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第一章
~77~
しおりを挟む道が三つに別れている。
いや、正確には道は二つ、真っ直ぐ進む正面の通路と、左へ曲がる通路と、その少しだけ先にある、崩れた壁に空いた穴
魔物はいくらか数が少なくなった気はするけれど、それでも二、三匹くらいづつ暗闇の先からこちらへと走ってくる。
「どちらに?」
「ごめんなさい、見えてないの」
私の予知能力は見える時と見えない時がある
明後日の夕飯の光景だとか、遠くの山の土砂崩れの瞬間だとか、映像が降りてくるような感覚
だから自分の知らない場所だとか、知らない人だとかが見える事もあって大して役に立たない事が多い
見えるモノも必ず私が見たいモノが見える訳でも無い
だからどの道を進むのが正解なのかもわからない
「二手に別れるのは、危険ですね」
「でも、両方から来てます」
暗闇から白い影が迫ってくる
それを事も無げに魔法であしらっている
「片方に進むとして、もう片方から来た魔物に後ろから挟まれる可能性もありますし、外に出られる可能性も・・」
「なら結界を張って通路を閉じれば良い」
左側の通路と壁に空いた穴に半透明の結界が張られた
「入口も閉じている。安心して進むと良い」
「・・・負担が大きいのでは、」
「夕方までは持つ、心配は無用だ」
このチートめ
思わず顔を顰めるがすぐさま気を引き締め真っ直ぐの道を歩く
壁に空いた穴をチラリと除くと光一つ見えない暗闇
私とマルクスくんの持つ電池式ランタンのみが周りを照らしている
王城の地下にこんな場所があったのか、と思うほどには年季の入りすぎた装飾の一つも飾られていない廊下
しばらく歩くとまた分岐、また分岐
十字路であったり丁字路だったりとその度にミーシャが結界を張って残りを塞いでいく
歩いているとミーシャの張った結界に当たる事もあるので頭の中でマッピングしながら手当り次第空き部屋を潰していく
「ここも魔物が数匹だけ、ですね」
「まるでダンジョンね・・」
魔物を倒しながらの地図埋めなんてダンジョンゲームさながらだ
ボタン一つで地図が見えるなんて機能は勿論無いので地道で時間もかかる、地下なので今が何時頃なのかもわからない
マルクスくんのランタンで照らされた部屋の中に『ソレ』はあった
この地下ダンジョンの多分一番奥の部屋、他に回ってきたどの部屋よりも広く、装飾柱が道を作るように立っている。
「あれは・・・」
魔法陣だ。
キラキラと緑色の光を放つそれを私は知っている
ゲームでも出てきた。
魔法陣の中から姿を現す魔物達
一直線にこちらに向かってくる
ワラワラとまるで近くに敵が現れたのを知覚したとでも言わんばかりに大量の魔物が波のように押し寄せる
「っく・・・!」
「づっゔ・・!」
「ミルウェッチさん!ギラジュくん!」
役割上理解していても、それでも魔物の攻撃を受け、傷付き血を流すミルウェッチさんとギラジュくんの姿にショックを受けてしまう
目線がそっちにいってしまい、ふと近くに獣の気配
「・っあ」
大きい、爪が
キンッ
「ユキノさん!」
痛く、ない
何があったのか、理解出来ない
目の前に迫ってきた魔物が弾かれたように見えた
すぐ後にビリークくんの声、魔物の首に刺さるナイフ
最後の足掻きとばかりに暴れる巨体
生存本能からかいつの間にか私の身体は魔物から距離をとっていて
部屋を埋め尽くさんばかりの白い魔物の死体が転がっている。
「・・ふぅ、終わりましたね」
ミルウェッチさんの声にようやく頭が着いてきた。
私、助けられたんだ。
「ユキノさん怪我は?」
「大丈夫、ありがとう」
何の役にも立たず、かえって足手纏いになってしまった。
その事に悔しくて申し訳無く思うけど、ここまで付いて来たのは私の勝手なのだ。謝るのでは無くお礼を言うべきだと感謝の言葉を口に出す。
私を守ってくれた当の本人は素知らぬ顔で何やら指示を出している。
本当にいけ好かない
「ミーシャさん、魔法陣の方は」
「今はこれで良いだろう。後日改めて陣を潰す」
「瓦礫で埋めただけ、ですけど・・・」
「心配いらん、これは壊せないからな」
何故あんたがそれを知っているんだ。
『門』の魔法陣は破壊が出来ない
理屈は良く分からないけれど本来の魔法陣を使った魔法は陣を破壊すれば無効化出来る物なんだけど
『門』の魔法陣に限ってはそれが出来ないようになっているんだとか
私はそれをゲーム知識で知っている訳だけど、なんでミーシャがそれを知ってるのか
本当はゲーム知識を持っているんじゃ無いのか?
「戻るぞ」
全て終わった。とばかりに背を向け去って行く二人
「・・やっぱり私、あの人苦手だわ」
「慣れると結構分かりやすい人ですよ」
そうは思えないな
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