転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

文字の大きさ
50 / 84
第一章

~49~

しおりを挟む


■トリップ者



車に轢かれた。と思った
痛みは無く、恐る恐る目を開けたら知らない場所だった。

白い壁に柱、所々欠けていたり汚れているが何処か荘厳な感じの印象を受ける。
頭に浮かんだのはギリシャにあるという神殿のイメージだったが私は海外に行った事は1度も無い

誰も居ない、私一人
そうしてようやく恐怖というものを感じ、動こうとした脚が動かなくなってしまった。

誰か見つけてはくれやしないか
そう思ってただただその場に立っているとコツコツと足音がした。
その方向をじっと見つめていると人と目が合う。

水色の髪、銀の瞳、美しいその造形の人を私は知っている。


「あ・・・あの・・」

「まさか・・黒髪の聖女・・・?そんな馬鹿な・・」


ああ、その台詞も私は知っている。
これは間違い無くアレだ。
乙女ゲームに私は転生?してしまったのだ。





これが転生と言うものなのか疑問はある。
しかしゲームの導入からしてそうとしか言いようが無い
『奇跡の雫~アナタだけの恋物語~』の何時だったかのアップデートで追加された主人公ヒロインは現代からのトリップ者で、車に轢かれたと思ったら見知らぬ神殿のような場所に居た。
そこを攻略対象者の一人、神官ならぬ精霊官のミルウェッチ・クロウラーに発見され
かつてこの世界を救ったとされる聖女と同じ見目をしてる事からこの世界に危機が訪れようとしており、それを防ぐ為に神が遣わした聖女様なのでは、と騒ぎになる。
そしてその通り、ヒロインは次から次へと未来視のような物を見ては国を襲う未曾有の大災害を事前に防ぎ
多くの人から讃えられ、そして想い人と結ばれるのだ。

こんな事があるのだろうか
いや、実際に目の前で起きている事は紛れもない事実だ。
私はこの物語の主人公ヒロインになったのだ!

私の胸は興奮で一杯で、半ば夢心地の中プロローグを済ませた。
懇切丁寧に、この国の礼儀を知らないので御迷惑をお掛けすると思いますが、帰る方法も知らないのでお世話になります。と深く90度に腰を曲げ頭を下げれば流石は王様、そう硬くならなくても良いと心良く受け入れられた。
そして、

ああ、やっぱり良い。
古参にして王道中の王道、レオ様はやっぱり期待通りに最高に格好良い。

『奇跡の雫』は最終アップデートで攻略対象者40人を超えた。かなりボリュームのあるゲームだ。
それこそ普通なら途中で萎えて止めてしまう人もいるだろう、私も途中でアンインストールしてしまおうかと迷いもした。
けれど私はやった。やり遂げた。
40人もの攻略対象者を全てクリアしてのけたのだ。
流石にガチ勢のようにやり込み要素までは出来なかったけど、それでも攻略対象者全員と結ばれた実績はかなり強みとなる筈
誰を攻略しようかと悩みに悩んで、結局は王道に落ち着いた。
おじ様キャラも天然キャラも悪くは無いけど、アップデートを重ねるごとに複雑な人間関係だとか、暗い過去だとか、そーゆー色んな意味で″濃い″キャラが増えてきた。
悪くは無い、悪くは無いんだ。
ただ、シンプルイズベスト。原点回帰。というもの
初期の古参組は普通に格好良くて、普通に良いキャラなんだよ。
私の最推しはワイルドで野生味のあるキャラだったりするが、確か彼はそれなりに難易度高めだった気がするし、隠しキャラなので他の攻略対象者を攻略しなければならなくなる。
攻略対象者を複数人侍らせるなんて事が出来るのか?まぁまず無理だろう
ここがゲームの世界とは言え、やり直しなんて効かないのだから本命を一本に絞ったほうが良い
そんな事を考えている時だった




「君は、私の好きな人に良く似ているよ」

「好きな人、ですか?」

「うん、情けない事に、私はその人に好かれてはいなくてね・・・・
ごめん、こんな事、君に話す事では無かったね」

「レオクリス様には、婚約者がいらっしゃるのでは?」

「・・・・・・」




返事は無く、レオ様は俯いていた。
元よりゲームとは所々キャラクターの性格やらなんやらが違っている所がある以上、下手な事をしてストーリーを大幅に改変するのは危険だ。
私に出来る事といえば第二ヒロイン用の大災害を防ぐストーリーをこなすくらいだった。
この国が災害に見舞われれば流石に自分自身の生活もかかっている訳なので無視する事は出来ない
そのせいで攻略が上手くいかなくても最悪ラストキャラがいる。
ゲームの40人を攻略し終えると攻略出来るようになる41人目のラストキャラはゲームを最初からやり直して誰も攻略しないで進めるとようやく攻略出来るようになる仕様だ。
私が上手く立ち回れず誰も攻略出来ずじまいとなったとしてもまぁ大丈夫だろうと楽観視している。
しかしまぁ、どういう事かは知らないがレオ様には婚約者が居ないのだろうか?そこもゲームと違うのか?
これはローズに話を聞くべき事だな、と覚えておくこととする



「大丈夫ですよ。レオクリス様はとても素敵な方ですから・・・でも、少し、羨ましいです。
私、レオクリス様の事、お慕いしておりますから」

「・・え・・・」

「私、諦めるつもりありませんから」


恋愛は押した者勝ちなのだ。
彼女がいるだとか関係ない、別れる可能性だってある
実際私は前の世界でそうだった。

だから、ここで引く訳にはいかないだろう
折角のチャンスを不意にするのは勿体ないと言うものだ。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...