戻るなんて選択肢はないので、絶対魔法使いの弟子になってみせます。

井藤 美樹

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第四章 銀色の少女

第十一話 灰色の翼と動き出した影(3)

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 それは、あまりにも突然に起きた。

 下から突き上げるような振動と共に響く爆発音ーー。

 茜とサス君がその音に瞬時に反応し立ち上がった途端、ガクンッと帆船が縦に大きく揺れた。船体が斜めに傾く。

 バランスを崩して椅子から転げ落ちる。

「痛っ!!」

(何が起きたの!?)

 皆と違って受け身が取れない私は、強かに左半身を床に打ち付ける。

「睦月様!!」

「睦月さん!!」

 茜が転げ落ちた私を支え起こそうとする。

「ありがとう」

 茜に支えてもらいながら礼を言う。

 左に大きく傾いていた船体が、どうにか水平にに戻る。それでも、船体自体が小刻みに揺れていた。

(気のせいかな? 下降してるような……。もしかして、故障でもしたの!?)

 少しパニクる私の横で、何故かサス君がドアに向かって唸っている。完全に威嚇だ。茜がいぶかしむ。

(サス君……?)

「睦月様!! 姉上!! サスケ様!! ご無事ですか!?」

 甲板のドアから、栞が飛び出してくる。

(なんだ、栞じゃん。サス君が唸ってるから、ちょっとドキッとしたよ)

 ホッと胸を撫で下ろした横で、サス君はまだ唸ったままだった。

「……サス君、どうしたの?」

 尋ねても、サス君は答えない。一層、唸り声が大きくなる。何とも言えない不安が押し寄せてきた。

 その間も、細かい縦揺れは続いていた。スピードも落ちてきてるような。……やっぱり、気のせいじゃない。下降してる!!

 茜は私を栞に託し、何が起きているのか、原因を探りに船内に戻ろうとした時だった。

 一人の男が甲板に現れた。

 その男は、一度甲板で茜と一緒にいるところを見ている。男は私たちの前に立ちはだかると刀を抜いた。

「何の真似だ!? 重盛しげもり!!!!」

 茜も刀を抜き構える。

「栞!! 睦月様とサスケ様を!!」

 茜は後ろを振り向かずに、栞にげんを飛ばす。栞は小さく頷くと、私とサス君を庇いながら後ろにゆっくりと下がる。

「もう一度訊く。何の真似だ、重盛」

「私の方が聞きたいですよ。茜様」

 重盛と呼ばれた男は、飄々ひょうひょうと言い放つ。

「何!?」

 茜は険しい表情で重盛を睨み付ける。

「そこにいる者たちのために、貴女は刀を構えるのですか?」

 明らかに、私たちを馬鹿にしている。まるで私たちを下等生物でもみるような、さげすんだ冷めた目だ。

と、力あっても所詮しょせん人間。そして、あんな畜生のために命を掛けるのですか?」

 理解出来ないと、重盛は更に私たちを侮蔑する。

 「その言葉を訂正してもらおうか、重盛。栞は半端者ではない。サスケ様は高位の霊獣。それに睦月様は、我々の大事な主だ」

 茜は真っ向から否定した。そんな茜の姿を見た重盛は、心底馬鹿にしたように冷笑すると言い放った。

「所詮、貴女もの娘ということですか。非常に残念です」

「父上は半端者ではありません!!」 

 栞が叫んだ。

 同時に、再び大きな爆発音がした。

 その瞬間、タイミングよく帆船を包み込んでいた結界の効力が切れ掛かる。

 突風が私たちを襲った。

 翼を持たない私の体は、突風に煽られバランスを崩した。

(あれ?)

「睦月様!!」

「栞!!」

 今まさに、船外に投げ出されようとしている私に、栞は必死に手を伸ばす。私は伸ばされた手を必死に掴んだ。栞は私の体を引き寄せ抱き締める。

 だが、私と栞の体は空中に放り出されてしまった。

「栞!!!!!! 睦月様ーーーーーー!!!!!!」

 柵に手を掛け茜が叫ぶ。

「心配ならば、貴女も追い掛ければいい」

 重盛はそう冷たい声で告げると、刀を振り上げ容赦なく振り下ろしたのだった。


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