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婚姻
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◇◇◇
あれよあれよという間に挙式当日を迎えた。
婚姻式の伝統に則った衣装はマリーとノアにとてもよく似合っている。フローラは二人の衣装を最高級綿で仕立てさせた。踝丈の白いドーリス式キトンを身に纏ったマリーとノアの姿は、さながら神話に描かれた神々のように美しい。
二人の建ての希望で、神官ではなく、ナイトレイ侯爵一家とガルシア伯爵一家が総出で立会人を務めることになった。勿論、ルフにも立会いを希った。
真神の存在を知らないガルシア伯爵夫妻とエドワードは、犬が参加することを不思議には思ったが、二人の願いだ。否やはない。
◇◇
伝統的な婚姻式は、神殿で執り行われる。
婚姻に関する魔法契約書を取り交わすのだ。
誓いを結ぶ者は向かい合って立ち、魔力を持つ第三者立会の下、婚姻を宣言し、魔法契約書へ血判を押す。
婚姻式では装飾品を身に付けないという決まりがある。
人は何も持たすに生まれ、何も持たずに黄泉国へ旅立つという考えに基づく習わしだ。
ありのままの相手を受け入れるという意を表わしたものである。
婚姻式の衣装は、ドーリス式キトンを纏うのが伝統である。
衣装は、生まれてくる子のおくるみや寝具等に作り替え大切に使うのが習わしだ。
貴重な布を最後まで使い切る為でもあるが、健やかな成長を願うお守りのようなものなのだ。
◇◇
春の日和に恵まれた午後、館の礼拝堂には、ナイトレイ侯爵一家とガルシア伯爵一家が揃った。ノアとマリーは先ず、両親と、親代わりのナイトレイ侯爵夫妻に向かい、婚姻の許しを乞う。続いて、お互いに向かい合い、永遠の愛を誓い合った。互いの左薬指に細い針を当て、契約書へ血判を押す。
この瞬間、二人は夫婦となった。
◇
その日の夕餉は、お披露目と言う名の新婚さん素見し会となった。食堂には祝いの膳が用意され、皆に振る舞われた。
「ノア、マリー夫人、婚姻おめでとう」
「ヨハン様、ハンナ様、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」
「二人に、一ヵ月の休暇を与える。蜜月を楽しむようにとの仰せだ」
明日も通常勤務のつもりだったノアとマリーは顔を見合わせた。断りを入れようとしたノアにヨハンが耳打ちした。
「今宵は防音魔法を使いなさい。ご婦人は声を抑えられない。明日は起き上がることも辛かろう。労ってあげなさい」
ノアは赤面しながら緊張した声音で「はい」とか細く答え、チラリとマリーを窺った。
ハンナもマリーに囁く。
「マリー様、初夜は耐えがたい痛みがございます。どうかご無理はなさいませぬように。二、三日は慣れぬ身体の痛みに悩まされますが、旦那様に全てを捧げ、身も心も一つになる幸せを存分に堪能して下さいまし」
マリーはハンナの話を聞き、青ざめたかと思うと、一気に全身を赤らめた。まるで、花がぱっと咲き誇るかのように、甘美で妖艶な香りがマリーの身体から立ち込めたような感覚に襲われ、ノアは眩暈がした。
「おや。ノアもマリーも疲れたようだね。もう休んだ方が良いのではないか」
エドワードが発した天の声に、ノアは否応なく高まる胸の鼓動を感じながら、手の平を下に向けたまま、マリーに右手を伸ばした。マリーはその上に左手をそっと重ね、ノアのエスコートに従い、二人の部屋へと歩みを進めた。
◇
口から心臓が飛び出しそうだ。部屋までの道程がこんなに長いなんて!
「マリー嬢、お許しを」
ノアはマリーを横抱きにし、足早に部屋を目指した。マリーはノアの首に腕を回し、しがみついた。
「マリーとお呼び下さいまし」
マリーは、ノアの耳にそっと囁いた。
マリーの熱い吐息がノアの耳をくすぐる。その瞬間、完全にノアの思考は停止した。思わずその場に立ち尽くす。全身に痺れるような衝撃を受け、崩れ落ちそうになった。が、マリー大事!絶対に降ろさない!とノアは根性で持ち堪えた。
「無体を強いることをお許し下さい。マリー、今宵は寝かせませんので、御覚悟を」
ノアの言葉を聞いたマリーの緊張は極限に達し、とうとう気を失ってしまった。
◇◇◇
あれよあれよという間に挙式当日を迎えた。
婚姻式の伝統に則った衣装はマリーとノアにとてもよく似合っている。フローラは二人の衣装を最高級綿で仕立てさせた。踝丈の白いドーリス式キトンを身に纏ったマリーとノアの姿は、さながら神話に描かれた神々のように美しい。
二人の建ての希望で、神官ではなく、ナイトレイ侯爵一家とガルシア伯爵一家が総出で立会人を務めることになった。勿論、ルフにも立会いを希った。
真神の存在を知らないガルシア伯爵夫妻とエドワードは、犬が参加することを不思議には思ったが、二人の願いだ。否やはない。
◇◇
伝統的な婚姻式は、神殿で執り行われる。
婚姻に関する魔法契約書を取り交わすのだ。
誓いを結ぶ者は向かい合って立ち、魔力を持つ第三者立会の下、婚姻を宣言し、魔法契約書へ血判を押す。
婚姻式では装飾品を身に付けないという決まりがある。
人は何も持たすに生まれ、何も持たずに黄泉国へ旅立つという考えに基づく習わしだ。
ありのままの相手を受け入れるという意を表わしたものである。
婚姻式の衣装は、ドーリス式キトンを纏うのが伝統である。
衣装は、生まれてくる子のおくるみや寝具等に作り替え大切に使うのが習わしだ。
貴重な布を最後まで使い切る為でもあるが、健やかな成長を願うお守りのようなものなのだ。
◇◇
春の日和に恵まれた午後、館の礼拝堂には、ナイトレイ侯爵一家とガルシア伯爵一家が揃った。ノアとマリーは先ず、両親と、親代わりのナイトレイ侯爵夫妻に向かい、婚姻の許しを乞う。続いて、お互いに向かい合い、永遠の愛を誓い合った。互いの左薬指に細い針を当て、契約書へ血判を押す。
この瞬間、二人は夫婦となった。
◇
その日の夕餉は、お披露目と言う名の新婚さん素見し会となった。食堂には祝いの膳が用意され、皆に振る舞われた。
「ノア、マリー夫人、婚姻おめでとう」
「ヨハン様、ハンナ様、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします」
「二人に、一ヵ月の休暇を与える。蜜月を楽しむようにとの仰せだ」
明日も通常勤務のつもりだったノアとマリーは顔を見合わせた。断りを入れようとしたノアにヨハンが耳打ちした。
「今宵は防音魔法を使いなさい。ご婦人は声を抑えられない。明日は起き上がることも辛かろう。労ってあげなさい」
ノアは赤面しながら緊張した声音で「はい」とか細く答え、チラリとマリーを窺った。
ハンナもマリーに囁く。
「マリー様、初夜は耐えがたい痛みがございます。どうかご無理はなさいませぬように。二、三日は慣れぬ身体の痛みに悩まされますが、旦那様に全てを捧げ、身も心も一つになる幸せを存分に堪能して下さいまし」
マリーはハンナの話を聞き、青ざめたかと思うと、一気に全身を赤らめた。まるで、花がぱっと咲き誇るかのように、甘美で妖艶な香りがマリーの身体から立ち込めたような感覚に襲われ、ノアは眩暈がした。
「おや。ノアもマリーも疲れたようだね。もう休んだ方が良いのではないか」
エドワードが発した天の声に、ノアは否応なく高まる胸の鼓動を感じながら、手の平を下に向けたまま、マリーに右手を伸ばした。マリーはその上に左手をそっと重ね、ノアのエスコートに従い、二人の部屋へと歩みを進めた。
◇
口から心臓が飛び出しそうだ。部屋までの道程がこんなに長いなんて!
「マリー嬢、お許しを」
ノアはマリーを横抱きにし、足早に部屋を目指した。マリーはノアの首に腕を回し、しがみついた。
「マリーとお呼び下さいまし」
マリーは、ノアの耳にそっと囁いた。
マリーの熱い吐息がノアの耳をくすぐる。その瞬間、完全にノアの思考は停止した。思わずその場に立ち尽くす。全身に痺れるような衝撃を受け、崩れ落ちそうになった。が、マリー大事!絶対に降ろさない!とノアは根性で持ち堪えた。
「無体を強いることをお許し下さい。マリー、今宵は寝かせませんので、御覚悟を」
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