殲滅された小国の姫

とうたら

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ガルシア伯爵夫妻

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◇◇◇

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去るものだ。

 エドワードは両親の待つガルシア伯爵領へと帰ってしまった。領主不在の間、領地管理をするためだ。



数日後

 マリーの元へ、ガルシア伯爵夫妻お着きの知らせが入った。ガルシア伯爵夫妻建ての希望で、一行は温泉へ直行された、と言い添えられた。マリーは、急ぎ両親の元へと向かった。

 兄エドワードは単身での来館だった。これは貴族の訪問としては異例である。ガルシア伯爵一行は総勢八名と馬六頭と隼一羽。父オーウェンと母ソフィア、執事バトラー侍女レディーズメイド、御者二名、護衛騎士二名を従え、四頭立て馬車での訪問である。

 マリーは、一週間かかる旅の疲労を心配していたが、二人とも初めて入る温泉に、はしゃいでいる。相変わらず、朗らかでマイペースな両親の様子に安堵した。

「マリー、ナイトレイ侯爵領は、聞きしに勝る素晴らしい場所だな」
「エドの話を聞いて、早く露天風呂に入ってみたかったのよ」
「湯あたりなさいませんように。気持ちが良くても長湯は禁物ですわ」
「うむ。私達だけでは勿体ない。同行した者達にも入らせたいがよいか」
「もう既にご利用ですわ。浴室は貴人用と家人用に別れておりますが、あちらも同じ温泉ですわ。馬用もございますのよ。」
「馬にも温泉を使うのか!ナイトレイ侯爵閣下も奥方様も家人思いだと申しておったな。マリーが幸せそうで嬉しいぞ」
「はい、幸せにございます。有り難い事と感謝しております」

 到着早々に温泉を堪能し、客室に案内されたガルシア伯爵夫妻は、ここでも呆気に取られた。

「この部屋は、よもや私達の為に、こんなにも落ち着く部屋を用意して下さったのか」
「お招き頂いたことだけでも有り難いことですのに、この様なお気遣いまで…。マリーがナイトレイ家の皆様に大切にされていることがよく分かったわ」

 質素倹約を旨としているガルシア伯爵が心地よく滞在出来るようにと、華美ではないが、上品な家具や装飾、上質の寝具で整えられた部屋に改装したことは、お見通しのようだ。



 その日の夕方。食堂にナイトレイ侯爵家とガルシア伯爵家が集い、歓迎の夕餉が始まった。ガルシア伯爵夫妻は、一品一品に舌鼓を打った。

 目にも嬉しいオードブルは宝石ようだ。色鮮やかなラペ(人参サラダ)は刻んだ干し葡萄の甘味と、レモンの酸味が絶妙だ。色取り取りの新鮮なベビーリーフ。山羊の乳と白ワインで作られたカッテージチーズに混ぜられた干し柿はチーズの水分を吸って柔らかい。初めて食したグレープフルーツのジュレは爽やかで宝石のように美しい。

 透き通ったスープは、濃厚な蛤の旨味を余すことなく引き出している。柔らかな身の食感から丁寧に調理されたことが伺える。

 ポワソンは、ニジマスのコンフィだ。ローズマリーとレモンの香りが食欲をそそる。

 ソルベは、甘夏を和えたヨーグルトにミントが添えられている。

 アントレは、鴨肉のロースト。赤ワインとバルサミコのソースに、「ほぉー」と感嘆の溜息を吐く。

 デセールは、レモンのメレンゲムース。蜂蜜がかけられている。

 全ての料理が、言葉を失う程の美味しさと芸術品のような美しさだった。ナイトレイ侯爵夫妻の手厚い歓迎にガルシア伯爵夫妻は改めて、この御縁を神に感謝した。



 晩餐を終え、子ども達は私室へ戻った。今は、両夫妻だけで食後の一献を傾けながら、談笑している。ウィリアムは年四回、王都への往復でガルシア伯爵夫妻と会食しているので、旧知の間柄だ。フローラの事も初対面のような気がしない程、マリーからの便りで知っている。
 到着した初日ではあるが、ナイトレイ侯爵夫妻のもてなしと人柄に心酔したオーウェンとソフィアは、早いほうが良いと判断し、もう一つの大切な目的を打ち明けた。

「是非とも、わたくしどもの愚息に縁談をご紹介願いたいのです」
「次期伯爵夫人を私達が選んでも良いのでしょうか」
「ご存じの通り、愚息は研究に明け暮れ、恋人もおりません。家にも寄りつきません」
わたくしどもは、早く孫の顔が見とうございますのに、二人ともお相手がいないようですの。マリーは此方を離れたくないと申しており、此方に骨を埋める覚悟のようですわ」

 思ったより早く、機会が巡ってきたわ。

 フローラは、小細工などせず、単刀直入にガルシア伯爵夫妻へマリーの婚姻話を申し込んだ。

「ガルシア卿。ソフィア様。マリー嬢の事ですが、折り入ってお願いがございますの」
「どの様な事でしょうか」
「どうか、わたくしどもの息子同然であるノアと、マリー嬢との婚姻をお許しくださいまし」

 フローラは、ノアの人となりを交えながら、ガルシア伯爵夫妻に今までの経緯を語った。

 三歳で孤児となったノアを、ナイトレイ家へ迎え入れたこと。血は繋がらないが家族同然であること。ノアは自力で男爵位を賜わったこと。マリーをナイトレイ家に迎えた時から、マリーに恋慕を募らせていること。マリーも家族同然であること。マリーを泣かせるなど、決して許さないと誓うこと。

 フローラの訴えを、静かに聞いていたガルシア伯爵夫妻は、胸打たれた。

 本来ならば、侯爵の中でも頂点に立つウィリアムからの命であれば、否はない。命じれば済む話なのだ。だが、こうして、ノア殿とマリーの気持ち、更には、ガルシア家を重んじ、真摯に許しを乞うて下さる。誠に恐れ多いことだ。ナイトレイ侯爵家が、マリーとの縁を懇願して下さるとは、我が家の誉れである。オーウェンは、傍らで嬉しさに涙ぐむソフィアをそっと抱き寄せた。

「此方からこいねがいたい良縁でございます」
「では、お許し頂けるか」
「今すぐ、約定を交わしたい程ですわ」
「まあ!ありがとう存じますわ」

 さあ、外堀は完全に埋めた。後は、ノアの仕上げを待つばかりだ。

「ノア殿が、どの様にしてマリーを落とすか、見物ですな」
わたくし、ときめいて、若返った心地ですわ」
「まあ!ソフィア様!わたくしもでしてよ。観劇よりも面白うございますもの」
「やれやれ。ノアを呼んで、進捗状況を報告させるか」
「ふふふ。先日、アルとハンナとわたくしの三人でからかいすぎてしまい、ノアはおかしな事を口走っておりましたわ」

 フローラだけではなく家人も、進展しない二人の関係に、やきもきしていることや、その事を当の本人達だけが気付いていないこと。ノアが頑なにナイトレイ家の助力を求めないことは、じれったいが、誇らしく思っていること。ノアとエドワードが仲良くなりすぎて、マリーが悋気を起したこと等を、嬉しそうに語るナイトレイ侯爵夫妻の様子に、ガルシア伯爵夫妻の喜びは、益々大きくなった。

 こうして、若い二人を肴に、四人の夜話は大いに盛り上がった。

 さて、忘れられたエドワードの縁談話はどうなるのだろうか?

◇◇◇




お話で登場した白ワインで作るカッテージチーズの作り方をご紹介します。

いつもは酢やレモンで作っていたカッテージチーズをワインで試してみたら、風味に感動しました。
チーズがお好きな方は、是非お試し下さい!
葡萄や林檎、グレープフルーツやオレンジなどのジュースでも作れます。
※未成年の方は、ジュースでお試し下さいませ。

作り方は超簡単。

【自家製ほんのり香るワイン風味のカッテージチーズ】

用意するもの
・牛乳
・ワインorジュース
・鍋
・ヘラor泡立て器
・ボウル
・ザル
・濾すための布
・冷蔵庫内に保管場所確保

材料の割合
・牛乳:ワイン=5:1

因みに、私は、材料を割合で覚える派です。
牛乳1000ccなら、ワイン200ccですね。
凝固しないときは、もう少しワインを加えて下さい。

ワインは安価なものや、飲み残しで十分です。
赤、白、ロゼどれでも美味し!
濾す過程で出来るホエーも美味しいので、捨てないで!
因みに私は、水切りしたヨーグルトのホエーも飲みます。

作り方

1.温めます。
 牛乳を沸騰寸前まで温め(80度くらい)、ワインを加えます。
 更に弱火で八分ほど、ゆっくり撹拌すると、徐々に凝固してきます。

2.布で濾します。
 ザルの上に布を敷き、①を濾します。
 濾した状態で丸一日(24時間)放置します。
※夏場は必ず「冷蔵庫」に入れて放置して下さい。
※「冷蔵庫」に入れる際は、ホエーが溢れないようなボウルなどの容器にザルごとセットして下さい。

3.丸一日(24時間)放置したら完成。
 美味しくいただきます。
 水分量が多いなと感じる場合は、茶巾絞りの要領で軽く絞ります。
 せっかちさんは8時間放置で絞って完成でもいいですよ。
 これでワイン風味のカッテージチーズが完成です。

市販のものとは違います。
生クリームを加えるとより美味しくなります。
奈良漬けに和えても美味しゅうございます。

是非、お試し下さいませ。
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