殲滅された小国の姫

とうたら

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神力

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◇◇◇

 皆にはいつも通り、四歳とは思えない淑女のシルヴィアに見えていることだろう。だが、マリーとルフには分かる。シルヴィアは、知識欲と言う名の好奇心に、居ても立っても居られない様子だ。

 神妙を取り繕っていたシルヴィアは、私室に戻った途端、口火を切った。

わたくし、ルフのことをもっともっともっと知りとうございますわ!」

 これには、マリーも大いに同調である。

『何を知りたい』
「先ずは、〈神力〉のことでございますわ」

 シルヴィアはルフに食らいつかんばかりににじり寄りながら、次々と疑問を投げかけた。

「ルフが直接触れたものは全て神力の影響を受けますの?神力とはどの様な作用をもたらし、どのくらいの間残りますのでしょうか?直接触れずとも、ルフに触れた空気を吸えば…」
『待て、シルヴィア』

 ルフに待ったを掛けられたシルヴィアはその場で大人しくルフの言葉を待った。期待に満ちあふれたシルヴィアの様子に、ルフは思わず吹き出した。

『ハッハッハッハッ!愉快じゃ。幼き貴女も、淑女然とした貴女も、貴女の全てが実に好ましい』
「…嬉しゅうございますわ…」

 優しく微笑むルフに、然も愛おしげに見つめられシルヴィアの鼓動は一気に速度を増した。シルヴィアは嬉しさと恥ずかしさで赤面した顔を隠すように両手で覆い、か細く答えた。

 今度は、ルフの言葉に大いに同調するマリーであった。「ですが、シルヴィア様親衛隊隊長の座を譲る気はございませんわ」と心の中で宣言した。
 そして、マリーの強い決意も、ルフには筒抜けなのだ。

『我の力を、我は考えたことがない』

 然もありなん。
 シルヴィアは納得したが、更に食らいついた。

「昨日より、ルフと共に過ごしておりますわたくしは、神力により常に浄化されておりますの?」
『無論』
「では、昨日、御神体に触れたマリーも神力を賜わったということでしょうか」
『我に触れたのは貴女らが初めてじゃ』

 何と恐れ多い。

 マリーは、余りのことに、失神しそうである。シルヴィアが居なければ、マリーは確実に気を失っていた。

「マリー、何か神力の影響を感じて?」
「はい、シルヴィア様。昨日は、衣服も靴も綺麗な状態になっておりました。本日も、肌や爪、髪の質が明らかに異なります」
「まあ!素晴らしいわ!!」
「あと、ノア様の話では、ルフ様の咆哮直後、魔力を持つ者は皆、平伏し、動けなかったそうでございます。二度目の咆哮後、解放されたと申しておりました」
「まあ!なんという事でしょう!ああ、ルフ!ルフ!ルフ―!」

 とうとう、シルヴィアはルフに抱きついた。

「私は、本当に果報者ですわ。こんなに愛らしいルフが、傍にいてくださるのですもの」
『我は与えるばかりではないぞ』
「ええ。存分に私《魔力》をお求めくださいまし」
『精霊も貴女の魔力を欲しておるが、我の神力に貴女の魔力を微かに感じているようだ』

「ルフ様の御神力の源が、シルヴィア様の魔力・・・・・・」

 マリーは放心状態で呟いた。が、興奮状態のシルヴィアの耳には入っていないようだ。

「また、精霊様にもお会いしとうございますわ」
『『『『いつも傍にいるよ!』』』』

 突然、シルヴィアの頭の中に精霊たちの声が響いた。驚いたシルヴィアが、辺りを見渡すと、昨日森へいざなってくれた精霊たちが楽しげに飛び回っている。

「まあ!お目もじ叶い、光栄にございますわ!」

 シルヴィアは、精霊たちに話しかけた。シルヴィアは、夢中になると、猪突猛進、一心不乱だ。

 マリーには精霊の声も聞こえていないし、姿も見えていない。眼前には、神を愛犬の様に愛で、見えない精霊たちと会話する愛らしい我が君の姿がある。

 シルヴィア様・・・・・・、なんと尊い御姿でしょう。

 マリーは恍惚とした表情で手を組み、祈りを捧げた。

 シルヴィアを我が子のように慈しんでいたマリーは、遂に、シルヴィアを神格化したようである。

◇◇◇
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