転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

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第一章

~56~

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■ミーシャ



『こんな所にまで来ておいて・・・?』



余計なお世話だ。
しかしこのような形で再開するとは思ってもみなかったので驚いた。
この世界に精霊界へ通じる門があるなどと、世の中わからないものだ。


『帰っておいで、皆、君を心配している。
そのような肉体など、私達には不要だろう?』


ぐ、と
胸下を圧迫される感覚に背中の熱と廻された腕に意識を向ける

「ルーク、離せ、苦しい」

「おう、悪ぃ」


腕は離れたが息遣いが聴こえる程傍にいる


「お気遣い感謝する。
しかし人として産まれてきた以上、人としての義務を果たさなければ失礼というものだろう」

『・・・そのような面倒事を、積極的に受け入れるような君じゃあないだろう?』

「私が勝手に人に転生したのだ、私のした行いに私が責任を持たずにどうする」

『そう・・・いつ、帰ってくるんだい?』

「帰るつもりなど無いがな、この世界には寿命までは世話になる積もりだよ」

『・・・・そう、なら、今その肉体が生命活動を止めたら、帰ってきてくれるのかな?』

「その時は別の世界に転生でもするさ」


面白い
どうやらルークは精霊王に警戒心、いや、敵意すら向けているようだ。
歯向かった所で一方的な蹂躙にしかならないと解るだろうに


『何故、転生などと・・・』

「ノリと勢いだ」

『・・・・・・・・・』


顔を覆う仕草をする精霊王とは、随分と人間臭いものだ。
何やら背後からも呆れたような溜息が聴こえた気がしたが

『私としては、君に帰ってきて欲しいのだけれどね』

「そうか、勝手にそう思っていれば良い」

『私だけじゃない、他の者達も、皆君に会いたいと
・・・頼むよ。お願いだ』

「なら、私が″何物″であるのか、″何故″、″どのように″、産まれ、形造られたのか
その答えを教えて欲しいものだな」

『答えを知る事が出来れば、帰って来ると?』

「一考しよう」

『そこは、確約して欲しいのだけれどね・・・』




「やはり、知らないのか」

『ああ、私にも、解らない事だ。
おかしな事を言っているのは、重々承知の上だけれどね』

「″始祖の精霊王は万物を見透す″だったか、この世界の本にも書かれていたな」

『・・・・・・それでも、君は答えを探し続けるのかい?』

「勿論、私のしたい事だからな」

『無駄だと解っていて?』

「たとえ無駄でも、だ」


もはやここまでくると意地なのだ。
解ってはいる。
解ってはいても何もせずにはいられない
どうでも良いのだと、気にする必要は無いと、そう思えたのならもっと楽に在れたのかもしれないが
私はそうは在れなかった。

始祖の精霊王の知らない事など有りはしない
それなのに私の存在が何であるのかを知らないと言う。
矛盾している。

始祖の精霊王の知らない事を探すなど、到底不可能だろう事など解っていて、無駄な足掻きを延々と続けている
それでも良いのだ。
何もせずに無為に過ごすよりもよっぽどマシだからだ。

それに案外転生も悪くは無い
人間として産まれ、人間として生きる義務感はそれなりに充実しており、退屈を潰すのには丁度いい
与えられた役割を熟すというのは長い時間存在し続ける精霊モドキには良い刺激だったと言える
特に旅に出る前までの準備期間は充実していたと言える
結婚する前に私自身の自由に出来る時間を作らねばと必死になった、
ようやく旅の準備が終わり出発の時を迎えた時の達成感は気持ちの良いものだった。

そしてこれから未来、結婚をし、子供を産んで、未来の国王としての教育を施し、国母としての業務を勤め、
やがて年老い死んでいく
それに私個人の自由意思等は存在しない、
王妃と言う、母と言う、国母と言う、機関だ。
与えられた役割を熟す義務とはそういうものだ。
自身のやりたい事をやりたい様にやれるのは身分も何も関係ない市民くらいのもので
貴族に産まれた者は貴族として生きなければならない
それが侯爵家の産まれで、未来の王妃となる事が決定されているとなれば逃げ道などは無い
逃げる必要も無い、私はそれを受け入れたのだから
そう生きると自分で決めたのだ。
これが私の人生なのだ。と胸を張れるから良いのだ。

後はまぁ、死んだ後は適当にまた何処ぞの世界にでも転生するか
精霊界に帰るのは絶対に無しだ。



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