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第一章 最低最悪な誕生日
名前の呼び方も自由に選べません
しおりを挟むあの悪夢のようなお見合いの後、レク様とは一か月に二度ほどの頻度で会うことになりました。
心底嫌だったのですが、大人であるお母様に無理矢理引っ張られてしまっては、行くしかありません。私がレク様の屋敷に行く時もあれば、反対もあります。半々ぐらいですね。
そして必ず茶会の場には、レク様の横にリーナ様がピタッと張り付いています。
それを間近で見て、呆れましたわ。最低限のマナーさえ無視ですからね。一応、私はまだ婚約者ですよ。
私がレク様の屋敷を訪れた時は構いません。義理でも妹ですし、同じ屋敷に住んでいるのだから、顔を会わせることもあるでしょう。そこまで、心は狭くはありませんよ。
しかし、私の屋敷を訪れる際にも連れて来るのです。当たり前のように。そして、当然のようにレク様の隣に座るのです。これがまだ二、三歳の幼児ならわかりますわ。しかし、リーナ様は私より一つ年下の六歳です。ふんべつが付く年齢ですわ。
まぁ、そのことをレク様のご家族とお母様が許しているのですから、部外者である私は何も言えませんよね。
そして、レク様とリーナ様は私がわからない家での話をするのです。それ、家でもできますよね。ここでする必要ないですよね。もう、苦行ですよ、苦行。それが何回も続くので、途中からは席を外し、私は家から本を持って来て読んでいましたわ。私の屋敷なら、図書室に移動してましたね。レク様? 探しに来ませんよ。来るわけありませんよね。
始めからこの婚約を望んでいなかった私は、呆れはしましたが、この状況に対して不満を口にすることはありませんでした。お父様同様、言っても無駄ですしね。変な勘違いをされるのも嫌でしたし。興味もないし。
そもそも、レク様は、私が口を開くのを嫌がりますもの。睨まれたことも何度もありますし、理不尽な物言いをされたこともあります。ほとんどが、リーナ様絡みで。理由は、目付きの悪い私が喋ると、リーナ様が怖がるからだそうですよ。
なら、何故ついて来るのでしょう? 私の前に現れるのでしょう? やっていること、真逆で不思議ですよね。
まぁそんな中でも我慢して、社交辞令ですが、睨まれてもら無視されても、文句を言われても、ちゃんと接していましたよ。最低限、伯爵令嬢として。だけど、名前の件からは挨拶のみになりましたね。
会った当初、私は「アレクシド様」とお呼びしていました。すると、「かたくるしい」と言われましたので、「アレク様」とお呼びしたのです。リーナ様もそう呼んでいましたから。
結果、怒られましたわ。
「リーナがアレク兄様と呼んでいるんだ。アレクはリーナのものだ。お前は違う呼び方にしろ」とね。
正直、何言ってるの!? それに、お前って何!?
自分が伯爵令嬢であることを忘れ掛けましたわ。斜め上の台詞に唖然としましたね。同時に、こいつに社交辞令はいらないと判断しました。
でも、名前が呼べないのは不便なので、以後「レク様」と呼ぶようにしたのです。シド様とお呼びしようとも思ったのですが、あえてダサい方にしました。ちょっとした意趣返しですわ。
その話をリストお兄様にしたら、なんとも言えない微妙な表情をしていましたね。
「……子供だね、アレクシドは。ところで、フリーシア、ちゃんと日記つけてる?」
「つけてますわ。日記というより報告書みたいですけど、確認しますか?」
抜けていたなら、書き足す必要がありますからね。
「……確かに、これは報告書だね。よく書けてるよ、偉い、偉い」
リストお兄様はご褒美に頭を撫でてくれました。優しい笑顔なんですけど、目が全く笑っていませんわ。
当然と言えば当然ですね。改めて読み返してみると、なかなか酷い内容ですから。普通の良識のあるご家庭なら、抗議があってもおかしくはない内容ですよ。リストお兄様が怒るのも無理もないでしょう。
それにしても、娘がこんな理不尽な目にあっていても私の両親はなんとも思わないのだから……というより、あの人たちには何も見えていないのでしょう。
事実の世界ではなく、虚構の世界に生きている方々ですからね、仕方ありませんわ。
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