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婚前契約書
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この世界では、頻繁に魔法による契約が交わされる。
魔法契約を交わした当事者は、これを死守する必要に迫られる。
これを恐ろしいと感じるのは不誠実な人間だけだとされている為、同情する者はいない。
契約は双方の同意と第三者の立会いが必要なので、契約内容の遂行があまりにも困難ならば、成立しないのだから、自業自得でしかない。
魔法契約は、魔法の力による契約なので、精霊との約定なのだ。
魔法を使えるのは精霊であり、人は魔力を精霊に捧げているだけだ。
人は、捧げた魔力量に見合う魔法を精霊が行使することで、まるで自分が魔法を使っているような感覚でいる。
◇◇
魔法契約書とは、精霊に対する破れぬ誓い。
貴族は、秘密厳守、主従関係、婚姻等、様々な場面でこの魔法契約書を交わす。
もし誓いを破れば、書は燃え上がり、精霊からの制裁を受ける。
最も重い制裁は、死。
軽い制裁でも、永久に魔力を失う。
魔力を失うということは、即ち、爵位を失うことを意味する。
魔力のない平民同士でも、魔法契約書を交わすことは珍しいことではない。
その場合、各領地の神殿にて、文字通り、命を賭けて誓う。
誓いを結ぶ者は跪くか向かい合って立ち、魔力を持つ第三者立会の下、宣言し、魔法契約書へ血判を押す。
契約の解除は、契約者の死、契約期限を定めた場合は満了日、契約事項完了時、双方の同意を以て、可能である。
尚、解約の場合も、書は燃え上がり、消滅する。
◇◇
魔法契約には、契約者自身の魔力は必要としない。
精霊との破れぬ誓いを、魔力を持つ第三者の立会人が仲介する。
そして、契約中の魔法契約書を、他の者は読むことができない。
平民の識字率は低い為、魔法契約書を作成する専門職が存在する。
婚姻の魔法契約書を交わすことは、平民にも浸透している。
婚姻の契約は、婚姻前に契約の内容を承認する<婚前契約書>と記す約束となっている。
内容も細部まで熟考されており、神官が読み上げ、当事者同士がその場で署名と血判と日付を書き込みさえすれば、婚前契約が成立するように雛形が用意されている。
勿論、署名血判の前に、互いの事情に合った内容に書き換える必要がある為、この時点で、婚姻自体を見直す者も少なくない。
◇
他の生命とは異なる豊かな喜怒哀楽が人間にはある。
一部の精霊は、人間の感情で遊ぶことを殊の外好む。
契約を交わす前から、精霊達は余興のように楽しんでいる。
当事者達の懸命さ、愚かさなど、その言動全てが、精霊を喜ばせる。
悪戯を仕掛けなくても楽しめる遊戯か観劇のような感覚で、誓いを破った人間の全魔力か、それに見合う生命力を瞬時に奪う。
言い訳は通用しない。
それが不可抗力であろうと、精霊は結果のみで判断する。
精霊が判断した時点で契約は終了する。
それ故、人間の感情に左右される婚姻の魔法契約書は、特に慎重に交わされるようになった。
細部が熟考される以前は、各々が複数の伴侶を持つ夫婦もいた。
相手に対して少しでも愛情が残っていれば、精霊は契約を破ったと判断しなかったのだ。
一方、厳粛な愛を誓った夫婦には悲劇が起こった。
アイドル的な存在に魅了されただけで、対象が人間でなくとも浮気と判断され、命を落とす者もいた。
心奪われた相手が二人の間に授かった生まれたばかりの子どもだった時は、悲劇と一言で片付けるにはあまりに悲惨だった。
数々の惨劇から人々はさじ加減を学び、どんな些細な事も書面による約定を残すようになった。
そうして、絶対的な効果を持つ魔法契約に、人は頼り切っていた。
法ではなく、契約により、この時代の秩序は保たれていた。
◇
「ヴィーが目覚めたようね。ルフ様も落ち着かれた様で安心したわ」
「シルヴィア様は御館様への御報告が済まれましたら、こちらへ起こしになられます」
シルヴィアが目覚めたというのにマリーの元気がない。
「マリー様如何なさいましたの?」
「フローラ様とハンナ様にご相談したいことがございます。私とノアは…、未だに清い関係ですの」
マリーに涙目で訴えられ、フローラとハンナは答えに窮した。
「……、マリー様。詳しくお話し下さいませ」とハンナに促されたマリーは淡々と思いを吐露した。
「初夜は…、緊張のあまり、部屋に戻る前に気を失ってしまいましたの。気付くと朝で…、兄の事のことがあり、シルヴィア様が心配で、それどころではなく……。例えば、ノアが他の誰かを愛し、私への愛が冷めたとしたら、私は苦しいし悲しいけれど、死ぬほど絶望はしないと思いましたの。元々、他人なのだから、魂の片割れではなかったのだと諦められます。でも、もしも、シルヴィア様を失ったら…などと、考える事さえ恐ろしいしいのです。私の心は確実に壊れます。私はノアを愛しておりますが、絶対にシルヴィア様を優先してしまう。烏滸がましいのですが、シルヴィア様を我が子のよう想っております。私は、妻として失格ですわ」と言って、とうとう泣き出した。
フローラとハンナは、お互いに十代の頃を思い起こし、マリーの若さ故の未熟さと清廉潔白さと直向きな愛情を眩しく感じた。伝説だと思っていた魂の片割れの存在が極身近で証明され感銘を受けたのはマリーだけではない。そして、妻はこうあるべきというマリーの理想像に当てはまらないことが辛いのだろう。
「マリーは、マリーのままでいて頂戴」
「私もその様に思いますわ。いつものマリー様のままで良いのです。怖めず臆せず大切なものを守り、気負わず何事も楽しめばよろしいかと存じますわ。ノア様も、ありのままのマリー様に懸想しておいでですもの。益々、心酔していらっしゃるかと思いましてよ」
敬愛する二人の言葉に戸惑いながら、マリーの心は励まされた。
「私のままで良いのですか」
「ええ。そうでなければ、ならないのです。自分自身のまま、成長なさらなければ無意味ですわ。先人を真似ることは大事ですが、自分を失ってはいけません。納得できないのであれば、何も諦めてはなりません。この広い世界で、同じ時代を生き、巡り逢えたことこそが奇跡なのです。手放してはなりません。自分自身を愛し、周りを思いやる心があれば、思うままに行動しても間違いはございませんわ」
そう断言され、マリーは自信を取り戻した。
◇◇◇
婚前契約書(雛形)
本職は、委任者○(以下「甲」という。)及び受任者○(以下「乙」という。)の嘱託により、次の魔法契約に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
夫となる者(以下、「甲」という)と、妻となる者(以下、「乙」という)は、婚姻するにあたり、以下のとおり合意し本契約を締結する。
第一条 目的
本契約書は、甲と乙の夫婦生活を一層充実したものとして婚姻関係を永続させることを目的とするとともに、万が一離婚するときには、争いが長期化することを避け、各自が速やかに新しい人生に踏み出すために離婚時の条件を定めることを目的とするものである。
第二条 相互の尊重
甲と乙は、互いの性格、その育ってきた生活環境、文化や価値観、趣味嗜好等の違いを尊重しあい、甲と乙が婚姻生活において平等であることを自覚し、互いに生涯の伴侶として愛し、助け合うものとします。
第三条 夫婦のあり方
甲と乙は、相互に、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、愛し慈しみ真心を尽くし、各々が今までに築き上げた生活をさらに充実させ、また、発展させられるよう協力しあうことを誓います。
第四条 婚前契約書
甲と乙は、婚前契約書に各々が署名血判し、〇〇年〇〇月〇〇日限り、甲と乙で一緒に立会人□□に誓う。
第五条 夫婦の財産および生活費の分担
甲及び乙は、それぞれが婚姻前から所有する財産、および、自らの親族より譲り受け、または相続した財産は、それぞれの固有財産とし、婚姻後に取得した財産は、特段の合意のない限り、共有財産とする。
二 生活に要する生活費は、各人の収入に、家事分担の割合を考慮して公平に分担するものとする。
三 甲及び乙は、婚姻後に相手方の承諾を得てした借金および日常家事で生じる債務は、特段の合意のない限り両名の連帯債務とし、婚姻後に相手方に無断でした借金は、名義人の債務とする。
第六条 家事の分担
家事は、原則として、甲と乙が平等に分担し、各人の基本的生活に伴う家事は、各人が行う。ただし、双方の合意がある場合その他双方にとって必要な事情がある場合は協議して決めるように努める。
第七条 子の監護および養育
子の監護および養育は、甲と乙が協力しておこなうものとし、生活費、教育費、娯楽費その他子どもの養育に要する費用は、子の福祉を最大限尊重の上、甲と乙で十分な協議の上で公平に分担し実施するものとする。
第八条 親族関係
甲及び乙は、お互いに、自分の両親も相手の両親も大切にするものとし、互いの親族との関係が良好となるように努める。
二 甲及び乙は、原則として互いの親族とは同居しない。
ただし、介護等で同居の必要性が生じた場合には、甲乙はお互いの意見を尊重して十分協議して決めることとする。
三 甲及び乙は、原則として、それぞれの責任及び経済的負担において、自己の親族を援助することとする。
ただし、もしも一方が親族を援助する必要性が生じた場合には、甲乙はお互いの意見を尊重して十分協議し、甲乙の生活に支障をきたさない範囲で協力を惜しまないこととする。
第九条 誓約事項
甲と乙は、相互に、相手方に対し、以下のとおり誓約する。
(一) 一方の求めがある場合には収支を明らかにすること
(二) 病気等特別な場合を除き仕事や家事に精進すること
(三) 相手方に対する尊敬・愛情の心を常に持ち、お互いの子どもや親族の面前で悪口を言わないこと
(四) 第三者と性的関係を持たないこと、並びに浮気および浮気と誤解されるような行動はしないこと
(五) 事情の如何を問わず、暴力・暴言は絶対に振るわないこと
(六) 子供に対する監護教育に責任をもってあたること
(七) 炊事・洗濯・掃除等の家事を積極的に協力しあうこと
(八) 飲酒はできるだけ控えめにし、付き合いは程々にすること
(九) 賭け事・ギャンブルはしないこと
(十) 無断外泊をしないこと
(十一)相手方の手紙等を無断で開封・閲覧しないこと
(十二)相手方に無断で絶対に借金をしないこと
(十三)犯罪行為、および、相手方の信頼を著しく害する言動をしないこと
第十条 別居
仕事や療養などの事由で別居が必要となる場合には、事前に協議して相手方の合意を得るものとする。
ただし、緊急避難の必要など、正当事由がある場合は、この限りではない。
二 別居期間中、甲または乙は、それぞれの責任及び負担において、それぞれの生活を営むこととし、別居期間中の生活費の分担等はお互いの収入等に応じて協議して定めるものとする。
第十一条 離婚
甲と乙は、一方から離婚の申し出があった場合には誠意をもって協議を行うものとする。
第十二条 離婚に至る場合の定め
甲と乙は、離婚に至る場合、以下のとおり合意する。
(一) 原則として、各自の私物は各自の所有とし、共有財産は名義の如何を問わず、各々二分の一宛を取得するものとする。
(二) 甲乙間の子が存在する場合(懐妊している場合を含む)には、乙が子の親権者として監護養育するものとし、甲は、乙に対し、離婚成立日または出産日のいずれか遅い方の日の月末より、子が成人する月の属する年まで、養育費を支払うものとし、乙は、甲に対して、一か月に一回程度、子と面会交流する機会を与えるものとする。
(三) いずれか一方が離婚に至る原因を作った場合、および、いずれか一方の責任が相手方より大きい場合には、原因を作った者(もしくは責任の重い者)が、相手方に対して慰謝料を支払うものとする。
(四) 前各号の債務の履行が完済するまでの間、転職、転居、連絡先の変更などが生じた場合には、事前または事後速やかに、相手方に変更内容を通知するものとする。
(五) 甲と乙は、離婚にあたり、事前に、本条(一)~(四)の趣旨内容による離婚契約書を作成する。
第十三条 信義則
本契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合、および事情や状況の変更によって見直しの必要が生じた場合には、誠意をもって協議の上、解決を図るよう努めるものとする。
◇◇◇
魔法契約を交わした当事者は、これを死守する必要に迫られる。
これを恐ろしいと感じるのは不誠実な人間だけだとされている為、同情する者はいない。
契約は双方の同意と第三者の立会いが必要なので、契約内容の遂行があまりにも困難ならば、成立しないのだから、自業自得でしかない。
魔法契約は、魔法の力による契約なので、精霊との約定なのだ。
魔法を使えるのは精霊であり、人は魔力を精霊に捧げているだけだ。
人は、捧げた魔力量に見合う魔法を精霊が行使することで、まるで自分が魔法を使っているような感覚でいる。
◇◇
魔法契約書とは、精霊に対する破れぬ誓い。
貴族は、秘密厳守、主従関係、婚姻等、様々な場面でこの魔法契約書を交わす。
もし誓いを破れば、書は燃え上がり、精霊からの制裁を受ける。
最も重い制裁は、死。
軽い制裁でも、永久に魔力を失う。
魔力を失うということは、即ち、爵位を失うことを意味する。
魔力のない平民同士でも、魔法契約書を交わすことは珍しいことではない。
その場合、各領地の神殿にて、文字通り、命を賭けて誓う。
誓いを結ぶ者は跪くか向かい合って立ち、魔力を持つ第三者立会の下、宣言し、魔法契約書へ血判を押す。
契約の解除は、契約者の死、契約期限を定めた場合は満了日、契約事項完了時、双方の同意を以て、可能である。
尚、解約の場合も、書は燃え上がり、消滅する。
◇◇
魔法契約には、契約者自身の魔力は必要としない。
精霊との破れぬ誓いを、魔力を持つ第三者の立会人が仲介する。
そして、契約中の魔法契約書を、他の者は読むことができない。
平民の識字率は低い為、魔法契約書を作成する専門職が存在する。
婚姻の魔法契約書を交わすことは、平民にも浸透している。
婚姻の契約は、婚姻前に契約の内容を承認する<婚前契約書>と記す約束となっている。
内容も細部まで熟考されており、神官が読み上げ、当事者同士がその場で署名と血判と日付を書き込みさえすれば、婚前契約が成立するように雛形が用意されている。
勿論、署名血判の前に、互いの事情に合った内容に書き換える必要がある為、この時点で、婚姻自体を見直す者も少なくない。
◇
他の生命とは異なる豊かな喜怒哀楽が人間にはある。
一部の精霊は、人間の感情で遊ぶことを殊の外好む。
契約を交わす前から、精霊達は余興のように楽しんでいる。
当事者達の懸命さ、愚かさなど、その言動全てが、精霊を喜ばせる。
悪戯を仕掛けなくても楽しめる遊戯か観劇のような感覚で、誓いを破った人間の全魔力か、それに見合う生命力を瞬時に奪う。
言い訳は通用しない。
それが不可抗力であろうと、精霊は結果のみで判断する。
精霊が判断した時点で契約は終了する。
それ故、人間の感情に左右される婚姻の魔法契約書は、特に慎重に交わされるようになった。
細部が熟考される以前は、各々が複数の伴侶を持つ夫婦もいた。
相手に対して少しでも愛情が残っていれば、精霊は契約を破ったと判断しなかったのだ。
一方、厳粛な愛を誓った夫婦には悲劇が起こった。
アイドル的な存在に魅了されただけで、対象が人間でなくとも浮気と判断され、命を落とす者もいた。
心奪われた相手が二人の間に授かった生まれたばかりの子どもだった時は、悲劇と一言で片付けるにはあまりに悲惨だった。
数々の惨劇から人々はさじ加減を学び、どんな些細な事も書面による約定を残すようになった。
そうして、絶対的な効果を持つ魔法契約に、人は頼り切っていた。
法ではなく、契約により、この時代の秩序は保たれていた。
◇
「ヴィーが目覚めたようね。ルフ様も落ち着かれた様で安心したわ」
「シルヴィア様は御館様への御報告が済まれましたら、こちらへ起こしになられます」
シルヴィアが目覚めたというのにマリーの元気がない。
「マリー様如何なさいましたの?」
「フローラ様とハンナ様にご相談したいことがございます。私とノアは…、未だに清い関係ですの」
マリーに涙目で訴えられ、フローラとハンナは答えに窮した。
「……、マリー様。詳しくお話し下さいませ」とハンナに促されたマリーは淡々と思いを吐露した。
「初夜は…、緊張のあまり、部屋に戻る前に気を失ってしまいましたの。気付くと朝で…、兄の事のことがあり、シルヴィア様が心配で、それどころではなく……。例えば、ノアが他の誰かを愛し、私への愛が冷めたとしたら、私は苦しいし悲しいけれど、死ぬほど絶望はしないと思いましたの。元々、他人なのだから、魂の片割れではなかったのだと諦められます。でも、もしも、シルヴィア様を失ったら…などと、考える事さえ恐ろしいしいのです。私の心は確実に壊れます。私はノアを愛しておりますが、絶対にシルヴィア様を優先してしまう。烏滸がましいのですが、シルヴィア様を我が子のよう想っております。私は、妻として失格ですわ」と言って、とうとう泣き出した。
フローラとハンナは、お互いに十代の頃を思い起こし、マリーの若さ故の未熟さと清廉潔白さと直向きな愛情を眩しく感じた。伝説だと思っていた魂の片割れの存在が極身近で証明され感銘を受けたのはマリーだけではない。そして、妻はこうあるべきというマリーの理想像に当てはまらないことが辛いのだろう。
「マリーは、マリーのままでいて頂戴」
「私もその様に思いますわ。いつものマリー様のままで良いのです。怖めず臆せず大切なものを守り、気負わず何事も楽しめばよろしいかと存じますわ。ノア様も、ありのままのマリー様に懸想しておいでですもの。益々、心酔していらっしゃるかと思いましてよ」
敬愛する二人の言葉に戸惑いながら、マリーの心は励まされた。
「私のままで良いのですか」
「ええ。そうでなければ、ならないのです。自分自身のまま、成長なさらなければ無意味ですわ。先人を真似ることは大事ですが、自分を失ってはいけません。納得できないのであれば、何も諦めてはなりません。この広い世界で、同じ時代を生き、巡り逢えたことこそが奇跡なのです。手放してはなりません。自分自身を愛し、周りを思いやる心があれば、思うままに行動しても間違いはございませんわ」
そう断言され、マリーは自信を取り戻した。
◇◇◇
婚前契約書(雛形)
本職は、委任者○(以下「甲」という。)及び受任者○(以下「乙」という。)の嘱託により、次の魔法契約に関する陳述の趣旨を録取し、この証書を作成する。
夫となる者(以下、「甲」という)と、妻となる者(以下、「乙」という)は、婚姻するにあたり、以下のとおり合意し本契約を締結する。
第一条 目的
本契約書は、甲と乙の夫婦生活を一層充実したものとして婚姻関係を永続させることを目的とするとともに、万が一離婚するときには、争いが長期化することを避け、各自が速やかに新しい人生に踏み出すために離婚時の条件を定めることを目的とするものである。
第二条 相互の尊重
甲と乙は、互いの性格、その育ってきた生活環境、文化や価値観、趣味嗜好等の違いを尊重しあい、甲と乙が婚姻生活において平等であることを自覚し、互いに生涯の伴侶として愛し、助け合うものとします。
第三条 夫婦のあり方
甲と乙は、相互に、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、愛し慈しみ真心を尽くし、各々が今までに築き上げた生活をさらに充実させ、また、発展させられるよう協力しあうことを誓います。
第四条 婚前契約書
甲と乙は、婚前契約書に各々が署名血判し、〇〇年〇〇月〇〇日限り、甲と乙で一緒に立会人□□に誓う。
第五条 夫婦の財産および生活費の分担
甲及び乙は、それぞれが婚姻前から所有する財産、および、自らの親族より譲り受け、または相続した財産は、それぞれの固有財産とし、婚姻後に取得した財産は、特段の合意のない限り、共有財産とする。
二 生活に要する生活費は、各人の収入に、家事分担の割合を考慮して公平に分担するものとする。
三 甲及び乙は、婚姻後に相手方の承諾を得てした借金および日常家事で生じる債務は、特段の合意のない限り両名の連帯債務とし、婚姻後に相手方に無断でした借金は、名義人の債務とする。
第六条 家事の分担
家事は、原則として、甲と乙が平等に分担し、各人の基本的生活に伴う家事は、各人が行う。ただし、双方の合意がある場合その他双方にとって必要な事情がある場合は協議して決めるように努める。
第七条 子の監護および養育
子の監護および養育は、甲と乙が協力しておこなうものとし、生活費、教育費、娯楽費その他子どもの養育に要する費用は、子の福祉を最大限尊重の上、甲と乙で十分な協議の上で公平に分担し実施するものとする。
第八条 親族関係
甲及び乙は、お互いに、自分の両親も相手の両親も大切にするものとし、互いの親族との関係が良好となるように努める。
二 甲及び乙は、原則として互いの親族とは同居しない。
ただし、介護等で同居の必要性が生じた場合には、甲乙はお互いの意見を尊重して十分協議して決めることとする。
三 甲及び乙は、原則として、それぞれの責任及び経済的負担において、自己の親族を援助することとする。
ただし、もしも一方が親族を援助する必要性が生じた場合には、甲乙はお互いの意見を尊重して十分協議し、甲乙の生活に支障をきたさない範囲で協力を惜しまないこととする。
第九条 誓約事項
甲と乙は、相互に、相手方に対し、以下のとおり誓約する。
(一) 一方の求めがある場合には収支を明らかにすること
(二) 病気等特別な場合を除き仕事や家事に精進すること
(三) 相手方に対する尊敬・愛情の心を常に持ち、お互いの子どもや親族の面前で悪口を言わないこと
(四) 第三者と性的関係を持たないこと、並びに浮気および浮気と誤解されるような行動はしないこと
(五) 事情の如何を問わず、暴力・暴言は絶対に振るわないこと
(六) 子供に対する監護教育に責任をもってあたること
(七) 炊事・洗濯・掃除等の家事を積極的に協力しあうこと
(八) 飲酒はできるだけ控えめにし、付き合いは程々にすること
(九) 賭け事・ギャンブルはしないこと
(十) 無断外泊をしないこと
(十一)相手方の手紙等を無断で開封・閲覧しないこと
(十二)相手方に無断で絶対に借金をしないこと
(十三)犯罪行為、および、相手方の信頼を著しく害する言動をしないこと
第十条 別居
仕事や療養などの事由で別居が必要となる場合には、事前に協議して相手方の合意を得るものとする。
ただし、緊急避難の必要など、正当事由がある場合は、この限りではない。
二 別居期間中、甲または乙は、それぞれの責任及び負担において、それぞれの生活を営むこととし、別居期間中の生活費の分担等はお互いの収入等に応じて協議して定めるものとする。
第十一条 離婚
甲と乙は、一方から離婚の申し出があった場合には誠意をもって協議を行うものとする。
第十二条 離婚に至る場合の定め
甲と乙は、離婚に至る場合、以下のとおり合意する。
(一) 原則として、各自の私物は各自の所有とし、共有財産は名義の如何を問わず、各々二分の一宛を取得するものとする。
(二) 甲乙間の子が存在する場合(懐妊している場合を含む)には、乙が子の親権者として監護養育するものとし、甲は、乙に対し、離婚成立日または出産日のいずれか遅い方の日の月末より、子が成人する月の属する年まで、養育費を支払うものとし、乙は、甲に対して、一か月に一回程度、子と面会交流する機会を与えるものとする。
(三) いずれか一方が離婚に至る原因を作った場合、および、いずれか一方の責任が相手方より大きい場合には、原因を作った者(もしくは責任の重い者)が、相手方に対して慰謝料を支払うものとする。
(四) 前各号の債務の履行が完済するまでの間、転職、転居、連絡先の変更などが生じた場合には、事前または事後速やかに、相手方に変更内容を通知するものとする。
(五) 甲と乙は、離婚にあたり、事前に、本条(一)~(四)の趣旨内容による離婚契約書を作成する。
第十三条 信義則
本契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合、および事情や状況の変更によって見直しの必要が生じた場合には、誠意をもって協議の上、解決を図るよう努めるものとする。
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一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
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