルド様との結婚は嬉しいんですが、僕には、その、あの、発情期がまだなんです。」

 知ってるよ、と言って髪を撫でながらキスしてくる。

「こ、子どもが出来ないんです。」

 せっかくレオナルド様の運命の番だと分かったのに僕は発情期も来ない出来損ないなのだ。涙がポロポロと溢れた。

「私はルーファスと一緒に居たい。ルーファスがどうしても、と言うなら養子を貰えばいい。ルーファスと一緒じゃなければ何の意味もないんだ。」

 愛してるよと言って優しく抱きしめてくれた。


 僕たちは王都に行く準備をした。ロイとハンナも付いてくるみたいだ。
 
 支度をして玄関に行くと既に皆んなが集まっていた。

「お待たせしてすいません。」

 レオナルドが僕を見てギョッとした顔をしている。
 ヘンリーに借りた外套のせいかもしれない。
 外はどんよりとしていて今にも雪が降り出しそうなくらい寒い。ヘンリーにお願いして借りてきたのだ。

 レオナルド様はロイを呼び付け何やら話しをしている。暫くするとロイが何かを持って現れた。

「外套は私のを着なさい。それはヘンリーに返そう。ヘンリーも寒いとかわいそうだからね。」

 僕はヘンリーの外套を脱がされてロイが持ってきた物を羽織った。サイズがかなり大きいがその外套は貂の毛皮で出来ていてすごく上等なものだ。軽いのに暖かい。

「こんな上等な物…。汚してしまうかもしれません。」

 構わないよ、と言って優しく抱きしめてキスしてくれた。最近では人目も憚らずキスしてくるのでちょっとだけ恥ずかしい。

 二台の馬車で王都に出発した。前の馬車にロイとハンナと荷物で僕たちは後ろの馬車だ。この間勝手に乗った馬車よりもずっと上等な馬車で座る所はクッションでフカフカだ。レオナルド様は僕の横に座って膝にブランケットをかけてくれた。
 半年ぶりの王都にウキウキしてしまう。今回はカナン様に会うだけでなく僕の実家にも行く予定だ。レオナルド様が僕の両親に挨拶に行きたいと言ってくれた。母に手紙を出したので準備してくれているはずだ。
 それからもう一つ、僕を王都にいるバース専門医に診てもらう。レオナルド様の知り合いの医者なので予約しなくても診てくれるらしい。レオナルド様はこのまま発情期が来なくても結婚するつもりだと言ってくれたが念のため診てもらおうという事になった。
 僕からはほんのりと良い匂いがするらしい。スズランの花と林檎が混ざった爽やかな匂いみたいだ。今もレオナルド様は僕の頸に顔をくっつけて匂いを嗅いでいる。

「あぁ、良い匂いだ。発情期がなくてもこれで充分だよ。」

 スリスリと頸に顔を擦り付けて舐めたりキスしたりしている。僕はレオナルド様がそれで良いなら良しとした。

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