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10話 ワスレナグサ

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私は、クラスの子からいじめを受けている。

今いる場所は、学校の屋上。

本当は立ち入り禁止なんだけど、無理やり針金で開けてきた。

はぁ、もう楽になってもいいよね...?

私は、手すりをまたがる。

風が勢いよくビュンっと吹く。

天気も良い、太陽がぎらぎらと肌を焼き付ける。

下を見たら、それはそれはもの凄い恐怖わや感じた。

ああ、落ちたら死ぬのか。

私は、地獄行きかな?

だって、自殺って罪でしょ?

もう、楽になりたい。

そう思ったら自然と足が前へ行く。

飛び降りようとしたとき、屋上のドアが勢いよく開けられる。

「おい!なにやってんだよ!戻ってこい!」

「うるさい!私に話しかけないで!もう...楽に...なりたいのよ...」

こんなこと言ってる私なのに、自然と涙が出てきてしまう。

本当は死にたくない。

だって、どうして私が死ななきゃならないの!

死んだっておかしくないのは、私をいじめてた子達でしょ!?

「おまえは、そんなんでいいのかよ?」

「は?なにが?」

口調と声の高さからして、男の子だろう。

「おまえは、本当に死にたいのか?」

「......」

「本当は死にたくないんだろ?」

「そうよ!どうして私が死ななきゃいけないの!何にも悪いことしていない私が!」

「ああ、だからおまえは、死ななくていいんだよ」

「だけど...毎日毎日怖いの。次は何をさせられるんだろって思うと凄く怖いの...助けてくれる友達もいない...私には誰もいないの!」

全然知らない人なのに、ペラペラと喋ってしまう。

こんなこと誰にも話したことないのに。

「じゃあ、俺が友達になってやるよ」

「はぁ?」

私は、彼がいるほうを振り向く。

そこには、学校の中で王子様と呼ばれている神崎先輩だった。

「それじゃダメか?」

神崎先輩が今にも泣きそうな顔でそう言う。

どうしてあなたが泣きそうな顔をするの?

聞きたかったけど、聞いちゃいけない気がした。

「だけど、どうして神崎先輩が...?」

「どうしてって、そりゃ君に死んで欲しくないからだ」

「別に、知らない人が死んだっていいじゃないですか?」

「そんなことはないよ。だって、自殺は命を無駄にして、ずっとその罪が死んでからあるんだ」

「死にたいって思って死んでもダメなんですか?」

「ああ、ダメだ。だってこの世界に生きたいけど、生きれないひとなんて、数え切れないほどいる。自分の気持ちばっかじゃなくて、そうゆう人達のことも考えてみろ。そして、お前が死んだら、家族はどうするんだ?悲しむだろ?」

神崎先輩は、今まで見たことのない真面目な顔をする。

だけど、その顔は怒っているようにも見えた。

「そうですね...」

私は、神崎先輩に言われたことが心に残り、生きたいって思った。

私は、戻ろうとしたら雨が降った後だから、滑ってしまった。

「えっ?ちょっ!」

私は、そのまま落ちる。

だけど、落ちなかった。

それは、神崎先輩が手を取ってくれたから。

「おまえ馬鹿なのか!ちゃんと捕まっとけよ」

「あ、はい...」

神崎先輩は、手を思い切りグイッと引っ張ってくれて、助けてくれた。

「あの、ありがとうございます」

「別に、友達が目の前で死なれちゃ困るからね」

「そうですか...それは、ご迷惑をおかけしました。では」

私は、そう言って屋上から出ようとしたら腕を引っ張られた。

「おい、ちょっと待てよ!俺さ、友達って言ったよね?聞こえなかった?」

「へ?友達?誰がですか?」

「だから、おまえだよ」

神崎先輩は、私のことを指さす。

え?友達になるつもり?

「は、はぁ」

「反応薄くね?何年生?それと名前は?」

助けてくれたのに、自己紹介もしなかったの失礼だったな。

「えっと、霧島 茜です。2年生です」

 「じゃあ、霧島って呼ぶから。それじゃ携帯だして?」

「はい、わかりました」

ポッケから携帯をだして神崎先輩に渡した。

そしたら神崎先輩は、自分の携帯と私の携帯に何かを打ち込んだりしている。

「俺の連絡先入れといたから、いつでもしていいから」

そう言って私の携帯も返してくれる。

「え?あ、ありがとうございます?」

何だか、いきなりすぎて訳が分からなくなる。

本当に私と神崎先輩は友達になったの?

神崎先輩は、一体何を考えているのかが分からなかった。

「よし、じゃあ一緒に帰ろう」

「はぁ?」

爆弾発言だったから、先輩にも関わらず、声をあげてしまう。

「なんだよ。俺じゃ不満か?」

「そういう訳ではなく。どうして私なんかのために?」

私がそう言っている間にも、神崎先輩はカバンを持ってそそくさと行ってしまう。

「霧島と友達になりたいって思ったからだよ」

そう言い残して先に出ていってしまった。

私は、神崎先輩のあとを追っかけて一緒に帰ることになった。


それから時間が経つにつれて、私達は遊びに行ったりするくらいの仲になった。

いじめは、まだ続いているけど神崎先輩がいるから耐えられるようになった。

「俺さ、転校することになったんだ」

「え?どうしてですか?」

神崎先輩がいなくなるなんて...

私は、また1人になるの?

「えっと、色々あって」

複雑そうな顔をする神崎先輩。

言いたいけど言えない。

行かないでって言いたい。

私を1人にしないでって言いたい。

置いてかないで...

「そうですか...私なら大丈夫です!」

なるべく笑っていう私。

そして、神崎先輩が私にキスをした。

いきなりすぎて放心状態の私。

なにが起こったのかが分からなった。

「その顔は反則...」

神崎先輩は、私の顔を見てゲラゲラお腹を抱えて笑っている。

今になって、神崎先輩にキスをされたって意識をする。

「ちょっ!何するんですか!」

「え?なにって、キス?」

意地悪な笑を浮かべる先輩。

まるでそれは、ドSの笑みだった。

「ななな、ななんでしたんですか!」

問題はそこだった。

ファーストキスだったのに。

「え?好きだから」

「はい?」

「だから好きだから」

「え?私のこと?」

私は、辺りを見回すがそこには誰もいない。

「だから、そうだってば!」

「うそーーー!」

私は、大声をあげてしまう。

だって、いきなりこんなこと言われても...

私も神崎先輩のことは好き。

「霧島は、俺のこと好きじゃない?」

「そんなわけないじゃないですか!好きに決まってますよ!」

あっ、ついつい言ってしまった。

本音を言ってしまった。

自分の言ったことに今更恥ずかしくなり、顔が赤くなっていることだろう。

「じゃあ、これ」

神崎先輩は、背中からお花をだした。

その花は、ワスレナグサ。

「え?これは...」

「ワスレナグサに俺の想いを込めたから。受取ってくれませんか?」

「はい!」

ワスレナグサを手に取る。

ワスレナグサには、先輩の想いが詰まっている感じがした。








先輩?私のこと見ていますか?

私は、先輩との子供たちと楽しく暮らしています。

先輩は、そちらではどうですか?

楽しいですか?

だけど、どうかこの子達のことは、見守っててください。

私は、先輩のおかげで生きることができ、生きることの大切さを知りました。

そして、先輩が私にワスレナグサをプレゼントしてくれた想いがやっと分かりました。

先輩ありがとう。

私は、幸せです。

これからも、この子達と幸せに暮らします。

だから、先輩も幸せにね。

ずっと、あなたを忘れません。

ずっと、愛し続けています。




fin


ワスレナグサの花言葉
「真実の愛」
「私を忘れないで」
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