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2時間目「おむつの履き心地」

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『じゃあおむつの特徴について軽く理解したと思うので、

実際におむつを履いてみましょう。』


ああ、やっぱり履かなきゃいけないんだ…。

まぁそうなるかもしれないという覚悟もなくはなかったよ。

わざわざ自分の体に合ったものを持ってこいって言ってたし…。

でも、いざ「履け」と言われると…

凄い複雑な気持ち。


『履き方が分からない子は先生に言ってね!

先生が手取り足取り教えてあ・げ・る…から!

じゃあそれぞれおむつを履きましょう!』


満面の笑みだった。

相当腕に自信があるもの強者にのみ許される笑顔だった。


え?というかここで履き替えるの?

少なくとも更衣室とか…

というか、この学校空き教室だらけなんだから、別のところがいいんだけど。


「せ、先生!恥ずかしいので別の場所で着替えたいのですが…。」

『何言ってんの、この程度で恥ずかしがっていたら日がくれちゃうわ。

今日は他にもやることいっぱいなの。

あと5分で着替えてね!終わらないなら、

その子には前に来てもらって、わたしがおむつをつけてあげるわ。』


先生は「おむつを履くことぐらい当然できるでしょう」と言わんばかりの雰囲気を醸しながら話した。

屈託のない笑顔は、生徒を安心させるためのものなのだろうが、

わたしたちにとっては恐怖心を感じえずにはいられない、悪魔の顔に見えた。

先生の聞いたあと、みんなすぐに席を立った。


なんで、まだ出会って1日のみんなのいる中でおむつを履かないといけないの…

いやでも、教室の前でみんなに見られながらおむつを履かされるぐらいなら、

さっさと履いちゃった方がましか…

幸い、今は制服…スカートだから、大事なところは見られないで済む。

スカートで隠しながら、下着を履く要領で…。

いやいや、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいけど!!


『ほら、もっと上まで上げて!ぽんぽん冷やしちゃうでしょ。』

『あちゃー、一回り小さいサイズを用意したのね。
引っ張ってあげるから、そっちもってて!』

『ギャザーはちゃんと処理して!ここから漏れちゃうでしょ。』


教室では先生が細かく指導をしながら、見て回っていた。

丁寧に教えて回るところは、いかにもいい先生っぽいが、

やっていることは完全に変態だった。


わたしは、恥ずかしい気持ちを必死に押し殺し、

なんとかおむつを履いた。

もこもこしていて、履き心地が悪いわけではなかったけど、

何か取り返しのつかないことをしてしまった気分になった。


『ああ、もう5分経ってたわ。

みんな終わったかな?…あら?』


先生は教壇に戻り、教室全体を見渡した。

そこで一人の生徒に目がいった。

ほかの生徒の目もそちらに動いた。

さっき、先生から予備のおむつをもらった生徒だった。

『どうしたの?

もしかしてサイズが違うのを渡しちゃったかしら?』


先生は凄い申し訳なさそうな顔で問いかけた。


「え、あ、あの…履き方が…

どうやって履けばいいのか…わかりません…。」

『え?あー…テープ式だから履き方がわからなかったのね。』


その生徒の机の上に置いてあるおむつはたしかに

わたしのもってきたタイプとは違うもののようだった。

わたしのは下着のような形のおむつだったが、

その生徒の机の上には広がった形のおむつが置いてあった。

きっと必死に履き方を試行錯誤したのだろうか、

やけにしわくちゃになっていた。


『大丈夫!最初はそういうものよ!

そうね。いい機会だからテープ式おむつの履き方を

みんなに教えましょう。

さ、おむつをもって教卓の上へ。』


こうしてこの教室は、最悪の事態に突入しようとしていた。
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