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第一章
~10~
しおりを挟む私が転生を果たしたこの世界、この時代はそれなりに悪くはないといったところか
魔法という概念が存在し、精霊信仰が続いているにも関わらず文明の発展もなされている
港町の街灯はガス灯が主流で蒸気船もあり、電気や電球も普及こそしていないがそれも今だけの事となるだろう
別の異世界でいうならば1700年中期から1800年初期といった所だろうか、しかし医療に関してはやたら遅れている気がするのはやはり魔法の存在がある為だろう。薬剤等市場に存在すらしていないくらいだ。
別にそんな事興味もないのだが
私が転生した理由は別に転生して新たな生き方を楽しむ為等ではない
そもそも私はあの時咄嗟に、それこそ後先考えずに勢いだけで転生魔法なんぞを使ったのだ。成功しようがしまいがそれすらもどうでもいい事だった。
しかしこうして転生は成功した。
私がこうして生きているのなら、生きているうちにやりたい事をしなければ気が滅入ってしまう。生きているから生きるだけなどと、義務感だけで存在し続ける事は″生きている″とは言えないと私は思っている
だからこそ、私が転生をする前から抱き続けていた疑問
″私という存在は何故在るのか″
それを人の目線から調べたい為に三歳の頃から動いていたのだ。
転生をする前からもずっと調べ続けた事だ。人に転生したからといって解答が得られるとは思っていない
しかし何もしないのは私の気が済まない
国内で調べられる事は粗方調べ尽くした。
精霊や魔法に関する本や論文は全部読んだし国内にある精霊と関わる場所にも殆ど行きつくした。
後は国外だけ
しかし私が国外に旅に出たいと行った所でそう簡単にはいかないだろう事はわかっていたからこそ前準備をしていたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
それは私が学院を卒業してすぐの頃
物心ついた頃から父について回っては国の経済等に助言をしてきた功績のお陰で私は協力者として周囲に認められていた
そしてその時に国が管理する警察機関の立ち上げの為に助力していた。
国内にはそれぞれ土地の領主となる貴族が自警団を雇っているのが殆どで、国内で起こった犯罪全てを把握出来る組織が無かった。
良くもまぁこんな状態で安定した政治が出来ていたものだ。と感心してしまうくらいには酷いものだった。
そこで国が主体となった警察機関を作り上げる為の活動の一環として王宮兵士達等への教育を行っていたのだった。
こうした国への貢献活動において私は荒稼ぎしている。
国に貢献すると褒奨金が入るのだ。
私個人が王宮から貰った褒賞の数はフロイライト家歴代最大数となり、その褒奨金ははっきり言ってかなり″美味しい″ものだ。
資金稼ぎの為、それはもう馬鹿みたいに国に貢献しまくっていた訳だ。
そしてその出会いはとある日に行った兵士達の実践訓練の時の事
「珍しい、人狼の類か?」
「・・・なんで」
「なんだ、言いたい事があるならはっきり言うと良い」
それは偶然のようなものだった。
しかし私は偶然と言うものはあまり好かない、この世で起こりうる全ての現象には必ず理由や原因があるものだと思っているからだ。
これは私の勝手な思い込みのようなものでしかないが
たまたまその日、王宮兵士達による人身売買を行っている犯罪組織への突入作戦(実践訓練兼)が行われる日であった事
たまたま私が兵士達に犯罪組織を相手取った際の教育をしていた事
たまたま私がその場に居合わせた事
たまたまその場所に″彼″がいた事
この巡り会わせはきっと″偶然″等という陳腐なものでなく、なるべくして成ったものだろうと私は思う
この世界に魔法はある。
しかしこのような者まで存在するとは面白い
「物語ではありがちなベターな存在だが、うむ、中々どうして悪くない」
「・・・・・」
こちらを睨みつける目は威嚇しているように見えるが、殺気も何も感じない所をみるに脅しているつもりだろうか
「名前は何と言う?少年」
「ねーよ(ボソッ」
「ふむ、ねーよと言うのか?ではねーよくん、私と少し話をしようか」
「ちっげぇよ!ねぇんだよ!」
「名がないのならそう言えば良かったではないか」
「ミーシャ様。こちら掃討終わりました。彼らはどうするおつもりで?」
「御苦労様、彼らは保護し住まいを与えてやると良い、多少の生活費の援助はしてやるべきだろうな。しかし甘えさせてはならない、援助金は期間を設け後は学院にでも放り込んでおけ
ああ、そうそうこの少年は私が雇うとする。良いな?」
「はあっ!?」
「畏まりました!」
「さて、感涙に咽び喜ぶといい少年。私が君を雇おう、給料は弾むぞ?」
「なんでオレがそんなっ!」
「良いのかね?君のその身なり、力を抑えられないのだろう?そのような人離れした姿でどう生きるつもりだ?野生にでも帰るつもりかね」
彼の姿は『人狼』というに相応しいものだった
無造作に伸ばしたままの灰色の髪から大きな耳が覗き、破れた服からも薄汚れた毛が出ている、同じ色の尻尾まで丸見えだ。
それこそ顔が人間めいていなければ、人の言葉を喋らなければ不気味な化け物そのものだろう
「・・・・・・・ちっ」
「君を王宮兵士達に預けたとて、彼らも困るだろう
私は丁度個人的に従者を欲しいと思っていた所だ。
これも何かの縁、どうかね?
職と住処が一度に手に入るぞ?」
「・・・・断るっつったら」
「ならば仕方ない、君を野生に帰し別をあたる」
「ほんとに断るつもりかよ!そこは拒否権はねぇとかいうもんじゃねぇのかよ?!」
「そんな非人道的な言葉を口にすると思うかね?私を見くびって貰うのは困るな、私はフロイライト侯爵家の長女だ。家の恥になるような言動はせんよ」
「・・・・こうしゃくけ、って、あんたエラいのか」
「王宮兵士達を使えるくらいには権限があるな」
「・・・・・・わあったよ、あんたに雇われてやる!」
「ああ、よろしく被雇用者くん」
その出会いは決して良いものとは言い難いだろう
薄暗い部屋の中、片方は数ある檻の中に閉じ込められたままの状態で、片方は気絶した犯罪者の上に足を乗せたままの状態だ。
しかし私には好都合の、まさに運命と言わんばかりの出会いだった。
こいつを育てあげ、私の旅の従者として働いて貰う
あの過保護な父だ。
私が旅に出る等と言えば無駄に金をかけメイドや執事を着いて行かせるだろうし、下手をすれば着いていく等と言い出しかねない
最低限父が納得いく程度には″躾″なければな
「フフ、確か名がないのだったな。私が君に名を与えよう
ポーン。はどうかね?私の駒となるからな」
「はあっ?!それはねぇだろっ!」
「なんと、ナイトやビショップは絶対ないな。せめてルークだろう
ではルーク、着いてこい」
「・・・あんた、性格悪いのな」
「ミーシャと呼べ、飼い主の名くらい覚えておくものだぞ」
「わあぁったよ!」
こうして私は旅の従者候補を手に入れたのだった。
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