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第八章 パーティー全員で魔王を蹴散らします
私が寝てる間に密談を
しおりを挟む微かに、聞こえてくるのは怒った声と呆れた声でした。
「ほんとにこの娘は、いつも無茶をするわね……目の下に濃い隈を作っちゃって。それで、あの屑、そんなことを企んでいたのね」
はっきりとは聞き取れないけど、この声は、アンの声ね。見舞いに駆け付けてくれたのですね。
寝姿を見られのは恥ずかしいですわ。起きないと……あれ、身体が動きませんわ。
どうにか動くのは、指先くらいです。
「シア、まだ起きるのは早いよ。せめて、あと一日はゆっくり休んで」
僅かな反応に気付いた殿下が、私の頬を撫でながら言います。
その手の心地よさに、そのまままた眠りに落ちそうになりましたが、なんとか踏み止まります。だって、今更ですが、寝顔を見られ続けるのは恥ずかしいですよ。それが親友でも、婚約者でも。
「ゆっくり休んで」
一文字区切るように、ゆっくりと殿下は言います。なんとしても、寝かそうとしてますね。
「…………お……」
こうなったら、意地でも起きます。
ほとんど声は出てませんが、それでも、意識ははっきりと覚醒していきます。ただ……マジで身体が動かない。痺れたような、石化したかのような感覚です。どうにか、首だけは動かせますね。
「目を覚ましても、身体は動かないよ。魔力がまだ枯渇状態だからね。シアがマジックポーションを規定量以上飲むからだよ。ほんと、無茶して。いつも君は、他人に対して無茶をする。でも、そんなシアだから、俺は君を選んだんだよ」
殿下が甘過ぎます。何かを、たれ流していませんか? アンが真っ赤なんですけど……反対に、シンク様は黒いオーラが出てますよ。
自分以外がアンの赤い顔を見たのが嫌なんでしょうね……シンク様も、中々愛が重い方ですから。まぁでも、さすがに、監禁を考えたりはしないですよね。
「シア、よかったわね。コーウィン殿下の愛は本物よ!!」
自分事のように嬉しがるアン。私はほんとに、良い親友を持ちましたね。
疑ってはいない意味を込めて、私は軽く首を上下に動かします。
アンは私の返答に対して満面な笑みを浮かべると、殿下から渡された魔法石をギュッと握り締め言いました。
「シアが倒れれまで作った魔法石、肌身離さず持つから安心して」
私は再度首を上下に動かします。
「それから、あの魔王兄妹、ちゃんと追い込んであげるから、ゆっくり休んで」
もしかして、話したのですか?
殿下に視線を向けます。
「アイリーン嬢には話しておいた。色々協力してほしいことがあるから」
協力? コンラッド公爵家ではなく?
「コンラッド公爵家が動いたら、奴らは警戒して潜ってしまうからな。その代わりに、アイリーン嬢に手伝ってもらう」
大丈夫ですか!?
殿下からアンに視線を移します。それだけで、アンは私が何を心配しているか瞬時に理解してくれます。殿下といい、本気で心が読めるのではと疑ってしまいますよ。
「心は読めないわよ。シアって、顔に出やすいのよ。まぁ、それを解読できるのって、私と殿下ぐらいでしょうけど」
矛盾してるように聞こえるのは私だけ?
「矛盾はしてないよ、シア」
いやいや、顔に出やすいって……もし、それが本当でも、ここまで的確な返答はしませんよね。
「疑う気持ちはわかるけど、それはあと。今はそれよりも、あの魔王兄妹をどうするかよ。それでね、コーウィン殿下と相談したのだけど、社会的に追い込むことにしたわ。そして、地面を這いづかせてやる。見てて、とことん追い込んでやるわ。あの毒親のように、司法に委ねるような甘い結着はさせないから。誰を敵に回したか、じっくりとじっくりと教え込んであげるわ。だから、安心してゆっくり休んでね」
安心する要素がありません。
どうやら、私抜きにして、アンは殿下と密談したようです。笑みが黒いこと、黒いこと。完全にキレてますわ。殿下もアンも。
この二人を完全に敵に回したのですから、魔王兄妹は逃げ切ることはできないでしょう。というか、許さないでしょうね。
それにしても、司法の手を借りないってことは、その線では不十分だと判断したからでしょう。事実、弱いですからね。奴隷の件もそうですが、私に呪いを掛け人形にしようとしても、私がこの魔法石を作った時点で、呪いは回避出来ますし、無味無臭だから、誰に手を伸ばしたか判断もしにくい。それに、呪いそのものが曖昧ですからね、現実問題、立証するのが難しいでしょう。
となると、司法よりも、経済的に追い込む方がよしと判断したようですね。だとしたら……間違いなく、アリシアお姉様とジルお兄ちゃん、リストお兄様を喜んで巻き込みそうですね。彼らにも殿下は魔法石を渡したはずですから。
魔王兄妹、完全に終わりましたね。
自業自得、因果応報。
最後、どんな悲惨な状態になっても同情などしませんわ。
「シア、もうお休み。大丈夫、君のことは私たちが完璧に護るから」
殿下の優しい声が、私を眠りに誘います。
そうですね……しっかり護ってください。でも、次起きたら私も参戦しますから、場は残しておいてくださいね。
「わかった」
「当然」
やっぱり、二人とも心を読んでますよね?
納得がいくよう、後でじっくりと話しましょうね、コウ、アン。
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