殲滅された小国の姫

とうたら

文字の大きさ
1 / 51

プロローグ

しおりを挟む
初投稿です。
どうぞよろしくお願いいたします。

拙い文で、申し訳ありません。
どうか、寛大な心で、気長にお付き合いくださいませ。

お楽しみ頂けますよう励みますので、応援よろしくお願いいたします。


◇◇◇

 グランドール大国の最北。魔獣が出没する辺境を統治するナイトレイ侯爵領邸の一室。グリーンとブラウンを基調にした令嬢の私室で、生成りの柔らかな絹モスリンで覆われた寝台に横たわるシルヴィアは、原因不明の高熱と激痛に襲われていた。

 シルヴィア専属子守ナースメイド兼護衛のマリーは、片時も離れず必死に看病を続けている。天真爛漫で好奇心旺盛な愛らしいシルヴィアの苦悶する姿に、胸が張り裂けそうだ。
 シルヴィアは苦痛に顔を歪め、身をよじり、既に声にもならない悲痛な悲鳴を上げた。マリーは堪らず、シルヴィアを強く抱きしめた。

 マリーの心地良いひんやりとした魔力に包まれ、シルヴィアは安心して意識を手放した。

◇◇◇

シルヴィアが病床に伏して二日目

 ハリス医師の処置とマリーの献身的な看病をよそに、シルヴィアは昏睡状態のままだ。回復を願うみなの祈りは、神に届かないのか。ナイトレイ侯爵家は灯の消えたような寂しさと重く暗い空気に包まれていた。

◇◇◇

シルヴィアが病床に伏して三日目

 針葉樹の香りを運ぶ爽やかな風が、窓辺のカーテンを揺らす。小鳥たちのさえずりと、誰かの囁き声が聞こえる。額にそっと置かれた、ひんやりとしたマリーの手の感触が気持ちいい。

(マリーが側にいる。大丈夫。あれはただの悪夢。目の前で惨殺される家族や民たちの叫びも、残忍に何度も切りつけられた痛みも、すべては夢)

 シルヴィアは安堵し、ほっ、と息を吐いた。

「シルヴィア様?シルヴィア様!!」
「誰か閣下と奥様にお知らせして!早く!!」

(……何事ですの?何故、ハリス先生はわたくしの部屋にいらっしゃるのかしら?)

 俄に慌ただしくなる家人たちの気配に、シルヴィアは驚いた。

(身体が……、動かないわ)

 身じろぎもままならず、そっと瞼を押し開くと、眼前には号泣するマリーの美しいかんばせがあった。反対側から覗き込むのは、ナイトレイ家お抱え医師ハリスだ。

 シルヴィアは辺りを見渡した。

 自分の私室だと確信はあるのに、他人の部屋にいるような違和感を感じるのは何故だろうか。手に触れる寝具は、しっとりとした絹の感触。こんなにも心地よく、肌に馴染むのに、何かが違うと、直感的に感じる。なぜ、そう感じるのか分からない。

 開け放たれたドアから雪崩れ込むように、複数の足音が近付いてきて、マリーとハリスは素早く退いた。

「おぉ!ヴィー!!」

(お父様とお母様がいらっしゃったのね)

 感極まったご様子のお父様が、十六歳のわたくしを軽々と持ち上げたことに驚く。感涙に咽ぶお父様とお母様から、包み込むように抱きしめられた。

(ふふふ。なんだか幼い頃に戻ったようだわ)

 小さな子どものように扱われ、シルヴィアは気恥ずかしさと嬉しさから、はにかむように微笑んだ。

 兄のアルバートも、シルヴィアの元へ駆け寄ってきた。

 大好きなアルバートお兄様は、泣きながら、そっとわたくしの手を両手で包み込み、指先に口づけた。お兄様の美しいタンザナイトのような青紫色の潤んだ瞳に惹きつけられていた視線が、お兄様より幼く小さな自分の手に移った。

わたくしの手?)

 刹那、殲滅された記憶が鮮やかに蘇る。壮絶で残忍な死の記憶が、濁流のようにシルヴィアを襲った。

 幼いシルヴィアは、再び気を失った。

◇◇◇
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

処理中です...