戻るなんて選択肢はないので、絶対魔法使いの弟子になってみせます。

井藤 美樹

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第五章 保護者二人、愛し子を取り返すために奔走する

第七話 親として

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 そんな伊織とサスケの様子を、物影から見守っている者たちがいた。錦と姉さんと呼ばれていた女天狗だった。

「大丈夫そうね」

「……そのようだな」

 錦は安堵する。そのまま踵を返して、その場を後にした。

 錦も心配していたのだ。いつもは強面で、態度もやや乱暴で口も悪い。だが、情には厚い男だった。

 まだ幼かった時から、伊織のことをよく知っている。サスケ程ではないが、伊織が追い詰められていることは見てとれた。錦にとって、伊織は年の離れた弟のような存在だった。二人とも大切な掛け替えのない存在なのだ。

(なのに!! なのにだ!!)

 自分の息子が犯した罪のせいで、大切な親友と弟が苦しんでいる。錦の胸のうちは複雑だった。

 馬鹿なことをした息子に対しての怒り。そこまで翔琉を追い込んでしまった自分の不甲斐なさ、不器用さ。そして、巻き込んでしまった睦月様に対しての謝罪。伊織とサスケに対する後ろめたさの気持ちが入り混じり、錦を更に苦しめていた。

 その様子を側で見ていた女天狗は、伊織とサスケを苦しめているのが実の息子であることに、錦と同様に苦しい思いを抱いていた。

 息子のためと思って離れたのが悪かったのか。それとも、一緒に黒劉山から連れ出せばよかったのか。今となってはどちらが正解か分からない。でも、何かが間違っていた。それだけは間違いなかった。

 だからこそ、何が何でも二人の力になりたいのだ。

 それに、もし、睦月様に何かあったら……息子たちは間違いなく殺される。いや、殺されるなぞ甘いな。想像を絶する拷問を容赦なくするだろうな、あいつらなら。何十年、何百年掛けて。精神も肉体も壊れないように術を掛けて念入りに。想像するのも怖いぞ。最悪そうなった時、自分たちも確実に殺されるな。まぁ自分たちはいい。だが、息子たちは……出来れば救いたい。それが本音だ。どうしても、親としての想いを封じることは出来なかった。

 息子たちを、強いては睦月様を救うためにやるべきこと、それは分かっている。

 情報を多く仕入れることだ。

 翔琉が睦月様を利用し謀反を企てていることを知った時、すぐに錦は手の者に探らせた。勿論、伊吹と翔琉の動向を深く探るためだ。

 そして知った。

 伊吹も翔琉も腹を括っていることをーー。

 翔琉は兄を追い落とし、最悪殺してでも族長の地位を得ようとし。

 伊吹はそんな弟を憂いながらも、族長として弟を切り捨て、弟支持する一派を一掃することを決めた。同時に、睦月様の身を護るために手は打っているようだった。

 それがどういう意味なのか、誰にも容易に想像出来る。

 相討ちで終わることはない。また、無傷で終わることもない。どちらかが倒れるか、両方倒れるか。もしくはーー天狗族の滅亡か。その三つのどれかだろう。

「……錦様、琉花様。お食事の用意が整いました。伊織様とサスケ様は甲板ですか?」

 十二歳程にしか見えない少年が、大人びた口調で錦たちを呼びに来た。

「もう少し、二人きりにしといてやれ」

 錦は少年にそう言うと、自分の部屋に戻った。琉花と呼ばれた女天狗は、錦を見送ると少年を見下ろす。少年に向かって軽く頷いて見せた。

 少年は何かを察したのか、「分かりました」と答えると自分の作業に戻っのだった。


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