転生した精霊モドキは無自覚に愛される

suiko

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第一章

~78~

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◆ユキノ




───・・・──

・・・─────・・──



「なにやら騒がしいですね」

「え?・・・・・ホントだ」


進んでいる時こそ迷宮のように長く感じた道のりも、帰りは割と短く思える。
思っていたよりも呆気なく終わった魔物の大発生に少し物足りなさを感じてしまうのは平和ボケとしか言いようが無いだろう
私達以外の誰かの声が聞こえてくる、出口が近い


──・・・・・──・・か!

・・・──・・て!


言い争っているように聞こえる
いや、言葉の殆どは聞こえないのだけれど
声が二つあるのは確かだと思う

「えっ」
「ミルウェッチさん?・・・・・あ」



地下の暗い場所から、外の明るい場所に
じめっとした空気からの解放に息を深く吸う
明暗の差に少しチカチカした目はすぐに慣れ思ったよりも明るい外の景色を移しだす
そうして見えたのは異様な光景



ルークさんが、ミーシャを、
ミーシャの胸に、槍が刺さってる






人間、本当にショックを受けると声も思考も止まってしまうのだな。
なんて、現実逃避

だって、だって、
誰が信じられると?

″あの″ルークさんが、ミーシャを傷付けるような事をするなんて、それも、胸の真ん中に深く刺さった槍は明らかに生命を奪う目的にしか見えない
私の知っている人が、同じく私の知っている人を殺す現場に居合わせてしまった。







◆ミーシャ



何故王城の地下にあんなモノがあったのだろうか?
地下から湧き出てきた魔物、その原因を塞いで事なきを得たがやはり腑に落ちない
時空を超える『門』の魔法陣を見るのは初めてでは無い
いつだったか、国を離れて放浪していた時に砂漠に隠された精霊殿で、会いたくもない存在と出くわしたのだったな

基本、魔法陣を必要とする魔法は陣を破壊すれば無効化出来るものだ。
しかし『門』の陣は破壊する事が叶わなかった為、王城の陣も同じ物と考え塞いでおいたが、後でコンクリートで潰すなりする必要があるだろう
なんだったらあの地下空間毎埋めてしまえば良い


「汚れちまったな」

「うん?ああ、まあこんな服二度も着ることは無いからな。後で処分しよう」


外に出ると今の私の現状がはっきりと見える。
真白いウエディングドレスは全体的に地下の埃を被り、所々魔物の血で塗れている
そういえば今日は私の結婚式だったのだな。と今更ながら思い返す

家に帰るか、ライネルを探し合流するか、


「・・・・ミーシャ・・いやだ・・・ミーシャッッ!」

近くに転がっていたのだろうレオクリス・サズワイトがまたしても私に縋り付いてくる。
元婚約者のあまりの執着ぶりにドン引きだ。


「うん?」

痛い、熱い

「ミーシャ・・俺だけのミーシャ
誰にも、誰にも渡さない」



マジかコイツ

いかんいかん、冷静さを失ってしまったな。
腹を刺された。
二度、三度、執拗に
黙ってされるがままなのは嫌なのでレオクリス・サズワイトを魔力で軽く吹き飛ばす

「おま、大丈夫か?いや、平気そうだな」

「平気な訳無かろう。腎臓をやられた」


痛いし、傷は熱を持ってるかのように熱く感じるし、血も大量に溢れている。
自然と傷を治そうとして、止めた。


この世界で私が生き続ける意味はあるのか?

僅か二十年、されど二十年
私の探す答えはもうこの世界に居続けた所で見つかる事は無いだろう
充分では無いか

この世界を捨てて、新しい世界場所転生生まれしなおしても良いのではないか?


「・・・?おい、おいっ!?」

「なんだ」

「てめぇ・・・死ぬつもりかよ」

「だったら?どうする?」

「死なせるかよ。例え死んでもついてくかんな」


身体を押し倒される
碌に治療魔法も使えない癖に、何をすると言うのか
ルークが取り出したのは小さなアクセサリー

・・・?
ああ、そういえば、随分と昔、まだ私が子供の頃だったか
旅の資金稼ぎに色々と手を出していたが、その内の一つに内職めいた物も作っていたな。大した稼ぎも期待出来なかった上安定した収入源となる出版社が発足してそれ以来作っていなかったのだったか
そんな昔の物をまだ持っていたのか、と感心し、
いつだったかルークがそのアクセサリーで命拾いしただのと話した事があったのを思い出す。


『死んだと思ったら生き返ったんだよ。代わりとばかりにこれが壊れてた
お陰で助かったぜ』
そういって見せてきたバラバラになった石やらチェーンやらの残骸



それで、私を殺して黄泉返らせると?
イカれている。

私が作った物が私に作用する確証も無ければ、そも死人を生き返らせる等魔法を超えた所業だ。
魔法は万能では無い、死んだ生命を黄泉返す等出来よう筈が無いのに


「ルークさんっ!!?何をしてるんですかっ!」

「ああ?丁度良い。
おいライネルそこに転がってる兄貴見張っとけ」

「ミーシャは、なんで、そんな
すぐに治癒魔法士を呼んできます!
ルークさん!ルークさん何をする気ですか!!」

「うるせぇなぁ」


私の上で喚き散らさないで欲しい、見苦しい


私がここで死んだら
ライネルと私との結婚記念日が私の命日となる訳だが、ライネルの事だ。きっと私よりも良い人と出会える事だろう
ルークは、まぁ間違いなく私の後を追うのだろうな。私の転生に付いて来れるとは到底思えないが、何かしらの奇跡でも起きて私の元へと来たならばそれはそれで面白そうだ。


「ミーシャに何をするつもりですか!?速く治療をしないとっ!
ルークさん!!待って!」

「邪魔だ。退け」


ルークの腕にしがみつき止めようとするもあえなく腕力のみで振り払われるライネルをただじっと見ていた。
ルークが右腕を高く上げ、槍先が私の胸へと落ちてくる。


トッ


思っていたよりも案外軽い音と衝撃
痛い筈なのに余り痛く無い


死とはこんなものなのか







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